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日本と異世界とその周辺
女神さまと異世界の門 その2
しおりを挟む「既に持ちこんだ発電機についてですが―――」
「燃料の方は妖精たちが代わりに―――」
「―――成る程。それならまだ大丈夫でしょうか。分解して量産するのは―――」
「分かりました。その対処で構いません。それよりメインで持ちこみを考えている砂糖を中心とした調味料や保存のきく食料についてですが――――――」
「ビニール・プラケース・ペットボトル・段ボールですか。それは―――」
「―――は難しいですね。既に数多くの―――」
「……むぅ。仕方ありませんね。それなら―――」
その後の話でも召喚されました、世界の平和のために頑張ってください!そのためにレアなスキルを授けます………なんて話は無く、どことなく現れた机に向きあって既に持ちこんだ品々や今後持ちこもうと考える品々について協議が行われる。
ちらっと出た話によれば目安となるステータスやスキルを確認することもできるらしいが命を賭けて、一獲千金なんてゲームや漫画の世界で十分だ。
社会に出たら生活費・ローン・養育費・保険・学費・貯蓄・税金・年金と金を稼ぐ生活で手いっぱいになるのだから。
俺がそのしがらみから逃げて異世界に移住するとなったら、取引先や家族警察に周囲の人々と大多数に迷惑がかかる。
東條に限っては知らないが、まぁ何にせよ一度社会の枠組みに入ってしまったら命を絶つ以外そう簡単に切り離せるものじゃないのだ。
そんなわけで外貨をキッチリ稼ぐには外国の国防長官みたいな人としっかり話をつける必要があるわけだ。
「終わり……ですかね?」
「はい、大丈夫だと思います。お疲れさまでした」
「ありがとうございました」
前職の癖で握手を交わし一礼する。
あっと思ったがセレーネちゃんも合わせてくれた。
ちっちゃくても流石神様、出来る。
「ちっちゃいは余計ですよ!それに何千年中間管理職をやってると思ってるんですか」
あー、そうなんだ。
東條から渡された資料のせいもあってふんぞり返ってるか召喚の時以外何もしていないイメージしかなかったわ。
「そんなことないですよ、………確かに地味だけど仕事は山の様にあるんですよ。例えば―――」
はい、すみません。
分かりました、じゅーぶんに分かりましたのでそろそろやめて頂けないでしょうか?
というかセレーネちゃん、なんか色々溜ってない?
「……ごめんなさい、話が通じる人がひさっびさに現れたのでつい。偶に地球出身の魂も廃k……じゃなかった。送られて来るのですが現れる度転生だチートだ煩くて煩くて……」
それはジャパニカルチャーのせいでしょうね。
というか廃棄って言わなかった?
異世界っていらない魂の廃棄場?
「コホンッ、仕方ないので望んだスキル与えてさっさと放逐してますが」
いいのか、それ。
この世界崩壊しないか?
「大丈夫ですよ。成長100倍なら上昇率は100分の1ですし、身体能力数倍・数十倍なんて肉体の方が使うたびにひしゃげていきます。スキルの創造なんて神様でも厳しい事がそうそう出来るはずはありません。どうなるのか一度不安になって確認してみた事もありましたが大抵は不発、発動したら神経が焼き切れたのか植物人間になっていましたね」
怖っ。
「そもそも努力なしに他社を圧倒する力を手に入れられるなんて常識的にありえないじゃないですか。聞くところによると普通の地球の方は死んだら地獄と言う自分たちで創った世界で生前の罰を受けて消滅したり世界に戻ったりしているらしいじゃないですか。確かにその環から追い出された若しくは逃げてきた魂が自分は特別ですって?確かに悪い意味で特別でしょうが、そんな輩が楽して思うがままの生活をって………………」
おーい?セレーネちゃ~ん?
まだ暗黒面が出てないか~い?
「………あっ、ごめんなさい。ついつい不満が」
この世界の住人と話したりは……
「あ、無理です。どうでもいい世間話まで勝手に解釈して聖書に残しちゃうんで。朝食に美味しいパンが焼けました。なんて話たらいつのまにか戒律に『朝はパンを食べなければならない』なんて残されてて………」
あー、わかる。
あの入り口のおっさ…お偉いさんとか言いそう。
「でしょう。少なくとも隼人さんをお呼びした事が記録に残ることは間違いないでしょうねぇ」
呆れた感じでため息をつく。
というか何の話をしてたんだっけ。
セレーネちゃんの愚痴しか記憶に残って無い様な…。
「えっ。隼人さん、大丈夫ですよね?ねぇ?」
物凄く引きとめようとするセレーネちゃんを説得して教会へ戻る。
あの不思議空間では時間が止まる――なんてことは無く、きちんと時計が秒針を刻んでいたのだから。
既に17時を過ぎており放置したままの店や三人娘、手つかずの家事・雑事が脳裏に浮かぶ。
いつのまにか増殖していたお偉いさん達に大通りに方向を聞いて教会を飛び出す。
お話を少しとかこちらの部屋にとか明らかに拘束される言葉を無視、掴みかかろうとするお偉いさんやシスターを振り払って家路に急ぐ。
シスターとか初めて見たけど、出現するのは時と場合を考えてほしいね。
それどころじゃないっつーのに。
汗だくになりつつ店にたどり着く。
時間?時計を見る暇も惜しいわ。
既に戸締りを終えていたようで店内はしんと静まっていた。
謝るのは明日だな。
急いで二階に……っと、セレーネちゃんから貰ったお土産――透明な宝石みたいなもの――を無造作にテーブルに置いて階段をかけ上がる。
エルモ達がいるから盗まれる事は無いだろう。
―――深夜
テーブルの宝石が薄く光ひとりでにふよふよと浮かびあがる。
「流石に衆目の場で現れるわけにはいかないですよねぇ」
どうやってかしらないが宝石が一部屋一部屋扉を開けて中を確かめる。
と、シルイットでは異質なものが数多く設置された一室に惹かれたようだ。
「なるほど、確かに私たちからした摩訶不思議ですね。プリンター……成る程、印刷する道具ですか。こちとらまだ印刷どころか手書きで写本が一般的なんですがねぇ。まぁ、この部屋なら不特定多数の人を案内する事もないでしょうし、この部屋にお世話になりますか。よろしくお願いしますね、隼人さん」
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