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資料管理室の才女たち その6
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「それでは、どうぞ娘をよろしくお願いいたします」
深々と礼をし一向にその頭を上げないカルドに対し、ナオミはどうか頭をあげて欲しいとカルドの手を取った。
「私にも娘がおります、嫁いだ今離れて暮らしておりますが彼女の日々の幸せを願わない日はありません。
ですからあなたの気持ちを私はよくわかるのです。
マリアンヌはまだ幼い、本来なら親元を離れる年齢ではない。ファルマ男爵の気持ちを思えば私たちがあなたに代わり彼女にできることは最大限させていただきます。どうか彼女を信じて帰りを待ってあげてください」
「もったいないお言葉、本当にありがとうございます、どうぞ、、、どうか、、、娘をよろしくお願いいたします」
固くつむったカルドの眦に滲む物をみつけたナオミは努めて明るい声でマローに見送りを命じた。
「マロー、彼らをこれからマリアンヌが住む予定の独身寮まで連れていってあげてくれるか?君と同じC棟と聞いたが間違いないか?」
「はい、間違いございません。私が現在C棟管理役を任されておりますのでその権限を存分に乱用し彼女の部屋を私の隣にいたしました。ファルマ男爵、いえ父君、どうぞご安心を」
マローを男性と思っているカルドはその発言に驚き目を剥いた。
「あ、、あの王都はいろいろと考え方も先んじているとはいえ、その、男女が同じフロアでまして隣り合うという部屋組はいささか親世代の私には受け入れがたく、その、お気遣いは嬉しいのですが、、、」
同僚になるマロー・スピナは頼りになる器量であるということまた華々しい経歴を有しているということを先程ナオミより聞いてはいたが、流石にどれだけ立派な人物とて娘の壁一枚隔てた隣に妙齢の男性が居るというのはどうにもカルドの気持ちが受け付けなかった。
「ははは、ファルマ男爵、誤解されている。マロー・スピナは歴とした貴族令嬢だよ」
「えっ?あ、しかしスピナ様は次期公爵と先程伺いましたが、、、あ!もしかしてあれは・・・」
「ご理解いただけましたかな?あのときの事情がありますから、マリアンヌのこちらでの生活の後見人として私はうってつけの人材だと推しております」
「なるほど、いや、動揺していたとはいえ大変不敬な発言をしてしまいました。どうか田舎者のこの無知と非礼をお許しください、マロー・スピナ小公爵様」
(スピナ様、え?あの隣領の??? それにしてもマロー様は女性だったのね。それなのにあんなに力強いとは驚いてしまうわ。
あら?ああああ、そうだわ!お姉様たちの桃色小説に出てくる女王様はマロー様のような方なんじゃないかしら?まぁ、想像したらピッタリだわ。ムチをふりふり・・・ふわぁ)
父親の涙も妄想暴走中のマリアンヌの思考をとめることはできなかった。
「・・・マリアンヌ、お前その顔は何かよからぬことを考えていないか?とうさまはお前と離れると思うだけで身も心も引き裂かれそうなのに、、、うぅぅ」
「あら、嫌だわとうさま。それは嘘泣きでしょ?先程はお目元うるうるしていたけれど今は完全に乾き切っていますよ。嘘はいけません」
むーっと、父娘は顔を見合わせて少しすると朗らかに笑い始めた。
自然と父親の胸に娘は頭をあずけ人目を憚らず抱きしめあった。
貴族的ではないが心から思い合う親子の姿にナオミとマローもあたたかな笑みをこぼした。
「さて、申し訳ございません。私はこの後抜けられない会議がありここで失礼を。
マリアンヌ来週からしっかり働いてもらうからね、あと数日父君とゆっくり過ごし気を養ってきなさい。それでは」
そう告げると軽くカルドに礼をとり、早足でナオミ・セドーは去っていった。
「さぁ、私たちはマリアンヌの新しい城を見にいくとしよう。父君、お嬢様のエスコートを私がさせていただいてもよろしいでしょうか?」
そういって胸に手を当て足を引き紳士の礼を取ると、どうしても麗しい男性にしか見えない。
もうマロー・スピナが女性だということは判ったのだが、頭がなんとなく理解できずにどきどきしてしまう。
「ええぜひともスピナ小公爵様、我が娘をお願いいたします」
父もマローの演じる軽い茶番に付き合い礼をとりデビュタントごっこをしてみる。
本当のデビュタントを父には見せることができないこともマローはわかってやっているのかもしれない。
彼女はこの数時間でおふざけの言動をたくさん取る人だとわかったが、それと同時にこういう心遣いをしてくれる優しい人なのだとも思った。
マローの手をとりマリアンヌは父とともに新しいお城 C棟3階女性エリア 16号室に向かうこととした。
深々と礼をし一向にその頭を上げないカルドに対し、ナオミはどうか頭をあげて欲しいとカルドの手を取った。
「私にも娘がおります、嫁いだ今離れて暮らしておりますが彼女の日々の幸せを願わない日はありません。
ですからあなたの気持ちを私はよくわかるのです。
マリアンヌはまだ幼い、本来なら親元を離れる年齢ではない。ファルマ男爵の気持ちを思えば私たちがあなたに代わり彼女にできることは最大限させていただきます。どうか彼女を信じて帰りを待ってあげてください」
「もったいないお言葉、本当にありがとうございます、どうぞ、、、どうか、、、娘をよろしくお願いいたします」
固くつむったカルドの眦に滲む物をみつけたナオミは努めて明るい声でマローに見送りを命じた。
「マロー、彼らをこれからマリアンヌが住む予定の独身寮まで連れていってあげてくれるか?君と同じC棟と聞いたが間違いないか?」
「はい、間違いございません。私が現在C棟管理役を任されておりますのでその権限を存分に乱用し彼女の部屋を私の隣にいたしました。ファルマ男爵、いえ父君、どうぞご安心を」
マローを男性と思っているカルドはその発言に驚き目を剥いた。
「あ、、あの王都はいろいろと考え方も先んじているとはいえ、その、男女が同じフロアでまして隣り合うという部屋組はいささか親世代の私には受け入れがたく、その、お気遣いは嬉しいのですが、、、」
同僚になるマロー・スピナは頼りになる器量であるということまた華々しい経歴を有しているということを先程ナオミより聞いてはいたが、流石にどれだけ立派な人物とて娘の壁一枚隔てた隣に妙齢の男性が居るというのはどうにもカルドの気持ちが受け付けなかった。
「ははは、ファルマ男爵、誤解されている。マロー・スピナは歴とした貴族令嬢だよ」
「えっ?あ、しかしスピナ様は次期公爵と先程伺いましたが、、、あ!もしかしてあれは・・・」
「ご理解いただけましたかな?あのときの事情がありますから、マリアンヌのこちらでの生活の後見人として私はうってつけの人材だと推しております」
「なるほど、いや、動揺していたとはいえ大変不敬な発言をしてしまいました。どうか田舎者のこの無知と非礼をお許しください、マロー・スピナ小公爵様」
(スピナ様、え?あの隣領の??? それにしてもマロー様は女性だったのね。それなのにあんなに力強いとは驚いてしまうわ。
あら?ああああ、そうだわ!お姉様たちの桃色小説に出てくる女王様はマロー様のような方なんじゃないかしら?まぁ、想像したらピッタリだわ。ムチをふりふり・・・ふわぁ)
父親の涙も妄想暴走中のマリアンヌの思考をとめることはできなかった。
「・・・マリアンヌ、お前その顔は何かよからぬことを考えていないか?とうさまはお前と離れると思うだけで身も心も引き裂かれそうなのに、、、うぅぅ」
「あら、嫌だわとうさま。それは嘘泣きでしょ?先程はお目元うるうるしていたけれど今は完全に乾き切っていますよ。嘘はいけません」
むーっと、父娘は顔を見合わせて少しすると朗らかに笑い始めた。
自然と父親の胸に娘は頭をあずけ人目を憚らず抱きしめあった。
貴族的ではないが心から思い合う親子の姿にナオミとマローもあたたかな笑みをこぼした。
「さて、申し訳ございません。私はこの後抜けられない会議がありここで失礼を。
マリアンヌ来週からしっかり働いてもらうからね、あと数日父君とゆっくり過ごし気を養ってきなさい。それでは」
そう告げると軽くカルドに礼をとり、早足でナオミ・セドーは去っていった。
「さぁ、私たちはマリアンヌの新しい城を見にいくとしよう。父君、お嬢様のエスコートを私がさせていただいてもよろしいでしょうか?」
そういって胸に手を当て足を引き紳士の礼を取ると、どうしても麗しい男性にしか見えない。
もうマロー・スピナが女性だということは判ったのだが、頭がなんとなく理解できずにどきどきしてしまう。
「ええぜひともスピナ小公爵様、我が娘をお願いいたします」
父もマローの演じる軽い茶番に付き合い礼をとりデビュタントごっこをしてみる。
本当のデビュタントを父には見せることができないこともマローはわかってやっているのかもしれない。
彼女はこの数時間でおふざけの言動をたくさん取る人だとわかったが、それと同時にこういう心遣いをしてくれる優しい人なのだとも思った。
マローの手をとりマリアンヌは父とともに新しいお城 C棟3階女性エリア 16号室に向かうこととした。
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