結び契る〜異世界転生した俺は番いを得る

風煉

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第1話

沐浴、発情

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結論から言えば、難を逃れることはできた。
窓からのっそりと離れ、入り口に来て鍵なんてないドアをぶち破る、ことはなく静かに開けるゼンブルに、俺は恐れ慄く。
ヒューイは父の登場に起き上がるが、はたと自分の体が汚れている、というにはずいぶんとイカ臭くてたまらない場面だったのもあって、少しだけ恥じらっていた。
猫可愛がりしているのか、そんな姿すら愛おしいとばかり表情筋が緩みっぱなしのドーベルマンが、俺へと視線を向けると途端に阿修羅へと変貌する。
次の瞬間、ヒュペルさんと同じようにどこからか取り出したように、その手に槍斧ハルバードという武器を構えて、俺へと容赦無く振りかぶろうとした。
 
「……死ぬかと思った」
「ごめんねダイチ。 ゼンブル父さん、何だか機嫌悪かったみたい」
「そういう問題じゃないし、多分だけどあの人はヒューイのことが可愛くて仕方がないんだと思うよ?」
 
マグロの解体ショーのごとく体をバラされる状況になったが、ヒューイが懸命に止め、様子を見に来てくれた爺様とヒュペルさんにより救われる。
その時のやり取りでは、
 
『まっ、待てヒュペル!? 私はただ私たちのヒューイが心配で!?』
『心配だからって、ヒューイの番いを殺していい理由になんねぇだろうが、この脳味噌筋肉バカ野郎が!!』
『違う、こんな奴が可愛いヒューイの番いなわけ!!』
『ほぉ? ワシはおろか、番い本人のヒューイまで見当違いなことを言っていると? 大きく出たな、ゼンブルよ。 ヒュペル、やり過ぎても構わん、調教してやれ』
『ありがとうございます、それでは遠慮なく――』
 
圧倒的にドーベルマンが悪いと判断され、三毛猫の許可の下に柴犬お父さんが眼光鋭く睨み付け、その手に身の丈ほどのハンマーを持ち出して振り被る。
その後やり過ぎなレベルの、体格差があるにも関わらず、力づくでゼンブルさんを叩き伏せ、モザイクが必要なくらいに弱らせてから、番いの雄たちは帰っていった。
暴れ回ったせいで室内が散乱していたのを片付け、爺様に用向きは何かと尋ねたが、なぜか呆れた顔をしているので、どうしたのかと聞いたが、聞かなければ良かったと今は後悔している。
 
「爺様、面白い顔してたよね。 でも沐浴は必要だし、汚れちゃったから洗わないとだしね!」
「ヒューイさ、前向きすぎないって言われたことないか?」
「? 前向きなのはいいことじゃないの?」
 
頭を抱えた爺様は『とりあえず体を清めてからにしなされ。 ヒューイ、案内して差し上げなさい。 ダイチ様、その後で構いませぬので、儂の家まで来ていただけますかな?』と言われてやっと気づいた。
ついさっきまでヒューイと手コキ・キスをしていたので、体はドロドロ、口周りもベタベタになって、誰が見てもそういうことをしていたのは丸わかり。
羞恥心が一気に込み上げて顔を伏せる俺に対して、犬の少年は気にすることなく俺の手を引いて歩いていった。
幸いにも誰に見つかることなく歩いていて、村から少し離れた、森にはギリギリ入らないところにある泉へやってくる。
 
「ここだよ、さぁっ水浴びしよっか!」
「……そっか、そうだよなぁ」
 
体が洗えるというのは願ってもないことだが、冷静に考えてここが日本ではない事実を、俺は改めて痛感した。
ヒューイは着ていた服というよりは布を剥いで全裸になると、足元からゆっくりと水場へ浸かっていく。
俺も服を脱ぎ、裸になるのを少し躊躇いはあるが、繋がりこそしていないが、イヤらしいことをした相手を前に臆するのも変な話だと納得することにした。
全裸になり、恐る恐る泉へ足先を触れてみると、予想していた通りで体が縮こまる。
 
「……」
「どうしたの? ダイチ」
「いや、その……、冷たくて、入れそうにない」
 
水についた足指から全身を刺すような寒さに汚染され、身体中の熱が失われる感覚に襲われる。
日本という国、近代的技術に囲まれた世界で生きていた俺にとって、この原始的すぎる水浴びはたまらなく酷だった。
気温も高いわけではなく、むしろ肌寒さすらある中で、裸でいるのも辛くて段々と震えが止まらなくなる。
やっぱり水浴びは止めておこうと、風邪をひいてしまいそうなので服に手を伸ばそうとするが、それは許さないとばかり阻まれた。
 
「ダメだよ。 汚れてるし、それに臭うから、ほらっこっち!」
「ちょ、ヒューイ待って――、ひゃあぁぁっ!? つ、冷たい!?!?」
 
悪気などないのだろう、ヒューイが真剣な顔でそのまま水場へと無理やり引っ張られてしまい、信じられない腕力に負けた俺はあえなく水の中へ浸水ダイブする。
直後、全身を突き刺すような痛みが走り、情けない悲鳴を上げて泉から出ようとするが、犬の少年はじっとしているように肩を抑えてきた。
暴れたくても自由に暴れられないもどかしさに悶える俺だったが、少しずつ変化が顕われ始める。
 
「冷たい冷たい!? ヒューイ、無理だって死ぬ!?」
「ダイチ、落ち着いて。 大丈夫だから」
「ムリムリムリ! もう無、理……、あれっ? あったかい……??」
 
絶叫する俺を宥めるヒューイの言葉にただひたすら慟哭をあげるが、蝕むような冷たさが段々と熱を帯びていき、むしろ求めていた水温へ上がっていた。
よくみると泉全体がほのかに光っていて、幻想的な光景に驚いていると、ただの水だったものが温泉のように入りやすくなっている。
驚いてヒューイを見ると、彼も同じくらいに呆気にとられているのか、水の変化を確かめていた。
 
「へぇ、ダイチはこのくらいの水がいいんだ」
「えっ? い、いやっそんなことより、これは?」
「ここはね、爺様がみんなのために作ってくれた水場なんだ。 暑いときは水のままでいいけど、流石に僕たちでも冷たすぎるのは無理だからね。 魔法で入った人が求める水温に上昇するんだ。 どういう仕組みなのかは、僕にもよくわからないけど」
「何でもありかよ、魔法って……」
 
説明を受けてさすが異世界と感じつつ、実は爺様ってすごい人なのではと、好々爺なあの猫人に俺は畏怖に近い感情を持つ。
何はともあれ水浴び最大の障害が取り払われ、気持ちよく入浴ができるようになったのは喜ばしかった。
ヒューイから離れて身なりを正すように洗っていると、自然と汚れが溶けるように落ちていくので、試しに髪まで浸すよう潜って洗うと、頭皮の不快感が消えたような気がする。
便利すぎるだろう魔法と、ザバりと顔を水面から出すと、傍にいたはずのヒューイはなぜか少し離れていた。
 
「ヒューイ? どうかしたのか?」
「う、うん、何でもないよ」
「そうか? でもすごいな、全身の汚れが勝手に落ちるみたいに綺麗になる。 しかも垢とか浮いてないし、これもやっぱ魔法なのかな?」
「じゅ、循環するようにも、してあるって。 みんなが使うから、浄化作用もプラスしないと、すぐ汚れちゃうしね……」
 
呼んでみると少し体を震わせて、こちらに顔を向けないものの、答えてはくれるので、泉の仕組みについて尋ねてみる。
言われて確かにと、同じ水をそのまま使い続けていれば汚れは酷くなり、垢だらけになった水を使えば、体調不良をきたすという問題ではすまないはずだ。
現代では水質管理という点で技術革新が行われて久しく、日本では水道からも当たり前のように水が飲めるのだから、それは凄いことにいまさら気付かされる。
そう思うと懐かしくなるのだが、郷愁を抱くほど寂しくなるかと言われると、そうでもなかった。
未練がないのだろうかと考えていると、俺の横を逸り気味にすり抜けてヒューイが泉から出ようとしている。
 
「なぁ、どうかしたのか?」
「何でもない、本当に何でもないから……」
「嘘つくなよ、いきなりそんな……、もしかして体調でも悪いのか?」
「あっ!? 待って、ダイチ!」
 
どこか慌てた様子で俺から必死に離れようとする姿に、ヒューイの腕を掴み、顔を覗き込んだ。
すると見られたくなかったのか、必死に顔を背けようとしている犬の少年は、毛皮の下からでもわかるくらいに、紅潮と頬を染めている。
熱でもあるのかと額に手を当てると、ビクついたように体を震わせているので、何かがおかしかった。
心配そうに見ていると、小さな声でゆっくりとヒューイが話し始める。
 
「……ダイチは、もっと自分のことを考えて動くべきだよ」
「えっどういうことだ?」
「だから! ダイチの匂いが強すぎるんだよ! こ、こんなの嗅いだことないし、嗅ぐだけで体が熱くなるし、それに、それに……!」
 
涙目で俺を責めるような言葉を発するヒューイの態度に、戸惑ってしまった。
何かしたわけではないのにどうしてとその変化に驚いていると、ふと水面よりもさらに下、透き通った水中から見えたのは勃起した肉筒を目撃する。
キョトンとする俺に、ヒューイが恥じらうようにする姿はとても可愛い、そう素直に思えた。
刹那、自分の中で何かが胎動するに活発化し始めたのを感じて、胸を押さえると鼓動が激しくなっていく。
息が荒くなり、目の前の彼がどうしても欲しい、そんなことを思い始めてしまった。
同時にそれまで平常だった俺の一物も膨れ上がっていき、臨戦態勢へ移行するのが分かり、これはもう止められないのだと俺は思う。
 
「ヒューイ、こっち向いて」
「えっ、ダイ……んっんんっ……♡」
 
どうしてかは分からない、ただはっきりとしていることが一つあると、俺はヒューイの頬に手を添えると名前を呼び、振り向く瞬間に合わせ、今度は俺から口づけをした。
驚きこそするが、嬉しそうに目を閉じてマズルを開き、舌を伸ばして俺の舌と接触、絡み合う。
両手を伸ばして俺の体を抱きしめ、俺もまたヒューイの背に腕を回して泉の中できつく抱きしめ合い、キスを満喫した。
上だけでなく、下でも亀頭同士を口づけ合うように重ね、擦り付けあっていくと、思考が蕩けていく気がしてたまらない。
俺の方から口を離すと、名残惜しそうに緩んだ顔の犬の少年がもっとと懇願していて、どうしようもなく欲情していた。
 
「変、だな……。 何で俺、君とこうするのが、こんなに気持ちいいって思うんだろうな……」
「――ダイチは、僕とするのは、イヤなの?」
「ううん、違う。 俺はさ、君と……、ヒューイともっとしたいって思うんだ。 これが、番いになるってことなのか?」
「……ダイチ♡」
「何だ?」
「……僕、もう待てない。 ダイチ、僕、ダイチが、欲しいよ……♡」
 
抑えられそうにない本能に促されるも、わずかに残った理性でヒューイに分かりきった結末を迎えたいと伝える。
それを待っていたと、まるで待ち焦がれたプロポーズに喜ぶように、犬の少年が首に腕を回し、そっとマズルを重ねて俺を求めてくれた。
十分すぎる返事だと、俺は答えるようにこじ開けて舌を絡める。
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