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第一章 ユキ
彼
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もうすぐ中間テスト。
勉強は順調に進んでいる。いつもは億劫な勉強も好きな人と過ごせるならうきうきとしたものに変わる。
我ながら現金だなあと思う。テスト前はユキくんに会えなくなると思っていた。
でも彼は図書館に来ないの?と聞いてくれたのだ。
このチャンスを逃さないはずはない。
私はちゃっかりと一緒に勉強する約束を取り付けた。
ユキくんはぶっきらぼうであまり笑わないけれど、優しい。
時折見せてくれる微笑みがとても好きだ。
聞いていて落ち着く静かな声も。
最初に出会った頃よりも彼のことが好きでたまらない。
知れば知るほどどんどん好きになる。
彼との時間はとても楽しい。ユキくんも私と同じ気持ちでいてくれたらいいなあと
思う。
スキップしそうな勢いで歩く。
この間はユキくんの友達にはじめて会った。
友達?って聞いた時のまあ、と答えた時の彼は珍しく照れていた。
今度は三人で話せると思うし楽しみだ。
よし、このまま図書館に行くぞ、と思って門を出ると銀色の髪が見えた。
噂をすれば。
と思って声をかけようとすると彼が笑って手を上げた。
「こ、こんにちは!心と申します。ユキくんのお友達ですよね?」
私が慌てて駆け寄ると彼は笑ったまま頷いた。
「そうそうユキくんのお友達。心ちゃんに聞きたいことがあってきたんだよ」
「え?」
ここじゃ人の邪魔になるし場所変えよっか、と言われ言われるがままに私は彼についていった。
河原まで移動すると彼は私に視線を移した。
「ユキくんとはいつから知り合ったの?」
ズボンに手を突っ込み軽く尋ねてきた彼に私は答えた。
「実は前から知っていたんです。門の前で桜を眺めている姿を見てどんな人なんだろうって。図書館でも見かけてそこでお話するようになりました」
私はそのときのことを思い出して頬を緩めた。
「ユキくんにどういうつもりで近づいたの?」
彼の顔は相変わらず笑っていたけれど、目は笑っていなかった。
「世間の教育、ちゃんと受けなかった?フールの生徒には近づいたらいけないって」
・・・私はただユキくんのことが知りたかった。そして声が聞きたいと思った。
「・・・ユキくんがフールの生徒だってことは知っていました。ですが、近づきたいと思ってしまったのです。ただ、それだけです」
「じゃあ興味本位で近づいたんだ?君のせいで彼は変わってしまったよ。
生きることに希望を見いだしちゃったってところかな」
彼の声がどんどん冷え切っていることに気づく。
思わず後ろに一歩下がった。
「自分がどれだけ残酷なことしているか分かってるの?馬鹿な心ちゃん」
肩をぐっと掴まれる。強い力だった。
痛い。痛さで一瞬呼吸を忘れるようなそんな強さだった。
後ろに倒れ込むと彼は私にまたがるような体勢になった。
身体も痛い。
「俺たちは死ぬんだよ。何で叶いもしない夢を見せるの?
君には未来があるから?だからそんな高見の見物ができるの?」
ねえ、と彼は言って今度は私の首を締めた。
「・・・ユキも馬鹿だよ。馬鹿だから、俺の言葉にも気づけない。自分の愚かさにも気づけない。ユキより先に逝かせてあげよっか」
・・・怖い。彼の目には何が映っているのだろうか。
私に対する憎しみしか今は感じない。
苦しい。息ができない。彼の顔がぼやける。
固い地面に押さえつけられ、容赦なく首を絞められていく。
意識がどんどん遠のいていく。
彼の目がすっと細められた。
そして首から手が離れる。
私は咳き込んで身体を折り曲げた。
その首筋を彼の手がなぞる。耳元で彼が囁いた。
「俺、誰かを傷つけたいって思ったの始めてかも」
なーんてね、というと彼は何事もなかったかのように笑顔で立ち上がった。
「軽い気持ちで近づいたら、これじゃすまないかもね」
折られた携帯が草むらに落ちていた。
彼の連絡先もそこには入っていた。
彼と一緒にいたい、この気持ちは間違ってるの?
誰もいなくなった場所でつぶやく。
ユキくん、私はあのときあなたに声をかけたこと、間違ってたの?
勉強は順調に進んでいる。いつもは億劫な勉強も好きな人と過ごせるならうきうきとしたものに変わる。
我ながら現金だなあと思う。テスト前はユキくんに会えなくなると思っていた。
でも彼は図書館に来ないの?と聞いてくれたのだ。
このチャンスを逃さないはずはない。
私はちゃっかりと一緒に勉強する約束を取り付けた。
ユキくんはぶっきらぼうであまり笑わないけれど、優しい。
時折見せてくれる微笑みがとても好きだ。
聞いていて落ち着く静かな声も。
最初に出会った頃よりも彼のことが好きでたまらない。
知れば知るほどどんどん好きになる。
彼との時間はとても楽しい。ユキくんも私と同じ気持ちでいてくれたらいいなあと
思う。
スキップしそうな勢いで歩く。
この間はユキくんの友達にはじめて会った。
友達?って聞いた時のまあ、と答えた時の彼は珍しく照れていた。
今度は三人で話せると思うし楽しみだ。
よし、このまま図書館に行くぞ、と思って門を出ると銀色の髪が見えた。
噂をすれば。
と思って声をかけようとすると彼が笑って手を上げた。
「こ、こんにちは!心と申します。ユキくんのお友達ですよね?」
私が慌てて駆け寄ると彼は笑ったまま頷いた。
「そうそうユキくんのお友達。心ちゃんに聞きたいことがあってきたんだよ」
「え?」
ここじゃ人の邪魔になるし場所変えよっか、と言われ言われるがままに私は彼についていった。
河原まで移動すると彼は私に視線を移した。
「ユキくんとはいつから知り合ったの?」
ズボンに手を突っ込み軽く尋ねてきた彼に私は答えた。
「実は前から知っていたんです。門の前で桜を眺めている姿を見てどんな人なんだろうって。図書館でも見かけてそこでお話するようになりました」
私はそのときのことを思い出して頬を緩めた。
「ユキくんにどういうつもりで近づいたの?」
彼の顔は相変わらず笑っていたけれど、目は笑っていなかった。
「世間の教育、ちゃんと受けなかった?フールの生徒には近づいたらいけないって」
・・・私はただユキくんのことが知りたかった。そして声が聞きたいと思った。
「・・・ユキくんがフールの生徒だってことは知っていました。ですが、近づきたいと思ってしまったのです。ただ、それだけです」
「じゃあ興味本位で近づいたんだ?君のせいで彼は変わってしまったよ。
生きることに希望を見いだしちゃったってところかな」
彼の声がどんどん冷え切っていることに気づく。
思わず後ろに一歩下がった。
「自分がどれだけ残酷なことしているか分かってるの?馬鹿な心ちゃん」
肩をぐっと掴まれる。強い力だった。
痛い。痛さで一瞬呼吸を忘れるようなそんな強さだった。
後ろに倒れ込むと彼は私にまたがるような体勢になった。
身体も痛い。
「俺たちは死ぬんだよ。何で叶いもしない夢を見せるの?
君には未来があるから?だからそんな高見の見物ができるの?」
ねえ、と彼は言って今度は私の首を締めた。
「・・・ユキも馬鹿だよ。馬鹿だから、俺の言葉にも気づけない。自分の愚かさにも気づけない。ユキより先に逝かせてあげよっか」
・・・怖い。彼の目には何が映っているのだろうか。
私に対する憎しみしか今は感じない。
苦しい。息ができない。彼の顔がぼやける。
固い地面に押さえつけられ、容赦なく首を絞められていく。
意識がどんどん遠のいていく。
彼の目がすっと細められた。
そして首から手が離れる。
私は咳き込んで身体を折り曲げた。
その首筋を彼の手がなぞる。耳元で彼が囁いた。
「俺、誰かを傷つけたいって思ったの始めてかも」
なーんてね、というと彼は何事もなかったかのように笑顔で立ち上がった。
「軽い気持ちで近づいたら、これじゃすまないかもね」
折られた携帯が草むらに落ちていた。
彼の連絡先もそこには入っていた。
彼と一緒にいたい、この気持ちは間違ってるの?
誰もいなくなった場所でつぶやく。
ユキくん、私はあのときあなたに声をかけたこと、間違ってたの?
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