結び契る〜異世界転生した俺は番いを得る

風煉

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第2話

ダイチの属性

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「ーーという感じです。 そこで意識が切れちゃって、気が付いたここにいたってところですかね」
「ふむっ、なるほど。 どうやら魔力を吸い取られてから、そう時間も経っていなかったようじゃの。 文字通り、間に合って良かった」
「ヒック、ヒック……! ダイチ、ダイチ~~……」
「はいはい、ヒューイってばいい加減泣き止んでよ、こうして無事だったんだからさ」
「だって、だってぇ~~……」
「そう言ってあげるな。 番い持ちとなると、自らの半身にも等しい相手を失うことは、自我の喪失にも繋がりかねないんだ。 だからこそ、番いは番いを大事にするんだ」
「そう、いうものなんですか……?」
「そうだ、私だってヒュペルがもし誰かに襲われたなら、その相手を肉塊にした上で消炭にするを何十回と繰り返したところでトドメを刺すつもりでいる」
「やり過ぎだ、あと重すぎる、変なことを教え込むな」

とりあえず朝起きて、というか時間の感覚がなかったので、ざっくばらんに意識があった時のあらましを俺は説明する。
人数分の椅子を用意して腰掛ける爺様は、改めて息を吐いた姿を見ると相当にまずい状況だったのだろうな。
何せ未だヒューイは泣き止まず、グズグズと鼻水を垂らして俺の腕を掴んで離れようとしないのだ。
慰めても止まらない姿にヒュペルお義父さんが補足してくれるのを、ゼンブルパパが過激すぎる援護で迎え撃ってくれる。
この人の場合、番いに手を出そうとする人はまず間違いなく己の所業を後悔しながら、永遠続くトラウマを植え付けられるだろうな。
ていうかさっき爺様から攻撃受けたのに、何事もなかったかのようにすぐ起き上がったのだから、頑丈すぎないこのパパ。

「それであの、爺様。 何で、その、ガルガーオンがここに?」
「あぁ、それはーー」
『貴様! なぜ最初に異界人だと言わなかった!? しかもその属性、なぜ気がつかなったのだ! あぁ、数千年かけて考えた脱出計画がご破算になるなど、許容できぬ~~!!』
「何言ってんだ、このぬいぐるみ。 まぁ、いいや。 それで、大丈夫なんですか? こいつこんなところに連れてきて……」
「問題ない、というよりは連れてくるしかなかったのじゃよ。 全く、お前はどうして問題をさらに大きくした上で、悩みを増やしてくるのじゃ」
「はい? どういうーー」
「……よく聞くがよい。 これは今や、お前の従魔になっておる。 魔属性の根源ともいえる大精霊を従える主として契約が成立しておるのじゃ」
「……はっ????」

次に目の前、というよりかは離れたところにある籠の中で延々と叫ぶ小虎について聞くと、話題が自分になったことでギャンギャンと叫んでいた。
何を言っているのか分からないが、とりあえずガルガーオンの様子からして危険がないことは分かったので爺様を見る。
ところが表情暗く、俺がとんでもないことをしでかしてばかりだと文句を言われたので、流石に心外だと反論したかったが、できなかった。
老猫の口からよく分からないことを言われたので、俺は思考停止する、えっ従魔? 主って、どういうこと??

「えっ、あの? 何言ってるのか分からないんですけど……」
「爺様!? 従魔とはどういうことです!? てっきり連れてきたのには訳があると私はーー!」
「ワシもはっきりとしなかったからの、あの場では。 だがここに来てよく分かる、ダイチとそこの淫魔に強い繋がりを感じるのを」
『したくてしたわけではないわ! くそ、アーサー! どうせ貴様の差し金であろう! 本当に貴様は昔から底意地が悪い、この性悪魔導師が!』
「黙れ……、塵芥も残さんほどに消し飛ばされたいのか……?」
『ぐっ……!? クソっ、かつてよりも魔力が多いとは、貴様の方が化け物ではないか!』

聞き返す俺と同じくらいにヒュペルお義父さんが思わず立ち上がるくらいに驚くのは、どうやら顛末を知らなかったようだ。
だが爺様も確信がなかったようで、頭を抱えて虎へ目を向ければ威勢よく食ってかかるが、さっきから聞き慣れぬ名前は爺様のものだろう。
アーサーというのか、結構格好いいなと思っていると煩わしいと思ったようで、魔力が空気に振動して火花を散らす様に自称失意の森の主が押し黙った。
静かになったことで魔力を抑えたアーサーこと爺様が、再び俺を見て話を続けてくれる。

「ダイチ、お前がこれの塒で目を覚まして、そのーー、なんじゃ……。 犯されたのであろう?」
「えっ、あの……、ハイっ、そう、です……」
「その時にこれがお前の魔力を吸い取り、体内に直接取り込んだことで契約が成立し、お前たちの間に繋がりをもたらしたのじゃ。 その手の御印が何よりの証拠じゃ」
「手? うわっ、なんだこれ……!?」
「契約の証じゃ、ちなみにほれ。 あれの腹にも刻まれておるであろう?」

言いづらそうにしながら、それをはっきりと口にしなければいけないのだろう、気まずくなる俺と爺様だが、その一方で俺の側から離れないヒューイの顔が動いた。
どうしよう、怖くて見られない、浮気じゃないんだけど、到底許されていい問題でもないからタチが悪い!?
でも肯定しなければ始まらないのでそっと頷くと、爺様が指差した俺の左手の甲部分にタトゥーのようなものが浮かび上がっていた。
どことなく虎の顔に見えなくもないが、いつの間にこんなものが出てきたのだろう。
やけに目立つ場所だが、次にガルガーオンを見ると、臍辺りに毛皮の上からでも分かるくらいはっきりと紋様が浮かんでいた。

「本来精霊との従魔契約は複雑な段取りが必要なのじゃが、お互いの体液を摂取することで結ぶことができる。 心当たりはあるな?」
「……はい、ありすぎます」
「それがきっかけじゃの。 さて、どうしたものか……」
「ま、待ってください爺様! それはいいのですが、ガルガーオンですよ? なぜ魔属性の象徴ともいえる根源の精霊とダイチが契約、を……。 えっ? まさかダイチの属性とは、いくらお聞きしてもお答えくださらなかったのは、それだと!?」
「……話したくても話せなかったのはそういうことじゃ。 ダイチ、お前は以前自分の属性が何か知りたいと言っておったな?」
「はい。 確かその時が来たら教えてくださると、言ってましたよね?」
「うむっ、それが今のようじゃ。 ダイチ、お主の属性とは”幻”と呼ばれるものじゃ」

どうして契約が成立したのかについては、あの強姦が全ての原因だったようだ、それにしてもあんなのを従えても嬉しくない。
嫌気がさす俺だったが、どこか焦った様子のヒュペルさんが声を出すと、自分で口にして自分で疑問を解決してしまうような口ぶりに、爺様がため息をついた。
すっと俺を見る真剣な顔の三毛猫様が口にしたのは、俺の属性についてである。

「幻……? それって確か、四大元素の頂、点ーーっ!? えっ? ウソっ……??」
「そのまさかじゃ。 お前は四大元素の頂点に君臨する三属性、その一角である幻の力を秘めておる。 そしてガルガーオンの魔属性とは最悪に相性が悪く、お前の魔力に押し負けて契約という形に収まったというわけじゃ」
「だからといって! 大精霊との契約など、いくら人属といえど魔力量に差があります! それは埋めようがない圧倒的な差では!?」
「そうじゃの、じゃがヒュペルよ。 それが全く逆であったならば、話は違うであろう?」
「……そんな、それではダイチの魔力量は!?」
「そうじゃ、こやつの魔力量はワシと同格、いやっもしかしたらそれ以上なのかもしれぬ。 異界人は総じて魔力量が多いのは特徴の一つじゃが、お前はワシが今まで見てきた者の中でも抜きん出て規格外の存在のようじゃ」
「あのーー話に、ついていけないのですけど……」
「安心せぃ、ワシとて理解するのに苦労しておる。 お前の今後も考えていた中で、こんな悪魔みたいな存在まで引き込む事態になろうとは……」
『悪魔とは何だ、悪魔とは! 我は古代種の精霊ぞ! あのような低俗な輩と一緒にするでない!』
「黙らんか! そういう台詞は善行をしてきたものにのみ発言が許される、お前のように災厄しか振りまいてこなかった淫獣が言っていいものではない!」
『淫獣だと!? ふん、貴様にしては最高の褒め言葉を言うではないか、やはり年老いーー、イダダダダダダダダっ!?!?』
「黙れと言っておるのが分からんのか、黙れと……!」

爺様が口にしていることを、俺の矮小な頭では理解できないことが多すぎる、俺の属性が世界の根源的なものに関わるもので、しかも魔力量は爺様に匹敵するかそれ以上とか、信じられない。
だがガルガーオンに嬲られているとき、それを思わせる内容を虎が口にしていたことを考えていると、件の精霊と村の長がまたしても言い争っていた。
けれど閉じ込められているせいで勝敗はすぐ決着する。 見れば小虎の首には何か糸のようなものが巻き付けられ、それに反応して感電しているから爺様が何か施したのだろう。
ヒュペルお義父さんも頭を抱え、ゼンブルパパは黙っているが、多分この人も分かっていないんだろうな、仲間がいてよかった。
あと一人、ヒューイはずっと黙ったまま俺の腕を抱きしめているわけだが、反応なしなのは辛いよ。
ふと気分を変えようと窓を見れば、すっかり陽も落ちて夜になっていた。
そろそろお腹が空いてもいい時間だが、空腹ではないのはそれだけ疲れ切っているからだろうか。
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