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70話、勇者イサム
しおりを挟む「勇者、だね?」
「勇者だなァおい」
「勇者ですね」
神殿に落ちてた人間を街に連れ帰った。
さっそくセイント・エルダー・リッチが役に立ったな。名をやろう。君は今日からセチだ。
今代勇者は細くだが息はしているし、心拍もある。気を失っているだけのようだ。
目覚めてどうなるかわからないので、とりあえずゼストとベルゼ、私、ハヤトだけが交代で容態を見ることにした。万が一暴れられても、被害が最小になるようにね。
と、交代でお願いしている間に、今日の分のテイムを済ませに行こうかな。早めに済ませたいので、アビスの迷宮に行くことにする。
とりあえず、七層へ。私とトロル君とメタスラちゃんで行く。
アビスの迷宮、七層。
鉱石ゴーレムが出てくる坑道エリアだ。
「さっさと見つけて帰ろうねぇ」
お目当ての鉱石ゴーレムを探す。
数回のエンカウントののち、発見した。
「よし、テイム!ふふ、マリア、喜んでくれるかなぁ」
さて、帰宅しよう。
はやくマリアに見せたい。
マリアの喜ぶ顔を想像しながら、わくわく早足で帰宅した。
「まぶしいのです」
「……ぷ、プレゼントだよ、マリア」
「……ありがと、なのです」
反応が悪い……ダメだったか?もしかして、別にきらきらならなんでもいいわけじゃなかった?マジか、ダメか……嫌がってはないから……いいか……
「ゴールドゴーレム……ごめんね……」
「う、嬉しいのですよ!わぁい、きらきらなのですー!」
気を使わせてしまった。もうダメだ……。
さて、ゼストから呼び出しがあった。
勇者が目を覚ましたようだ。今のところ大人しいので、とりあえず飯をもって様子を見に来い、との事だ。
卵粥を調理班から受け取って、ゼストの城に向かう。
部屋には、ゼスト、ベルゼ、ハヤトが揃っていた。ついでにセチも。
「あっ……あの時の」
勇者が、私を見てそう呟く。あの時、とは……ああ、召喚された時か。私は顔をちゃんと覚えてなかったが、あちらは覚えていてくれたようだ。
「あー、えっと、タキナです。テイマーしてます……魔物とか魔族とか、まあ、その、色々ありますけど、一応人間サイドのつもりでやってます」
勇者に挨拶。今更だが、この街はどこからどう見ても悪者サイドだろう。大丈夫か不安になってきた。
「あ、えと、勇者やらせてもらってます、イサムです。この度は倒れていたところを助けていただいたとの事で、ありがとうございます。助かりました」
……あれ、めちゃくちゃ普通に日本人だな?
勇者っぽさというか、選ばれし人間の傲慢さが無さすぎる。え、もしかして、いい子?
「ところで……俺以外に、誰も居ませんでしたか?三人、仲間がいるのですが……」
おっと。これはまた……厄介事の匂いがするぞ。
話を聞くところによると、あの神殿にあったゲートの先には、世界樹の杖が封印された迷宮があるそうだ。
全部で15層、サクサクと攻略していき、ようやく聖女が世界樹の杖を手にした、瞬間に転移罠が作動したのを認識したところで意識を失ったようだ。
「全員の足元に魔法陣がありました。俺の能力での脱出も間に合わず……俺だけしか居なかったって事は、他の三人はまた別のところに飛ばされたんでしょうね。探さないと……」
探すにも、手がかりもない状態だよな。
手がかり……とりあえず、その世界樹の杖のあった迷宮の最奥を再確認するしかないか。
て、私は何故勇者を手伝おうとしてるんだろう。いや、手伝いたくないわけじゃないけどね。
この子が私たちに害を為さないとは限らないわけだし。もう少し慎重に考えないと。
「タキナさん、どうか、手を貸してくれませんか?あなたの協力が必要です。どうか……」
「……え、私?なんで?」
「え、だって……この街の長だって書いてますし……あ、ごめんなさい、鑑定スキルで見えてるんです。ゼストさんが大魔王なのも、ハヤトさんが元勇者なのも、ベルゼさんが魔人なのも……」
鑑定。これまたチート能力だな。どこまでわかるんだろう?
「で、目の前に魔王がいるわけだが、勇者サマはどうするよ?」
ゼストが挑発気味に問う。少し意地悪だな、今日のゼスト。
「いや、別にどうもしないですよ?俺に攻撃したわけでもない、人間に危害を加えようとしてるわけでもない……そういうのを狩るのは違うんですよ。俺は、人間の敵を狩る勇者ですから」
勇者はゼストの目を真っ直ぐ見てそう言って、それから私を見た。
「それに、鑑定で……人類への害意も数値化して見れるんですよ。便利でしょ?人に化けた魔物も、これのお陰で狩りやすかった」
……ほんとに、人類守護者のためにあるようなチートじゃねぇか。
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