結び契る〜異世界転生した俺は番いを得る

風煉

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第2話

異世界について学ぼう

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「さて、昨日の続きじゃが、ダイチよ。 魔素マナについて説明してみせよ」
「大気中に溢れる世界を構成する元素物質のことで、それぞれ火・水・土・風の4元素を基本とし、そこからさらに派生するものです」
「うむ、その通りじゃ。 では本日はその派生する元素について細かく説明していこう」

食後の片付けが終わり、俺はヒュペルお義父さんと別れて、今はこの村の長をしている三毛猫の爺様の元で講義を受けている。
講義と言ってもこの世界では誰もが当たり前のように知っていることを学んでいるので、俺以外に生徒はいなかった。
元の世界に帰れる保証もない状況で、ここで生きていくためには最低限この世界の一般常識を身につけなければ、生活していくことなどできるはずもない。
今はヒューイやお義父さんたち、爺様と同じコミュニティで暮らしているので不便はないにしても、万が一にここから離れた際に孤立したら自分の力でなんとかするしかないのだ。
そうならないためにも、俺は必死になって勉強する。

「火は炎となり、水は氷となり、土はあらゆる鉱物となり、風は天候へと世界に干渉する存在へと形を変えていく。 これらの力を応用し、自らの体内に流れる魔力と組み合わせ、具現化する力を魔法と呼ぶ」
「質問なんですけど、自分の魔力だけでそれらの元素を作り出す、みたいなことはできるんですか?」
「それができれば一流というレベルじゃな。 そこまでの頂にたどり着けるものはそうそうおらん。 ちなみに人属はそんな連中がゴロゴロおったから、覇権を争う種族としてかつてはこの世界の頂点に君臨しておった」
「……それなら他の種族に狙われるのは必然、だったのかもしれませんね」
「番いの話か? まぁあれは、当時の愚か者たちが犯した罪の代償といえなくもないの。 今、どこかで生きているやもしれん人属には関係のない話じゃ」

文化や習慣など、知らなければならないことは山ほどあるが、爺様はその中でも魔法と魔素についても詳しく説明してくれている。
大気には魔力の海という、空気とはまた異なる層がこの世界にはあるらしい、そこから溢れ落ちたものが魔素だと言っていた。
目に見えるものではないらしいが、特殊な瞳を持つ者、いわゆる魔眼というまさにファンタジーなものを持っていれば見えるらしい。
爺様はその魔眼持ちらしく、そういうのが俺も欲しかったなぁと何となく呟いたら呆れたようにため息をつかれた。
どうやらそんなにいいものではないらしく、むしろそのせいで心身を病んでしまう人が圧倒的に多いらしい。

「魔素は我々、いわゆる人が魔法を使うために必要な触媒であり、これなくしては基本的に公使することはできぬ。 しかもただ材料にすればいいわけではなく、適切に扱う量を調節せねば暴発するだけじゃ」
「見えない魔素を、適切な量に調整する? でも見えないなら不可能じゃ……」
「こればかりは感覚と言わざるをえないの。 だからこそ単純に見えて難解なのじゃ。 お前が前に魔眼なんてすげぇ! という偏見も昔は確かにあったが、良し悪しあると言ったが何であったか?」
「えっと、空の上に雲とは違う、ただ揺蕩うように浮く海のようなものが浮かんで見えてしまう、でしたよね?」
「そう、まるで本物の海原のように波が寄せては返すように蠢き、堕ちてくるやもしれん恐怖を永遠と感じ続けるなど、体験したいか?」
「……したくないです」
「だろうな。 ワシとて慣れるまでかなりの時間を要したものじゃ。 魔法士として大成したいならともかく、ただ欲しいというだけで求めた結果、壊れてしまった者も大勢おる、よく覚えておけ」
「はい、師匠せんせい……」

普段から見ている、向こうと変わらない空にもう一つ海とも呼べる層が爺様のような魔眼持ちには見えるという。
持っていなくても感覚が合えば見えることもあるらしいが、確かに頭上に海があると知ると恐怖しかなかった。
それが決壊し、雪崩込むように堕ちてきたらと想像するだけで寒気しかない。
あり得るかもしれない恐怖を命の終わりまで経験し続けるなんて、ほとんどの人には耐え難い苦痛でしかないのはいうまでもない。
そのせいで瞳を潰したり、眼球を取り出して売りに出したりするなどもあるらしいが、命の天秤で測れば安いのだろう。
でも眼球を無くしたとしても、見えてしまうものは見えてしまうようで、最期には自決しかないと命を断つ人も多いようだ。
うん、確かに俺には分不相応な代物のようだ、なくてよかったと思う。
あっ、ちなみに俺は最近、爺様のことを講義の際は師匠と呼ぶようにしている。
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