15 / 41
第2話
異世界ならではの事情
しおりを挟む
「そろそろ昼だな。 よし、休憩にするか」
「はい、ふわ~ぁ……。 あっすみません、ヒュペルさん」
「……」
「あっ、そうだった。 ヒュペルお義父さん」
「おぅ! んじゃ、飯の支度するぞ! 腹ぺこ共が帰ってくるまでに用意しねぇとな!」
調合の指導も一区切りつき、そろそろ昼食でも食べるかとなった時に、ヒュペルさんから休憩の許しが出た。
寝不足のせいか気が抜けて大あくびを出してしまい、謝罪したのだが全く反応するどころか無視に近い態度をとられ、俺は思い出す。
改めて呼んでみると、義父と呼ばれたヒュペルさんが嬉しそうに俺へ向けてくれる笑顔は、本当にヒューイそっくりだった。
そう、婚姻してから片方の親とは距離が広がりっぱなしだが、こちらの柴犬父とは逆に縮まっている。
中でも呼び方だが、ここに来てから1ヶ月くらい経った頃にヒュペルさんが宣言したのだ。
『ダイチ、今日から俺はお前にヒュペルさんと呼ばれても反応しないことにした。 俺のことを呼びたければ、ちゃんとお義父さんと呼ぶように!』
『えっ……? あの、いいんですか?』
『いいも何も、お前はヒューイの番いなわけで、今や俺の息子同然なんだぞ? いつまでも義理の息子に他人行儀な呼ばれ方されてるのは、嫌われてるみたいで結構傷つくもんなんだぜ?』
『……そっか、そうですよね。 わかりました、ヒュペルお義父さん』
『おっ、いいね! それじゃ俺も、お前のことは息子として接していくからな。 甘やかしたりはしねぇから、せいぜい頑張れよ!』
きちんと線引きはするべきとして、ヒュペルさんが俺に義父と呼んでくれと言ってくれたのは、正直嬉しいと素直に思う。
いきなり番いになったわけで、俺とヒューイはそれぞれお互いを受け入れてはいたが、両親となると話は別だと考えていたからだ。
なので婚姻式後もヒュペルさんとは親交があっても、家族という枠では距離感を掴めずにいたのが今では懐かしい。
それからは特にあれこれ話をしては、色々と相談を持ちかけたりして仲良くなれている自覚があった。
昼食として作っている猪みたいな魔物の肉を使ったシチューのような煮込みと、ヒュペルお義父さんお手製の手作りパンが今日の昼食になる。
異世界といえば硬いパンがイメージなのだが、どうやら村で小麦に似た農作物を育てているらしく、出来立てアツアツふわっふわが食べられるので最高だ。
何だろうな、ヒュペルお義父さんには胃袋をすっかり掴まれてしまったようだが、これはこれで参考にしたい。
「俺もそろそろ料理を覚えたいんですよね。 ヒューイは狩人ですし、俺が基本家にいることが多いですから、家事ができるようにならないと」
「ん~、追々やってけば良いと思うぞ? ヒューイもまだまだ体が動かせるし、爺様曰く兆候はまだないみたいだからな。 それにここだけの話だが、ヒューイは自分が料理を教えたいから教えなくていいって、言われてるんだ」
「ヒューイがそんなことを?」
「あぁっ。 本当、お前に出会ってからあの子は明るくなってくれたな、ありがとうなダイチ」
俺が考える今後の展望に、ヒュペルさんは気さくに答えてくれて、下手したらヒューイよりも親しみやすいかもしれない。
よく似ているし、性格も遺伝しているのだから、ある意味いいとこ取りだろう。
恐らく、あの子の怪力部分については片親が由来なのかもしれないが、その辺りも試しに聞いてみることにした。
「あの、ご家族のこと聞いてもいいですか?」
「なんだよ改まって。 またゼンブルにアホなことされたか?」
「いえっそうではない、いやっしょっちゅう色々なことをされてるので、もういいんですけど」
「慣れるな、麻痺すんな。 あのバカ、いい加減子離れしろっての……」
「あはは……。 あの、ヒュペルお義父さんがヒューイを産んだんですよね?」
「あぁっそうだな。 そういえばダイチの世界じゃ雄は産まないんだったな。 雌だけとか、結構大変じゃねぇの?」
「むしろこっちの常識に、俺はまだついていけないんですけどね……」
恐る恐る聞いたのがいけなかったのか、やや険しい顔でヒュペルさんはゼンブルさんの名を出す。
あの人との距離については、婚姻式を上げてからの方がずっと開いてしまった気がしてならなかった。
実際に手を挙げられてはいないが、家にいても視線を感じては見当たらず、その場にいればヒューイが席を外したりすると、無言で睨みつけられてはチビりそうになる。
言われて確かに慣れたらダメなんだろうが、これも少しずつ氷解していければと思うので、今は聞きたいことを優先することにした。
「まぁ何かと問題としてよく上がりますね。 時々国が平均の出生率を公表して、出産を促す取り組みが組まれたりします」
「何だそりゃ。 子供なんて天が与えてくれるようなものなんだから、国がどうこう言ってなんとかなるもんじゃねぇだろう。 そもそも作った後が一番大変なんだしよ」
「正論すぎる」
「ただ気持ちはわかるがな。 国は民がいなきゃ成り立たんし、民なき国は国とは呼べんしな」
というわけで今は俺の番い ヒューイを産んだ本人にあれこれと、この世界のことについて機会を見て質問をしていた。
今日の話題は出産について、なんでもこの世界では雄でも雌でも産めるとのことで、最初言われた時は宇宙が見えた気がする。
ただ雄に関しては番いであればに限定されるとのことで、そうでないと子を成すのは不可能に近いと言われているようだった。
中には例外もあるらしいが、どうやらそれは俺みたいなこの世界にいるはずの人属にも関係していると聞かされる。
「はい、ふわ~ぁ……。 あっすみません、ヒュペルさん」
「……」
「あっ、そうだった。 ヒュペルお義父さん」
「おぅ! んじゃ、飯の支度するぞ! 腹ぺこ共が帰ってくるまでに用意しねぇとな!」
調合の指導も一区切りつき、そろそろ昼食でも食べるかとなった時に、ヒュペルさんから休憩の許しが出た。
寝不足のせいか気が抜けて大あくびを出してしまい、謝罪したのだが全く反応するどころか無視に近い態度をとられ、俺は思い出す。
改めて呼んでみると、義父と呼ばれたヒュペルさんが嬉しそうに俺へ向けてくれる笑顔は、本当にヒューイそっくりだった。
そう、婚姻してから片方の親とは距離が広がりっぱなしだが、こちらの柴犬父とは逆に縮まっている。
中でも呼び方だが、ここに来てから1ヶ月くらい経った頃にヒュペルさんが宣言したのだ。
『ダイチ、今日から俺はお前にヒュペルさんと呼ばれても反応しないことにした。 俺のことを呼びたければ、ちゃんとお義父さんと呼ぶように!』
『えっ……? あの、いいんですか?』
『いいも何も、お前はヒューイの番いなわけで、今や俺の息子同然なんだぞ? いつまでも義理の息子に他人行儀な呼ばれ方されてるのは、嫌われてるみたいで結構傷つくもんなんだぜ?』
『……そっか、そうですよね。 わかりました、ヒュペルお義父さん』
『おっ、いいね! それじゃ俺も、お前のことは息子として接していくからな。 甘やかしたりはしねぇから、せいぜい頑張れよ!』
きちんと線引きはするべきとして、ヒュペルさんが俺に義父と呼んでくれと言ってくれたのは、正直嬉しいと素直に思う。
いきなり番いになったわけで、俺とヒューイはそれぞれお互いを受け入れてはいたが、両親となると話は別だと考えていたからだ。
なので婚姻式後もヒュペルさんとは親交があっても、家族という枠では距離感を掴めずにいたのが今では懐かしい。
それからは特にあれこれ話をしては、色々と相談を持ちかけたりして仲良くなれている自覚があった。
昼食として作っている猪みたいな魔物の肉を使ったシチューのような煮込みと、ヒュペルお義父さんお手製の手作りパンが今日の昼食になる。
異世界といえば硬いパンがイメージなのだが、どうやら村で小麦に似た農作物を育てているらしく、出来立てアツアツふわっふわが食べられるので最高だ。
何だろうな、ヒュペルお義父さんには胃袋をすっかり掴まれてしまったようだが、これはこれで参考にしたい。
「俺もそろそろ料理を覚えたいんですよね。 ヒューイは狩人ですし、俺が基本家にいることが多いですから、家事ができるようにならないと」
「ん~、追々やってけば良いと思うぞ? ヒューイもまだまだ体が動かせるし、爺様曰く兆候はまだないみたいだからな。 それにここだけの話だが、ヒューイは自分が料理を教えたいから教えなくていいって、言われてるんだ」
「ヒューイがそんなことを?」
「あぁっ。 本当、お前に出会ってからあの子は明るくなってくれたな、ありがとうなダイチ」
俺が考える今後の展望に、ヒュペルさんは気さくに答えてくれて、下手したらヒューイよりも親しみやすいかもしれない。
よく似ているし、性格も遺伝しているのだから、ある意味いいとこ取りだろう。
恐らく、あの子の怪力部分については片親が由来なのかもしれないが、その辺りも試しに聞いてみることにした。
「あの、ご家族のこと聞いてもいいですか?」
「なんだよ改まって。 またゼンブルにアホなことされたか?」
「いえっそうではない、いやっしょっちゅう色々なことをされてるので、もういいんですけど」
「慣れるな、麻痺すんな。 あのバカ、いい加減子離れしろっての……」
「あはは……。 あの、ヒュペルお義父さんがヒューイを産んだんですよね?」
「あぁっそうだな。 そういえばダイチの世界じゃ雄は産まないんだったな。 雌だけとか、結構大変じゃねぇの?」
「むしろこっちの常識に、俺はまだついていけないんですけどね……」
恐る恐る聞いたのがいけなかったのか、やや険しい顔でヒュペルさんはゼンブルさんの名を出す。
あの人との距離については、婚姻式を上げてからの方がずっと開いてしまった気がしてならなかった。
実際に手を挙げられてはいないが、家にいても視線を感じては見当たらず、その場にいればヒューイが席を外したりすると、無言で睨みつけられてはチビりそうになる。
言われて確かに慣れたらダメなんだろうが、これも少しずつ氷解していければと思うので、今は聞きたいことを優先することにした。
「まぁ何かと問題としてよく上がりますね。 時々国が平均の出生率を公表して、出産を促す取り組みが組まれたりします」
「何だそりゃ。 子供なんて天が与えてくれるようなものなんだから、国がどうこう言ってなんとかなるもんじゃねぇだろう。 そもそも作った後が一番大変なんだしよ」
「正論すぎる」
「ただ気持ちはわかるがな。 国は民がいなきゃ成り立たんし、民なき国は国とは呼べんしな」
というわけで今は俺の番い ヒューイを産んだ本人にあれこれと、この世界のことについて機会を見て質問をしていた。
今日の話題は出産について、なんでもこの世界では雄でも雌でも産めるとのことで、最初言われた時は宇宙が見えた気がする。
ただ雄に関しては番いであればに限定されるとのことで、そうでないと子を成すのは不可能に近いと言われているようだった。
中には例外もあるらしいが、どうやらそれは俺みたいなこの世界にいるはずの人属にも関係していると聞かされる。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
竜人息子の溺愛!
神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。
勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。
だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。
そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。
超美形竜人息子×自称おじさん
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる