結び契る〜異世界転生した俺は番いを得る

風煉

文字の大きさ
27 / 41
第2話

食糧保存の問題

しおりを挟む
「……困ったのぉ」
「そうですね、これをどうしたものか……」

今俺の目の前では、爺様とヒュペルお義父さんが苦悶の表情である問題を前に思案していた。
問題とは前日にゼンブルパパ、じゃないな、お義父さんらが狩ってきた獲物についてで、解体した肉が二人の目の前に大量にある。
村の人達にその日一日分の肉を行き渡らせた後、残りを一時的に爺様の家の庭先で保管しているわけだが、そこが焦点だ。

「凍らせても良いのじゃが、そのままでは溶けてしまうし、鮮度も落ちてしまうからのぉ」
「幸い今はまだ暑くないのでいいですが、ここに放置はできないですし、腐ったらそれはそれで大変なことになりますよね……」
「全く、あやつはもう少しその辺りを考えて行動してもらえんかの……」

そう、この世界では食材を保管するための施設という概念が倉庫だけで、俺のいた世界では当たり前になっている冷蔵庫など当然ない。
生肉を保存するというのはこの世界の人たちもできるならしたいが、手段と方法がないので叶わず、その日必要な分の肉を狩るのが現状だと聞かされていた。
労力は計り知れないが、保存ができなければ仕方がない話で、目先で唸る爺様とヒュペルお義父さんを見ていると助言したくなる。
とはいえ、俺の意見が参考になるのかと不安になる部分もある、何せどこまでいっても素人だ。
いや、そもそも俺ここにいていいのかなって考えていると、二人同時にこちらへ顔を向けてくる。

「ダイチ、ちょっといいか?」
「は、はい、なんですか?」
「そう緊張せんで良い。 少し意見をもらいたくてのぉ」
「その意見とは、肉の保存に関する……?」
「そうだ。 ダイチの世界は話に聞くだけでも、文明発展が凄まじいことになっているからな、もしかしたら参考になる部分があるかもって、俺と爺様は思ったんだ」
「ダイチ、お主の世界では食材の保存はどのように行っていた? 分かる範囲で構わぬから、説明してもらえるかの?」

予想通りというほどのことではないが、二人が俺が考えていた通りだった。
詳しく話したことはないが、断片からお義父さんも爺様も俺の世界がすごく発展しているのを察していたというのだから、やっぱりこの二人はすごいと思う。
隠すことでもないのだが、その辺りのことを詳しく知識として蓄えているわけではないので、うまく説明できる自信がなかった。
だけど聞かれたからには答えるしかないので、頑張ってプレゼンしてみよう。

「俺の世界でこういった食材は、冷蔵庫って呼ばれる機械、じゃないな……、箱?に保存してました」
「れ、れいぞう、こ……? きかいっていうのも分からんが、箱に入れるだけで保存できると?」
「その箱の中が一定の温度に保たれてて、ある程度の時間なら鮮度を保ったまま保存できるんです。 冷たかったり、凍らせたものが溶けないようにする空間もあって、えっと、野菜も別の空間に収納できて……」
「う、うぅん……?? イマイチ想像できぬが、ずいぶんと珍妙な、いやっそのような画期的なものを作り出しておるのじゃな……」

ものすごくふわふわしているのは申し訳ないが、これが普通ではないかと思う。
冷蔵庫の仕組みなんて調べようとする人は多くないだろうし、俺も向こうにいたときは便利だなくらいにしか考えなかった。
それに科学的な文化もない世界では機械という単語も異質だし、お義父さんの反応からしても存在しないのだろう。
俺はこの村しか知らないので外がどの程度発展しているのか把握できないし、どう説明すべきかと悩んでいると爺様が近づいてきた。

「そのれいぞうこなる物は、お前も普段から使っていたのか?」
「ええっまぁ、基本どの家にもある物ですから」
「基本なのか、それが!? 世界が変わるだけで暮らしも全然違うんだな……」
「それが異界というものじゃ。 すまぬが、それを使ってる場面を考えてもらえるか? ワシが直接頭の中を覗いて確認したい」

俺の言葉にヒュペルお義父さんは心底驚いていた、それはそうだろうな、食材保存をどの家庭でも当たり前のようにやっているのだから。
異世界に来て自分の世界について話すと文明乖離も甚だしく感じられるのは、無理もない話だ。
それをわかった上で一言で済ませてしまう爺様も凄いけど、さらっとやろうとしていることが恐ろしく感じたのは気のせいかな?

「頭の中を直接……? そんなことできるんですか?」
「うむ、その方が早そうじゃしの」
「ええっ、大丈夫なんですか……? 廃人になったりしません……??」
「お前、ワシがそのような下手をすると? 抜け殻にするくらいなら指先一つで簡単にできる、侮るでない」
「爺様、ダイチが求めている答えはそういうものではないかと……」

心の中を覗きみるとはまたファンタジーな話だが、覗かれて後遺症やらが起きないか不安なので、失礼かもしれないがその心情を伝える。
するとよほど不服だったのか、爺様がムッとした顔で俺が求めた返答とは180度違った、より空恐ろしいことを言ってきた。
指先一つで廃人にできるとか、この爺さんマジで何者だよ、何なのこの村? 人外魔境とかそういう類の人たちが集結しているの?

「ヒュペル、こやつお前のことも化け物と言っておるぞ」
「うげっ!? み、見えたんですか!?」
「へぇ? これでも可愛がってやってるのに、そ~んな不届きなこと考えてたのか、ダイチ?」
「違いますって!? お義父さんは別です! どちらかと言えばゼンブルさんの方です!」
「あれとワシを一緒にするでないわ!? 不愉快極まりない!」
「……二人とも、そろそろ本題に入りましょう。 日が暮れてしまいます」

迂闊だった、頭の中が見えるというのに良からぬことを思ってしまったのは完全に俺のミスだ。
爺様は俺の下した評価に青筋を立て、後ろにいるヒュペルお義父さんへ振ると、悪ふざけで乗っかってきたので慌てて弁明する。
ゼンブルさんを引き合いに出すのは失礼かもしれないが、比較対象に挙げられた名に三毛猫様は声を荒げた、そんなに嫌か……、うんっ嫌かもしれない、あの人だと。
遊びもそろそろ切り上げてと、ヒュペルお義父さんが真面目な声で制止を呼びかけてきたので、俺は佇まいを直した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

処理中です...