卸商が異世界で密貿易をしています。

ITSUKI

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『真幸商会』異世界出店編

真幸商会 異世界1号店 その3

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 デキシーさん宅(設備も何も整っていない状態ではさすがに自分の店だとは言えない)から商業ギルドに向けて少し歩き、垂直に伸びた大通りを右に曲がる。
 と、比較的落ち着いた時間帯のアメ横並みの人通りと賑わいが通りにあふれていた。

 はぐれないようにだろう(そう思っている)、ミスティが手をぎゅっと握りなおしてくる。
 やわらかな感触と少しふんわりとした肌の温もりが心地よい。

 引っ張られるままについていく。

 通りの両端にずらっと並ぶ店に近付く。
 両端の店は様々でゴザの様なものを敷いただけの場所に手持ちの商品を並べている者、かごや台車、木箱などを用意しており種類ごとに分けておき量り売りする者、馬車……いや、ロバ車か。
 ロバ車の座席に荷物を満載し簡易店舗としている者など様々だ。

「この通りが青空市です。ここで出店する多くの方が食品を販売する許可をもらっており、夕食を準備する時間に近くなると、ほぼ毎日これだけの人が行き交います。後、日曜は市場全体を休みとしておりますので買い忘れがないよう気を付けてください。食糧はここでほとんどのものを購入できますが対価・量・質は各々方鑑定眼と交渉次第です」

 見える範囲では建物や馬車が立ち並び、どこまで続いているのか最奥が見えない。

「食糧市ってことは他にも市はあるの?」

「はい、その他の市場としては手持ちの道具等を販売する骨董市、自作の道具類や武器・防具等を販売する技術市、国やギルドの禁則事項を破らなければ何でも出店できる街の市、の3つがあります。この3つは開催される日が決まっており、こちらと反対側の通りで出店されます。青空市が指定休日を除きほぼ毎日営業に対しその他の市場は週1か2回程です。

 それでも参加希望者が後を絶たないのは骨董市・街の市では処分品のリユース促進をと補助金を含め政策の一環として安く広く簡単に出店できるようにしている点、技術市は大棚の商店がスカウトを紛れ込ませているので、一獲千金の場にもなっている点からです」

 説明を受けながら市を冷やかす。

 賑わいを見せているのは間違いないのだが野菜や木の実穀類と似通った内容の商品列が続く。
 野菜は日本でも見知ったものが多く、穀類は粒状と粉状の小麦が半々といったところか。
 日本では粉状のものが一般的なので(というか粒の小麦なんかほとんど見たことない)なぜかと聞いてみたところ、粉でもある程度日持ちするが殻付きの粒状の方がさらに日持ちするかららしい。

 また、近くに水車がない農家なんかは石臼で挽く労力を省くためにそのまま販売するのだとか。
 粒の小麦を売って粉の小麦を買って帰る人も珍しくないらしい。

 少々人が集まる店の品ぞろえを見るとほとんどが山で採れた果物や鳥獣類。

「山や森には魔物がいますからね、そういったところで採れたものはちょっとした嗜好品みたく普通の食材より高い値で取引されます」

「その魔物の肉がこの市場に出されるってことはないの?」

「魔物はそれなりに手練れの冒険者以上でないと倒せる人は少ないですからねぇ。そういった人たちはランクを上げるための実績にもなりますし、時間も手間もかからないので、ほとんどの人が多少安くとも即金即決で引き取ってもらえるギルドに売却します」

 一部例外としては、武器や防具に加工する際足りない素材を自分たちで入手してくる時くらいらしい。
 もしくはランクアップにこだわらず特定の人や店と専属契約をしている半冒険者。
そこを差し引けば盗伐した魔物はギルドでの買い取られるとみていいだろう。
 果樹も自然にあるものの採取がほとんどで栽培技術はほぼ確立できていないようだ。

「ミスティ、ここはもういいや。いろいろな日用品を取り扱っている大きな店って近くにないかな?」

 最初は圧巻されたが中身のさして変わらない市場に見切りをつける。
 いろいろと説明してくれたミスティには申し訳ないが、卸し市場に来たと思ったら中では地元農家の直販店だったような肩すかしだ。

「そうですねー。………ギルドの少し先まで足を運んでもらうことになりますがナストゥール商会はいかがでしょうか。シルイットで恐らく最も大きな商会です。地の利を生かした商売が強みで、一店舗経営にも関わらずこの街で買えるものなら何でも手に入れられることをウリとしています」

 時間を確認するがあれからまだ40分ほどしか過ぎていない。
 まだ大丈夫だろう。

「わかった。済まないけど、そのナスなんとか商会まで案内をお願いします」

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