卸商が異世界で密貿易をしています。

ITSUKI

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日本と異世界とその周辺

女神さまと異世界の門 その1

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「ここですね」

「はぁ……ありがとうございます。―――はぁ」

ガルフコーストさんに案内してもらって教会に到着すると、教会を管理するお偉いさんみたいな人に深々と頭を下げられる。
なんでも

「実は女神様から直々に神託が届きまして。お言葉を伝えたい者がいるので教会を空けておくようにと告げられております。記録によれば約300年ぶりの神託で、当教会に選ばれた事はとても喜ばしい事です」

とのこと。

その割には微妙な苦笑いとあんた何者だよって胡乱気な視線だったけど。
……まぁ、神様からのお告げがちょっと人来るから部屋開けといてなんて内容だったら仕方ないとは思うけどねぇ。

これって告げられた内容まで記録に残るのかなぁ。

因みに王様からも女神様からも簡単に要約すると『一度顔見せろやあぁん?』ってことらしい。

心当たりは無い―――と言いたい所だが、日本から色々な物を持ちこんでいる事だよなぁ。
高い視点から俯瞰する神様…じゃなかった、女神様ならともかく何がどうあって国のトップに話が飛んだのやら。
思い返すと自然とため息が出てきてしまう。

とはいうものの王様の元――王都までは馬車を利用して片道2日、歩いて3日程かかるらしい。
シルイットこの世界には週2日間、それも日中のみの滞在なので時間の都合無理だと返事をした。

同じ理由で断ろうとしたのだが――断れなかったのが女神様の方だ。
なんでもシルイットにある教会に行けばいいとのこと。
それくらいならと3人娘にまたもや店を任せ、同時に店を出たガルフコーストさんにそのまま案内してもらった次第だ。

元来た道を戻るガルフコーストさんを見送り、案内されたとおりに建物の中へ。

っと、景色がぶれたと思ったら殺風景の真っ白な部屋の中にいた。

「なにやってるんですか~~~~」

おぉ~っと感動する間もなく聞こえてくる愛らしい声。

「なにやってるんですか~~~~」

聞こえてきた方向を見ると女の子がバタバタと走ってくる。

「なにやってるんですか~~~~」

ふわふわの金髪に真っ白なワンピース姿。
緑がかった瞳は半分涙目だ。

「な・に・やってるんですか~~~~~~~~~~~!」

勢いのまま飛びかかってきて耳元で叫んでくる。
流石に五月蝿い。
というかあまり密着されると女の子の方からミルクの様な甘い匂いが………あ、逃げた。

「変態っ!近寄らないでください!」

「いや、指さして近寄るなって襲いかかってきた方はどう見てもあんたなんだが。ん?」

「そんなことはどうでもいいです!それより貴方、どうやってこの世界にやってきたんですか!」

「えっ?普通に扉を開けたら繋がってたけど」

「―――――――――――――――はっ?」

ご理解頂けなかったようなので、これまでの流れを簡単に説明する。
ロッカー……物置をどけたら扉があって、開いたらこの国・この世界に繋がっていた事。日本……元の世界で商人の仕事をしていてこの世界にも持ちこんで販売している事。

「うわぁ。もうズブズブじゃないですか。地球の科学力違う文明の事がばれてるじゃないですかぁ」

紙製品や印刷技術、プラスチック製品に電化製品といったこの世界にない技術や製品を持ちこんでしまったのが拙かったらしい。

「この世界はいずれ大きな戦いを経て、魔術を付与した道具を中心とした独自の発展を遂げる予定はずなの。その前に別の世界の発展を見てしまうと……」

「あぁ~。今までの思考を放棄する可能性があるわけね」

「そうなのよ!」

例えばだ、飛行機を発明しようと四苦八苦するライト兄弟の前に宇宙人が空を飛ぶ機会ならこれだとばかりにUFOを見せるとしよう。
そうすると兄弟は既に飛行しているUFOの製造を模索、飛行機を1から創るという思考を放棄させる可能性が発生する。
ライト兄弟のいる世界には、見本のUFOに必要な材料や技術が足りない可能性があるにもかかわらず、だ。

そのため異世界からの文明の移動はかなり厳しく制限されており、他の世界の記憶を持つ者が転移・転生した場合も生まれた世界で1から試行錯誤するのが常らしい。

このまま放っておくと目の前の女神様は大失態として厳重な罰を科せられてしまう。
そうなる前に対処を、出来ればこの世界に持ち込んだ文明を処分してもらう為に呼びつけたらしいがORZ状態の女神様を見る限り既に手遅れだったようだ。

めがみん(名前を知らないのでとりあえず愛称。可愛いお人形さんみたいでどうにも様付けで呼び辛い)には悪いが既に相応の数が出回っていて回収のしようがないし、両世界間での取引も始まっているしなぁ。

というか、神様の類であるめがみんならなんとかうまい具合に調整できないのか?

「誰がめがみんですかっ!私にはセレーネという夜を統括するって意味の名前があるんです!」

成る程、あれか。
心が読める系。
でもやっぱり様はないな。
セレーネちゃんだな。

「…………………………あのねぇ」

がっくりと頭を抱え込むセレーネちゃん。
しかし、その容姿で様付けは厳しいぞ。
セレーネちゃんが駄目ならめがみん。
どっちがいい?

「…………特別に、ちゃん付けで呼ぶのを許してあげます」

―――勝利!
あ、俺の事は真崎でも隼人でもご自由に。

「………。話を戻しますが、ロストータでなら私でも何とかなるのです!問題は隼人さん達の世界の方なんです!こちらの世界の物が短時間で信じられないくらい遠くに運ばれるわ、几帳面に記録は残されてあるわ、届いた先からまたもや信じられない程遠い場所へ運ばれるわ。
そっと処分したり似たような品物に置き換えようとしたりしても写真や動画で実物がそのまま記録されているのでそれも出来ないんです!試しに1つ取り替えてみたら横領だ盗難だと大変な騒ぎになったのです」

あー………わかる。

「しかも隼人さんが話した扉の能力……不本意ながら、行き来するうちにあなたの魂の方へこびりついちゃったみたいで」

言い方。
言い方わっる、どんだけ不本意なんだよ。

「えぇ、えぇ。ものすっごく不本意です。だって隼人さんのそのスキル、私たち神々が与えたものではないので消す事が出来ないのです。隼人さん自身を消そうにも今度は神隠しだ誘拐だと騒がれてしまいますし、万に近い数の妖精たちから抗議されるのも困りますから……。
なのでこうしてあまり違う文明の品々を持ちこまないでほしいとお願いをするために来ていただいたのです」
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