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第2話

日常への生還

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何かが聞こえる、誰かが懸命に俺のことを呼んでいる気がする、空耳ではない、きっとそうだと何故か確信がある。
起きなくては、暗闇にあった俺の意識が必死になって光を求めてもがいていると、頭上に見えるそこを目指して必死に手を伸ばす。
そうして重い瞼を開けると、目の前に広がっていたのは見慣れた木の天井があった。
目を瞬かせて生きているのだと知った俺が横を見ると、会いたかった少年が泣いている。
意識を取り戻した俺に気づいたのか、すっと顔を上げれば涙で目を腫らし、フワフワの毛並みを濡らしたヒューイの赤い瞳と視線があった。

「……ヒューイ」
「ダイ、チ……! ダイチ、ダイチダイチダイチ! ダイチ! うわぁ~~ん!? ダイチぃ、良かったよぉ、ダイチぃ~~~!!!!」
「んっ、ヒューイっ苦しいよ……」

呟くように呼べば、その顔に希望が戻ったようで明るく今度は高らかに歓喜して大泣きするヒューイが、苦しいくらいに抱きついてくる。
寝ぼけ眼で首の圧迫感に耐えながら、自分が家に帰ってこれたのだと思っていると、ワンワンと叫ぶ番いの後ろから誰かが近づいてくるのが分かった。
顔を動かすとこっちに来てからできた父親二人と、村の長である三毛猫様が安堵したように話しかけてくる。

「気がついたか、ダイチ。 よかーー」
「ダイチ、大丈夫か!? どこか痛むか? 喉が渇いたか? 腹が痛いか、あぁそれとも食事が先か!?」
「落ち着け、この莫迦者。 ダイチ、気分はどうじゃ?」
「はい……、何というか、めちゃくちゃダルいです……」
「少し危うかったが、何とかなったようじゃの。 全く、お前が来てからというもの、毎日が刺激的すぎるわい、老骨をもう少し労ってくれんかの?」
「爺様、ダイチがわざと問題を起こしているわけではないですから……」
「分かっておる、ただの愚痴じゃ。 さて、起き抜けに悪いが、いくらか話してもらうぞ」

ヒュペルお義父さんの心配が痛いくらいに伝わる声に被さるよう、ゼンブルパパが、と一応呼んでおくとして、見たことないくらいに焦った顔で慌てていた。
どうやら敵愾心が無くなってくれたようで一安心だが、それにしては激変すぎないかと思っていると、ドーベルマンを黙らせるように爺様の杖アタックが頭部にヒットする。
ちょっと鳴ってはいけない音が聞こえた気がするけど、地面に悲鳴なく倒れたパパが心配だが、気にしてはいけないのだろうと無理やり納得した。
話したい、という要求には俺もそうだが、そもそもどうして無事に帰ってこれたのかを知りたいので、抱きついてくるヒューイを支えつつ上半身を起こす。

「あの、俺どうしてーーって!?」
『出せ~! 出すのだ~~!! えぇい、何だこの檻は!? ビクともせんぞ!』
「たわけ。 その状態のお前では出ることはできんぞ。 やれやれ、封印だけでは生温かったというわけか」
「じ、じじ、爺様!? 何でそれがここに!?」
『ようやく気が付いたか、童! さぁ、我に魔力を寄越すのだ! この憎き怪物を今こそ我が成敗してくれるわ!』
「ワシからすればお前の方が怪物なんじゃがの? まぁ構わぬぞ、今のお前であれば消炭にするのも容易いから、楽で良いの~」
『アーサー! アーサー貴様! 慈悲というものがないのか!? えぇい、早くここから出すのだ~~!?!?』
「……お義父さん、これは?」
「いやな、俺たちも聞きたいくらいなんだよ……」

見慣れた俺とヒューイの愛の巣、そこまでは良かったが、正面に見慣れぬ鳥籠のような檻を吊したスタンドがあった。
そこには思い出したくもない、あの小虎が閉じ込められていて、格子を掴んで壊そうと暴れ回っている。
ガルガーオンという精霊に向かい、爺様が呆れたような顔と口調で慣れたように話をしているのだから、俺の頭は混乱を極めた。
ヒュペルお義父さんに聞いても何がどうなっているのか分からないようなので、一先ず話をしなければならないだろう。
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