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第2話
紫色の時化
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同時刻、草木も生えない真夜中の荒野を一つの影が歩いている。
2mをゆうに超える身長に見合うほどの羽織ったボロボロのマントを靡かせ、吹き荒ぶ風を気にすることなく時折鼻歌を歌っていた。
その時、大地を揺らすほどの轟音が響いた瞬間、影の主から後方およそ50mほど離れた地面から突き破るようにして現れたのは、巨大な芋虫のような生物が呻き声を上げる。
腹を空かし、無防備すぎるほど現れた獲物を前に涎を垂らし、10mはある巨体で地を這いずり回り、巨大な口で餌を丸呑みしようと飛びかかった。
それに対して振り返ることなく、自身の間合いに入り込むタイミングを完全に把握し、目にも止まらぬ速さで繰り出される裏拳が怪物にヒットする。
体格差は歴然としていた、しかしそのたった一撃を受けて芋虫は自分と同等以上の何かにぶつかったかのような衝撃を受け、来た道を強制的に戻されるように弾き飛ばされた。
巣穴だった場所よりも遥か後ろ、およそ200mもの距離を吹き飛ばされるダメージを受け、芋虫は虫の息に陥る。
影の主は歩みを止めることなく、また自身に襲い掛かった存在を気にも留めず進み、やがて見えてきた丘を昇りきったところで辺りを見渡した。
「ふぅん? あれか、あの偏屈ジジイの工房がある失意の森っつうのは。 駒は大して役に立たなかったみたいだが……、神殿の連中もたまにはまともな神託を言うんだな」
怪しく輝く月光の下、強風で翻るほどにマントを靡かせる男が見下ろしているのは、彼の立つ荒野とは打って変わって鬱蒼と広がる森林地帯がある。
口元が怪しく歪んだとき、頭を覆っていたフードが風に煽られて剥がれると、目を奪われるほど美しく印象的な紫の毛並みと、左目に大きな切り傷を伴った荘厳の狼が現れた。
「……クッセェな、マジでクセェぞ。 ここまで匂うとは、どうやら今回は正真正銘の大当たりっつうわけだ。 さて、迎えにいくとするか、俺様の番いをよ」
鋭い眼光で睨む眼下から、狼の鋭い嗅覚が風に乗って届いたある匂いを鼻で捉えると、男を昂らせる。
踏みしめる大地を蹴るように跳び、獣は崖を流れるように下りていった。
その先に見える男が求めてやまなかった宝がそこにある、絶対的な確信と共に狼は樹海への侵入を果たす。
かの暴君が迫りつつあることを同じ月の下、ひとつ屋根の下で番いと抱き合い眠る青年は知る由もなかった。
2mをゆうに超える身長に見合うほどの羽織ったボロボロのマントを靡かせ、吹き荒ぶ風を気にすることなく時折鼻歌を歌っていた。
その時、大地を揺らすほどの轟音が響いた瞬間、影の主から後方およそ50mほど離れた地面から突き破るようにして現れたのは、巨大な芋虫のような生物が呻き声を上げる。
腹を空かし、無防備すぎるほど現れた獲物を前に涎を垂らし、10mはある巨体で地を這いずり回り、巨大な口で餌を丸呑みしようと飛びかかった。
それに対して振り返ることなく、自身の間合いに入り込むタイミングを完全に把握し、目にも止まらぬ速さで繰り出される裏拳が怪物にヒットする。
体格差は歴然としていた、しかしそのたった一撃を受けて芋虫は自分と同等以上の何かにぶつかったかのような衝撃を受け、来た道を強制的に戻されるように弾き飛ばされた。
巣穴だった場所よりも遥か後ろ、およそ200mもの距離を吹き飛ばされるダメージを受け、芋虫は虫の息に陥る。
影の主は歩みを止めることなく、また自身に襲い掛かった存在を気にも留めず進み、やがて見えてきた丘を昇りきったところで辺りを見渡した。
「ふぅん? あれか、あの偏屈ジジイの工房がある失意の森っつうのは。 駒は大して役に立たなかったみたいだが……、神殿の連中もたまにはまともな神託を言うんだな」
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口元が怪しく歪んだとき、頭を覆っていたフードが風に煽られて剥がれると、目を奪われるほど美しく印象的な紫の毛並みと、左目に大きな切り傷を伴った荘厳の狼が現れた。
「……クッセェな、マジでクセェぞ。 ここまで匂うとは、どうやら今回は正真正銘の大当たりっつうわけだ。 さて、迎えにいくとするか、俺様の番いをよ」
鋭い眼光で睨む眼下から、狼の鋭い嗅覚が風に乗って届いたある匂いを鼻で捉えると、男を昂らせる。
踏みしめる大地を蹴るように跳び、獣は崖を流れるように下りていった。
その先に見える男が求めてやまなかった宝がそこにある、絶対的な確信と共に狼は樹海への侵入を果たす。
かの暴君が迫りつつあることを同じ月の下、ひとつ屋根の下で番いと抱き合い眠る青年は知る由もなかった。
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