Trains-winter 冬のむこう側

白鳥みすず

文字の大きさ
6 / 12
第一章 ユキ

しおりを挟む
もうすぐ中間テスト。
勉強は順調に進んでいる。いつもは億劫な勉強も好きな人と過ごせるならうきうきとしたものに変わる。
我ながら現金だなあと思う。テスト前はユキくんに会えなくなると思っていた。
でも彼は図書館に来ないの?と聞いてくれたのだ。
このチャンスを逃さないはずはない。
私はちゃっかりと一緒に勉強する約束を取り付けた。
ユキくんはぶっきらぼうであまり笑わないけれど、優しい。
時折見せてくれる微笑みがとても好きだ。
聞いていて落ち着く静かな声も。
最初に出会った頃よりも彼のことが好きでたまらない。
知れば知るほどどんどん好きになる。
彼との時間はとても楽しい。ユキくんも私と同じ気持ちでいてくれたらいいなあと
思う。
スキップしそうな勢いで歩く。
この間はユキくんの友達にはじめて会った。
友達?って聞いた時のまあ、と答えた時の彼は珍しく照れていた。
今度は三人で話せると思うし楽しみだ。
よし、このまま図書館に行くぞ、と思って門を出ると銀色の髪が見えた。
噂をすれば。
と思って声をかけようとすると彼が笑って手を上げた。
「こ、こんにちは!心と申します。ユキくんのお友達ですよね?」
私が慌てて駆け寄ると彼は笑ったまま頷いた。
「そうそうユキくんのお友達。心ちゃんに聞きたいことがあってきたんだよ」
「え?」
ここじゃ人の邪魔になるし場所変えよっか、と言われ言われるがままに私は彼についていった。
河原まで移動すると彼は私に視線を移した。
「ユキくんとはいつから知り合ったの?」
ズボンに手を突っ込み軽く尋ねてきた彼に私は答えた。
「実は前から知っていたんです。門の前で桜を眺めている姿を見てどんな人なんだろうって。図書館でも見かけてそこでお話するようになりました」
私はそのときのことを思い出して頬を緩めた。
「ユキくんにどういうつもりで近づいたの?」
彼の顔は相変わらず笑っていたけれど、目は笑っていなかった。
「世間の教育、ちゃんと受けなかった?フールの生徒には近づいたらいけないって」
・・・私はただユキくんのことが知りたかった。そして声が聞きたいと思った。
「・・・ユキくんがフールの生徒だってことは知っていました。ですが、近づきたいと思ってしまったのです。ただ、それだけです」
「じゃあ興味本位で近づいたんだ?君のせいで彼は変わってしまったよ。
生きることに希望を見いだしちゃったってところかな」
彼の声がどんどん冷え切っていることに気づく。
思わず後ろに一歩下がった。
「自分がどれだけ残酷なことしているか分かってるの?馬鹿な心ちゃん」
肩をぐっと掴まれる。強い力だった。
痛い。痛さで一瞬呼吸を忘れるようなそんな強さだった。
後ろに倒れ込むと彼は私にまたがるような体勢になった。
身体も痛い。
「俺たちは死ぬんだよ。何で叶いもしない夢を見せるの?
君には未来があるから?だからそんな高見の見物ができるの?」
ねえ、と彼は言って今度は私の首を締めた。
「・・・ユキも馬鹿だよ。馬鹿だから、俺の言葉にも気づけない。自分の愚かさにも気づけない。ユキより先に逝かせてあげよっか」
・・・怖い。彼の目には何が映っているのだろうか。
私に対する憎しみしか今は感じない。
苦しい。息ができない。彼の顔がぼやける。
固い地面に押さえつけられ、容赦なく首を絞められていく。
意識がどんどん遠のいていく。
彼の目がすっと細められた。
そして首から手が離れる。
私は咳き込んで身体を折り曲げた。
その首筋を彼の手がなぞる。耳元で彼が囁いた。
「俺、誰かを傷つけたいって思ったの始めてかも」
なーんてね、というと彼は何事もなかったかのように笑顔で立ち上がった。
「軽い気持ちで近づいたら、これじゃすまないかもね」
折られた携帯が草むらに落ちていた。
彼の連絡先もそこには入っていた。
彼と一緒にいたい、この気持ちは間違ってるの?
誰もいなくなった場所でつぶやく。
ユキくん、私はあのときあなたに声をかけたこと、間違ってたの?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...