完結【R18】おいもではじまるシークレットベイビー

加賀美 ミロ

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田舎女子のシティライフ その5

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マリアンヌの日常は働き出した頃からほとんど変わり映えのないルーティンで埋め尽くされている。

領にいた頃と同じように日の出と共に起き、身支度を済ませると食堂にて一番乗りで朝ごはんをいただく。

その後師匠ババビアゴの下へ行き”マリアンヌの実験場”の手入れをし観察日記をつけ師匠の手伝いをする。

ネイトと共作した敷地内地図を毎回開き指差し確認した後、遅刻しないように余裕をもって出勤する。

資料管理室のメンバーは多忙を極めるためその日室内にいるかいないかを確認して室内の入り口にある黒板に在室予定時間を書くのは最も下っ端のマリアンヌの仕事である。

貴重な資料や物品がひしめく室内は、お掃除専門の職員さんに入ってもらえないためここの整理整頓や簡単な清掃もマリアンヌの仕事。体を動かすのも大好きなマリアンヌはこの時間も嫌いではなかった。

その後補助員として事務仕事を中心にお昼まで仕事をすると、正午の鐘とともに部屋を飛び出し食堂へ走る。

日替わり定食は週の初めに1週間分掲示されるが、マリアンヌは毎日の楽しみにしたいのでその掲示を見ないようにしている。

日替わりがお芋のお料理であれば「やったー当たりの日だ!!」とそれらを食し、日替わり定食にお芋がなければアラカルトで選択できるお芋料理を数品頼む。

そして、芋料理を美味しく食しながらそれをノートに記録していく。

昼休憩の時間は厳密に決められていないため、みな自由に過ごしている。

マリアンヌは昼食をとった後、主に庭の散策をして”マリアンヌの実験場”で栽培している作物の様子を観察し簡単なお世話をしてから資料管理室へ戻り午後の仕事に集中する。

夕方になり事務本館から人々が帰宅の途につくのに合わせ、いったん寮へもどり食堂の厨房片隅を借りて自分の夕飯用のお弁当をつくるとそれをもってまた資料管理室にもどる。

誰かがいるのがわかっている日は少し多めに作ったお弁当をシェアしてたべたりもする。

寮での湯浴みができるギリギリの時間までには帰宅し、眠る前少しの時間で週末に図書館で借りて来てためている本を読んでそのまま寝てしまう。

平日はこのルーティンをほぼ毎日繰り返す。
週末はちょっとだけシティライフを満喫する、乙女なマリアンヌ。



その行き先は、、、図書館、一択である。

”乙女”の部分は図書館で借りる恋愛小説の中だけで養分摂取するしかないのが玉に瑕たまにきずな結婚適齢期真っ只中のマリアンヌ18歳。


(はぁ、とうとう成人指定恋愛小説がよめるんだわ・・・)

先日18歳になったマリアンヌはこの国の成人年齢を迎えた。

実家からはお祝いの贈り物をたくさんもらった。

その中には領のお姉様方からの贈りものがたくさん入っていた。

王都より田舎の男爵領であるが、王都にいるマリアンヌよりも流行の品に詳しいお姉さまたちはどうせマリアンヌのことだから何ももっていないだろうと成人女性に相応しい品々各種を送ってくれた。

デイドレス、下着、ナイトウェア、アクセサリー、化粧品、香油、ぬいぐるみ、可愛らしい装飾の様々な日用品などなど その中にはかつて王都に上がる際にお姉様方が教えてくれた”女の世界のルール”を反映した小説類も入っていたが、な、なんと成人まで見てはいけないと言われていた”成人指定恋愛小説”厳選集が同梱されていた。

3度の芋より本が好きなマリアンヌにとって、「読んじゃいけません、大人になるまでは」と言われ続けた本を読めることができる成人年齢は待ちに待ったものだった。

しかし、あまりにも長く待ちすぎたため緊張と興奮で読むことができないまま誕生日から数週間経っていた。

その間、図書館でも成人しか入れない限定区域に入ることはできたがそこから先”借りる”という行為ができなかった。ちなみに、恥ずかしいからではない。

だがとうとう覚悟を決め数冊の成人指定恋愛小説を借りることにした。

それらの書籍は本棚の上部に陳列されたため、タイトルは判別できるのだが手に取ることができない。

すぐに借りることができなかった理由の一つはこれもある。単純に背が低く手が届かなかったのだ。

今日は借りる覚悟をきめてやってきたので小さな脚立を図書館の職員から借りていた。

(他に借りる交配専門書もあるし、、、この脚立も返さなくちゃいけないから小説は3冊が限度かしら)

んー、どれにしよう???と書棚を眺めていると強い視線を感じた。

振り返って周りを見渡すが誰もいない。最近ずっとこうだ。

この成人限定区域に入ってくると強い視線を感じるのだが誰もいない。

最初は勘違いかと思っていたが、田舎育ちのマリアンヌ。獣の気配には敏感だった。

(なにか強い気配を感じるのよね、人もほとんどいない区域だし、ここは王都一古い図書館だし幽霊とか妖精とか人ならざるものがいるのかしら)

人ならざるもの、らしき強い気配のため落ち着かず早々にこの場を立ち去っていたのが2つ目のなかなか借り出しができなかった理由であった。

(でも今日は覚悟の上よ!!それに妖精さん、さっさと出ていくから許してね)

マリアンヌの脳内では本好きの妖精さんということでこの気配の正体を判じていた。



さてさてと、成人指定限定小説棚の前に脚立を置き見上げる。あれと、これとと指差し確認をして棚の上に上がるマリアンヌ。。。

届かない、背伸びをしても届かない。。。

(見栄をはって小さい脚立でいいです、なんて言わなきゃよかった)

脚立を借りる際、図書館職員のお姉さんは大きい脚立でなくて良いのですかと確認してくれたのに大丈夫ですと小さいのを借りてしまったのだ。

マリアンヌは成人を迎えても王都にきた頃とあまり身長が変化していないのを少しだけ気にしていた。

(でも、大きい脚立借りてしまうと入り口まで持ち出せる本の数が減ってしまうのだもの)

そんなことも考えながら、あぁと大きいため息をつき今日も諦めるしかないかなと思った時だった。

背後から伸びてきた腕が借りたいと思った小説をすっすっと取り出していった。

(あ、私が借りたかった小説たち~)

泣きたくなりそうな心持ちで振り返るとそこにいたのは先日雨の中共闘したヒョロ巨人さんだった。

「あ、あの時の?」

そう、あの雨の日、マリアンヌへ妄執を開始した変態伯爵リオネル・デ・オリウスその人だった。

ゆっくりと頷く長身の男性は脚立に乗ったマリアンヌよりも背が高かった。

(いいなぁ、背が高い人は脚立いらずで)

一瞬、むぅっとしたマリアンヌの表情に気付いたのかリオネルが手に取った小説をマリアンヌに押し付けてくる。

「すみません、そんな、先に手にとられたのは、えっと、たしか ”デリュース”様でした、か?」

抜群の記憶力を有するお利口さんのマリアンヌだが王都に出てきてから自分が人の名前を覚えるのが不得手であることを知った。ゆえに、今目の前にいる男性の名前も不確かだった。

少しの間かたまっていたリオネルだが、首を大きく縦に振る。

「よかった、デリュース様!!覚えていらっしゃいますか、C棟管理役のファルマです」

図書館にいることを会話の途中で思い出し、こそこそと小さい音にしていく。

目の前のリオネルはいっさい言葉を話さない。

前回もそうだったが、今回は図書館だからなのか、それともやはり口が聞けないのか。

「そちらの小説なんですが、偶然と言いますか、私も借りたいものだったのですがご覧の通り手が届かず取ることができなかったのです。一瞬の差で、デリュース様に借り負けてしまいましたね。ふふふ。仕方ないですね、デリュース様が読み終わられた後、借りることにします。えっ?私が先に?いえいえ、大丈夫です。私寮の部屋に成人指定恋愛小説たくさんあるんです。ん?そうなんです、ちょっとばかり小さいのですが私もう成人なんですよ?いえいえ、大丈夫です、本当に。こういうのは縁でもあるのですから、お先にどうぞ。えーーー、そんなにおっしゃるなら一緒に読みますか? やだ、大丈夫ですか、貧血ですか???だ、だれか~!!」

ここまでの会話、目の前に2人立っているのを確認できなければマリアンヌが独りごちているかとおもわれるだろう。

もしくは本当に図書館の妖精と会話でもしてるのかな。と。

この約1分間、なぜかマリアンヌは長い前髪で瞳も見えず表情筋もほぼ死滅している状態にもかかわらず彼の意図を汲み会話を成立させていた。

摩訶不思議なことであるが、これ以降彼らはこのような状態でしばらく会話を成立させていくのだった。
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