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最後は笑顔で
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「写真なんか撮ってるんじゃねえ! 」
突然の怒声に顔を上げると、俺は取り囲まれている事に気付いた。
光がその脇からすり抜けるように何回もフラッシュした。
周りを囲んでいるのはダンスの仲間だった。
そして、マスコミや弥次馬のカメラやスマホから俺を守ってくれていた。
俺はぼんやりとみんなを見回した。
いろんな奴が囲んでいる。
男も女も。
全員こちら向きに立っていた。
周りからいろんな音色の嗚咽が聞えてきた。
俺の左横にいる奴はいつもクールで、人の輪に積極的に入っていこうとしなかった。
それをマサミが強引にみんなの輪に入れようとしていたが、それでも無関心そうにしている奴だった。
だが、そんな奴が泣いていた。
親が死んでも泣きそうにないのに、中腰になり体を振わせながら震えていた。
そいつだけじゃない、いつも底抜けに明るくバカ騒ぎばかりしている奴ら、女はやるために存在するんだと公言していたバカ男やマサミに一方的にライバル心を持っていた女達もみんな泣いていた。
俺は頭に来た。
マサミは自分が殺されるかも知れないって分かっていたんだ。
それなのに無理難題を言って、勝手に死んでいったんだ。
死んでも笑って欲しいなら、そういう風に生きろよ!
俺は言ってやる、逆ギレと言われても言ってやる。
ハルナさんが何故か慌てて輪の中に入ってきた。
「行くよ!」
ハルナさんが俺の左手を引っ張る。
分かった、行くよ。
文句言ってやるんだ。
俺は誰に聞かせるでもなく呟き、右手で街路樹を押して立ち上がった。
守ってくれていたみんなが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫、ありがとな」
それだけは、しっかりと伝えた。
俺は手を引かれるまま葬儀場の中に入っていく。
急に光の中に入り、滲んだ視界は周りのものをやけに輝かせた。
受付も、入り口付近にいてこちらに視線を送っている奴らもスルーして奥の部屋入り口の左脇に連れて行かれた。
六十畳ほどの部屋に未だに乾かない涙でぼやけてよく見えないが、マサミの写真が飾られている祭壇が沢山の花に囲まれながら黄金色に輝いている。
その前にある焼香台に二十人ぐらいの奴らが列を作っていた。
その列を挟むようにパイプ椅子が並べられている。
「見てよ!
マサミがあの写真使ってって頼んでたんだって。あの子本当に……」
そこまで言うと、ハルナさんは俺の腕にすがり泣いた。
俺は逆の手で涙を拭い、改めてマサミの写真を見た。
マサミは舌を出しながら、恥ずかしそうに肩をすくめ、ピンク色のパーカーのフードを両手で引っ張り目を隠していた。
「ゴメン、バカだから」
そんな声が聞えてきた気がした。
バカだな、本当にバカだな。
俺は心の中で呟いた。
目がまた熱くなる。
でも……。
それでも……。
写真を見ていたら、何となくちょっとだけ、笑えた。
突然の怒声に顔を上げると、俺は取り囲まれている事に気付いた。
光がその脇からすり抜けるように何回もフラッシュした。
周りを囲んでいるのはダンスの仲間だった。
そして、マスコミや弥次馬のカメラやスマホから俺を守ってくれていた。
俺はぼんやりとみんなを見回した。
いろんな奴が囲んでいる。
男も女も。
全員こちら向きに立っていた。
周りからいろんな音色の嗚咽が聞えてきた。
俺の左横にいる奴はいつもクールで、人の輪に積極的に入っていこうとしなかった。
それをマサミが強引にみんなの輪に入れようとしていたが、それでも無関心そうにしている奴だった。
だが、そんな奴が泣いていた。
親が死んでも泣きそうにないのに、中腰になり体を振わせながら震えていた。
そいつだけじゃない、いつも底抜けに明るくバカ騒ぎばかりしている奴ら、女はやるために存在するんだと公言していたバカ男やマサミに一方的にライバル心を持っていた女達もみんな泣いていた。
俺は頭に来た。
マサミは自分が殺されるかも知れないって分かっていたんだ。
それなのに無理難題を言って、勝手に死んでいったんだ。
死んでも笑って欲しいなら、そういう風に生きろよ!
俺は言ってやる、逆ギレと言われても言ってやる。
ハルナさんが何故か慌てて輪の中に入ってきた。
「行くよ!」
ハルナさんが俺の左手を引っ張る。
分かった、行くよ。
文句言ってやるんだ。
俺は誰に聞かせるでもなく呟き、右手で街路樹を押して立ち上がった。
守ってくれていたみんなが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫、ありがとな」
それだけは、しっかりと伝えた。
俺は手を引かれるまま葬儀場の中に入っていく。
急に光の中に入り、滲んだ視界は周りのものをやけに輝かせた。
受付も、入り口付近にいてこちらに視線を送っている奴らもスルーして奥の部屋入り口の左脇に連れて行かれた。
六十畳ほどの部屋に未だに乾かない涙でぼやけてよく見えないが、マサミの写真が飾られている祭壇が沢山の花に囲まれながら黄金色に輝いている。
その前にある焼香台に二十人ぐらいの奴らが列を作っていた。
その列を挟むようにパイプ椅子が並べられている。
「見てよ!
マサミがあの写真使ってって頼んでたんだって。あの子本当に……」
そこまで言うと、ハルナさんは俺の腕にすがり泣いた。
俺は逆の手で涙を拭い、改めてマサミの写真を見た。
マサミは舌を出しながら、恥ずかしそうに肩をすくめ、ピンク色のパーカーのフードを両手で引っ張り目を隠していた。
「ゴメン、バカだから」
そんな声が聞えてきた気がした。
バカだな、本当にバカだな。
俺は心の中で呟いた。
目がまた熱くなる。
でも……。
それでも……。
写真を見ていたら、何となくちょっとだけ、笑えた。
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