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第2話
食糧保存の問題
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「……困ったのぉ」
「そうですね、これをどうしたものか……」
今俺の目の前では、爺様とヒュペルお義父さんが苦悶の表情である問題を前に思案していた。
問題とは前日にゼンブルパパ、じゃないな、お義父さんらが狩ってきた獲物についてで、解体した肉が二人の目の前に大量にある。
村の人達にその日一日分の肉を行き渡らせた後、残りを一時的に爺様の家の庭先で保管しているわけだが、そこが焦点だ。
「凍らせても良いのじゃが、そのままでは溶けてしまうし、鮮度も落ちてしまうからのぉ」
「幸い今はまだ暑くないのでいいですが、ここに放置はできないですし、腐ったらそれはそれで大変なことになりますよね……」
「全く、あやつはもう少しその辺りを考えて行動してもらえんかの……」
そう、この世界では食材を保管するための施設という概念が倉庫だけで、俺のいた世界では当たり前になっている冷蔵庫など当然ない。
生肉を保存するというのはこの世界の人たちもできるならしたいが、手段と方法がないので叶わず、その日必要な分の肉を狩るのが現状だと聞かされていた。
労力は計り知れないが、保存ができなければ仕方がない話で、目先で唸る爺様とヒュペルお義父さんを見ていると助言したくなる。
とはいえ、俺の意見が参考になるのかと不安になる部分もある、何せどこまでいっても素人だ。
いや、そもそも俺ここにいていいのかなって考えていると、二人同時にこちらへ顔を向けてくる。
「ダイチ、ちょっといいか?」
「は、はい、なんですか?」
「そう緊張せんで良い。 少し意見をもらいたくてのぉ」
「その意見とは、肉の保存に関する……?」
「そうだ。 ダイチの世界は話に聞くだけでも、文明発展が凄まじいことになっているからな、もしかしたら参考になる部分があるかもって、俺と爺様は思ったんだ」
「ダイチ、お主の世界では食材の保存はどのように行っていた? 分かる範囲で構わぬから、説明してもらえるかの?」
予想通りというほどのことではないが、二人が俺が考えていた通りだった。
詳しく話したことはないが、断片からお義父さんも爺様も俺の世界がすごく発展しているのを察していたというのだから、やっぱりこの二人はすごいと思う。
隠すことでもないのだが、その辺りのことを詳しく知識として蓄えているわけではないので、うまく説明できる自信がなかった。
だけど聞かれたからには答えるしかないので、頑張ってプレゼンしてみよう。
「俺の世界でこういった食材は、冷蔵庫って呼ばれる機械、じゃないな……、箱?に保存してました」
「れ、れいぞう、こ……? きかいっていうのも分からんが、箱に入れるだけで保存できると?」
「その箱の中が一定の温度に保たれてて、ある程度の時間なら鮮度を保ったまま保存できるんです。 冷たかったり、凍らせたものが溶けないようにする空間もあって、えっと、野菜も別の空間に収納できて……」
「う、うぅん……?? イマイチ想像できぬが、ずいぶんと珍妙な、いやっそのような画期的なものを作り出しておるのじゃな……」
ものすごくふわふわしているのは申し訳ないが、これが普通ではないかと思う。
冷蔵庫の仕組みなんて調べようとする人は多くないだろうし、俺も向こうにいたときは便利だなくらいにしか考えなかった。
それに科学的な文化もない世界では機械という単語も異質だし、お義父さんの反応からしても存在しないのだろう。
俺はこの村しか知らないので外がどの程度発展しているのか把握できないし、どう説明すべきかと悩んでいると爺様が近づいてきた。
「そのれいぞうこなる物は、お前も普段から使っていたのか?」
「ええっまぁ、基本どの家にもある物ですから」
「基本なのか、それが!? 世界が変わるだけで暮らしも全然違うんだな……」
「それが異界というものじゃ。 すまぬが、それを使ってる場面を考えてもらえるか? ワシが直接頭の中を覗いて確認したい」
俺の言葉にヒュペルお義父さんは心底驚いていた、それはそうだろうな、食材保存をどの家庭でも当たり前のようにやっているのだから。
異世界に来て自分の世界について話すと文明乖離も甚だしく感じられるのは、無理もない話だ。
それをわかった上で一言で済ませてしまう爺様も凄いけど、さらっとやろうとしていることが恐ろしく感じたのは気のせいかな?
「頭の中を直接……? そんなことできるんですか?」
「うむ、その方が早そうじゃしの」
「ええっ、大丈夫なんですか……? 廃人になったりしません……??」
「お前、ワシがそのような下手をすると? 抜け殻にするくらいなら指先一つで簡単にできる、侮るでない」
「爺様、ダイチが求めている答えはそういうものではないかと……」
心の中を覗きみるとはまたファンタジーな話だが、覗かれて後遺症やらが起きないか不安なので、失礼かもしれないがその心情を伝える。
するとよほど不服だったのか、爺様がムッとした顔で俺が求めた返答とは180度違った、より空恐ろしいことを言ってきた。
指先一つで廃人にできるとか、この爺さんマジで何者だよ、何なのこの村? 人外魔境とかそういう類の人たちが集結しているの?
「ヒュペル、こやつお前のことも化け物と言っておるぞ」
「うげっ!? み、見えたんですか!?」
「へぇ? これでも可愛がってやってるのに、そ~んな不届きなこと考えてたのか、ダイチ?」
「違いますって!? お義父さんは別です! どちらかと言えばゼンブルさんの方です!」
「あれとワシを一緒にするでないわ!? 不愉快極まりない!」
「……二人とも、そろそろ本題に入りましょう。 日が暮れてしまいます」
迂闊だった、頭の中が見えるというのに良からぬことを思ってしまったのは完全に俺のミスだ。
爺様は俺の下した評価に青筋を立て、後ろにいるヒュペルお義父さんへ振ると、悪ふざけで乗っかってきたので慌てて弁明する。
ゼンブルさんを引き合いに出すのは失礼かもしれないが、比較対象に挙げられた名に三毛猫様は声を荒げた、そんなに嫌か……、うんっ嫌かもしれない、あの人だと。
遊びもそろそろ切り上げてと、ヒュペルお義父さんが真面目な声で制止を呼びかけてきたので、俺は佇まいを直した。
「そうですね、これをどうしたものか……」
今俺の目の前では、爺様とヒュペルお義父さんが苦悶の表情である問題を前に思案していた。
問題とは前日にゼンブルパパ、じゃないな、お義父さんらが狩ってきた獲物についてで、解体した肉が二人の目の前に大量にある。
村の人達にその日一日分の肉を行き渡らせた後、残りを一時的に爺様の家の庭先で保管しているわけだが、そこが焦点だ。
「凍らせても良いのじゃが、そのままでは溶けてしまうし、鮮度も落ちてしまうからのぉ」
「幸い今はまだ暑くないのでいいですが、ここに放置はできないですし、腐ったらそれはそれで大変なことになりますよね……」
「全く、あやつはもう少しその辺りを考えて行動してもらえんかの……」
そう、この世界では食材を保管するための施設という概念が倉庫だけで、俺のいた世界では当たり前になっている冷蔵庫など当然ない。
生肉を保存するというのはこの世界の人たちもできるならしたいが、手段と方法がないので叶わず、その日必要な分の肉を狩るのが現状だと聞かされていた。
労力は計り知れないが、保存ができなければ仕方がない話で、目先で唸る爺様とヒュペルお義父さんを見ていると助言したくなる。
とはいえ、俺の意見が参考になるのかと不安になる部分もある、何せどこまでいっても素人だ。
いや、そもそも俺ここにいていいのかなって考えていると、二人同時にこちらへ顔を向けてくる。
「ダイチ、ちょっといいか?」
「は、はい、なんですか?」
「そう緊張せんで良い。 少し意見をもらいたくてのぉ」
「その意見とは、肉の保存に関する……?」
「そうだ。 ダイチの世界は話に聞くだけでも、文明発展が凄まじいことになっているからな、もしかしたら参考になる部分があるかもって、俺と爺様は思ったんだ」
「ダイチ、お主の世界では食材の保存はどのように行っていた? 分かる範囲で構わぬから、説明してもらえるかの?」
予想通りというほどのことではないが、二人が俺が考えていた通りだった。
詳しく話したことはないが、断片からお義父さんも爺様も俺の世界がすごく発展しているのを察していたというのだから、やっぱりこの二人はすごいと思う。
隠すことでもないのだが、その辺りのことを詳しく知識として蓄えているわけではないので、うまく説明できる自信がなかった。
だけど聞かれたからには答えるしかないので、頑張ってプレゼンしてみよう。
「俺の世界でこういった食材は、冷蔵庫って呼ばれる機械、じゃないな……、箱?に保存してました」
「れ、れいぞう、こ……? きかいっていうのも分からんが、箱に入れるだけで保存できると?」
「その箱の中が一定の温度に保たれてて、ある程度の時間なら鮮度を保ったまま保存できるんです。 冷たかったり、凍らせたものが溶けないようにする空間もあって、えっと、野菜も別の空間に収納できて……」
「う、うぅん……?? イマイチ想像できぬが、ずいぶんと珍妙な、いやっそのような画期的なものを作り出しておるのじゃな……」
ものすごくふわふわしているのは申し訳ないが、これが普通ではないかと思う。
冷蔵庫の仕組みなんて調べようとする人は多くないだろうし、俺も向こうにいたときは便利だなくらいにしか考えなかった。
それに科学的な文化もない世界では機械という単語も異質だし、お義父さんの反応からしても存在しないのだろう。
俺はこの村しか知らないので外がどの程度発展しているのか把握できないし、どう説明すべきかと悩んでいると爺様が近づいてきた。
「そのれいぞうこなる物は、お前も普段から使っていたのか?」
「ええっまぁ、基本どの家にもある物ですから」
「基本なのか、それが!? 世界が変わるだけで暮らしも全然違うんだな……」
「それが異界というものじゃ。 すまぬが、それを使ってる場面を考えてもらえるか? ワシが直接頭の中を覗いて確認したい」
俺の言葉にヒュペルお義父さんは心底驚いていた、それはそうだろうな、食材保存をどの家庭でも当たり前のようにやっているのだから。
異世界に来て自分の世界について話すと文明乖離も甚だしく感じられるのは、無理もない話だ。
それをわかった上で一言で済ませてしまう爺様も凄いけど、さらっとやろうとしていることが恐ろしく感じたのは気のせいかな?
「頭の中を直接……? そんなことできるんですか?」
「うむ、その方が早そうじゃしの」
「ええっ、大丈夫なんですか……? 廃人になったりしません……??」
「お前、ワシがそのような下手をすると? 抜け殻にするくらいなら指先一つで簡単にできる、侮るでない」
「爺様、ダイチが求めている答えはそういうものではないかと……」
心の中を覗きみるとはまたファンタジーな話だが、覗かれて後遺症やらが起きないか不安なので、失礼かもしれないがその心情を伝える。
するとよほど不服だったのか、爺様がムッとした顔で俺が求めた返答とは180度違った、より空恐ろしいことを言ってきた。
指先一つで廃人にできるとか、この爺さんマジで何者だよ、何なのこの村? 人外魔境とかそういう類の人たちが集結しているの?
「ヒュペル、こやつお前のことも化け物と言っておるぞ」
「うげっ!? み、見えたんですか!?」
「へぇ? これでも可愛がってやってるのに、そ~んな不届きなこと考えてたのか、ダイチ?」
「違いますって!? お義父さんは別です! どちらかと言えばゼンブルさんの方です!」
「あれとワシを一緒にするでないわ!? 不愉快極まりない!」
「……二人とも、そろそろ本題に入りましょう。 日が暮れてしまいます」
迂闊だった、頭の中が見えるというのに良からぬことを思ってしまったのは完全に俺のミスだ。
爺様は俺の下した評価に青筋を立て、後ろにいるヒュペルお義父さんへ振ると、悪ふざけで乗っかってきたので慌てて弁明する。
ゼンブルさんを引き合いに出すのは失礼かもしれないが、比較対象に挙げられた名に三毛猫様は声を荒げた、そんなに嫌か……、うんっ嫌かもしれない、あの人だと。
遊びもそろそろ切り上げてと、ヒュペルお義父さんが真面目な声で制止を呼びかけてきたので、俺は佇まいを直した。
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