老兄、林太郎の恋

人紀

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その7

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 結局、わたくしは『ストリートダンス』の教室に無理矢理連れて行かれました。

 そして、文化センターの一室で初めて兄の思い人、真美先生にお会いしました。
 わたくしらを見かけた先生は駆け寄ってきてくださり、
「初めまして、真美と言いますぅ。
 林太郎さん、マジで妹さん連れてくるんだもん、びっくりしたぁ」
と、大声で笑っていらっしゃいました。
 それに対して、「自慢の妹じゃ!」と兄は低い背丈を必死で伸ばし、誇らしげにしておりました。
 兄はいくつになっても、わたくしを紹介する時には「自慢の妹」と言うものですから、恥ずかしくて仕方がありません。
 しかもその時は、真美先生も
「うんうん、自慢したくなるの分かる!
 上品でかわいいお婆ちゃんだ!」
とおっしゃるので、顔が熱くて仕方がなく、穴があったら入りたくなるほどでございました。

 真美先生は、薄茶色の短い髪で、化粧も濃く、服装がやはりチグハグで、とても上品なご令嬢とは言えない方でございました。

 ただ、そんな姿形とは裏腹に、わたくしのために座布団を椅子に敷いてくださったりと細かに気配りの出来る、感じの良い娘さんでございました。
 孫にいると楽しいだろうなと思いましたが、義理の姉にはやはり若すぎました。
「じゃあ、始めまぁす!」
 真美先生が大鏡の前に立ち、兄を含む生徒さんらに声をかけました。
 そして、一つずつ丁寧に、ダンスの動きをご説明されていました。
 兄ほどではないにしても、大半が四十代でしょうか? 思ったよりも年齢が高めの方が多くいらっしゃいました。
 そして、男性よりも女性の割合が高く、そのためかもしれませんが、兄が携帯で見せてたものに比べて、随分大人しめな感じの踊りでございました。
 それでもまあ、とてもではありませんが、七十代のお婆ちゃんがするには激しすぎますし、初段を自称しておりました兄にしても、ハアハアゼイゼイ言いながら、ダンスなのかドジョウ掬いなのか分からぬ動きをしておりました。
 それなのに、先生の真後ろに陣取り、懸命にアピールする姿は微笑ましい光景でございました。
 兄とて膝を痛めておりますし、腰も一度悪くしております。
 それでも、無理を承知で恋を成就させようとする姿勢は凄い事だと思いました。

 その時、ふと思い浮かんだのは、わたくしが真美先生と同じぐらい頃、女学校時代の恩師とダンスホールで踊った時の事でございます。
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