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1話 追放、脱走、これからの事。
しおりを挟む「────レティシア。この宣言をもって、貴様を王族から除名し、南方の公爵家所有地への幽閉を命ずる」
王の冷酷な声が謁見の間に響く。
立ち上がり宣言する王。傍らには、女王たる二人の女性。
我が母である側妃は、力強い目つきでこちらを見つめている。
彼女の体は、私の能力のおかげか、常に健康で艶めいており、不自然なほどの輝きを隠せていない。
唇を噛み、叫ぶのを我慢しているようにも見える。私に優しくいてくれた母の心境は、穏やかではないだろう。
対照的に、正室である王妃様は、青白い肌で、座っているのがやっとの様相だ。
「教会に金を積んで寄越させた光魔法でも、聖魔法でも癒えぬ王妃の病……! それは貴様のもつ、不浄な『人間属性』とやらが生命力を吸い取っているからだと皆が言うではないか!」
皆、ね。
正室の唯一の子である王子派の皆様と、人間の歴史になかった属性を認めたくない教会の皆様は、私を『そういうもの』としたようだ。
馬鹿馬鹿しい。
私が幼い頃、王妃様の「欠陥」を正そうとした時、穢れるから触れるなと阻んだのはそちら側だ。
見た限り、私が触れさえすれば、少なくとも今よりは良くなるのに……。
これだから、無能で頭の硬い馬鹿どもは……
ふう。
自身の耳の奥、脳内の「扁桃体」をいじり、不快感、嫌悪感、悲しみ、怒りを「感じなくした」。
心に凪のような静寂が訪れる。
「…………承知いたしました、陛下」
一礼。
私は、衛兵に触れないように引き立てられ、謁見の間を後にした。
数日後。
王族所有の、座り心地の悪くない護送馬車の中に私はいた。
王都から数日かけてここまで来たが、公爵領まではまだあと数日はかかるそうだ。
これまでの護衛たちの対応は、思ったよりも悪くはなかった。王家を追放されたものとしてではなく、弱い人間、女性として丁重に扱われている感じ。
我が国の騎士はとても素晴らしいものらしい。
それはそれとして、
「さて、そろそろですね」
馬車に揺られ、馬車の中には監視の女性騎士。
周りには護衛の騎士が数人、それと御者。
もうすぐ、山際の谷を超えるために狭い道を通る。
馬のスピードが落ちてきたのを感じる。
「眠気付与…… ああ、あと肉体強制健全化」
「なあ、なんか、眠たく……」
「おい、護送中だ……ぞ……?」
「しっかりしろ、道が……狭いから……」
騎士たちに眠気を付与。崖を踏み外させ、転落させる。
もちろん私は既に馬車から脱出済。
……馬を馬車から外し、馬車本体も崖から落としておこう。魔物の仕業って事にして。
馬たち、さっさと逃げて帰るんだよ。
本当はみんなロストさせても良かったんだけど、まあ、私は慈悲深いし、温かいご飯を優先して食べさせてくれたし、死なないようにはしてあげた。
感謝はしなくていいから今後も騎士として励んでほしいね。
「さて、ここからは自由時間です」
自らの能力で、王家特有の赤い髪を白に、金の瞳を赤に変え、「王女レティシア」を「殺した」。
「冒険者、やってみたかったんですよね。楽しみです」
これからは、"冒険者"「レティ」として生きる。
目的は大きくふたつ。
ひとつめ。
冒険者として各地を巡り、私の能力の秘密を解き明かす。
「人間属性」の秘密、それと私の「転生」の理由を知りたい。
……実は転生者なんだよね、私。
ふたつめ。
冒険者として名を売り、王家から「正妃様の治療」の依頼を引き出す。
王妃様と王子本人には優しくしてもらったから。王家が治せないなら、私が治すしかないでしょ。
「そのためには、使える駒がいくつか必要ですね」
目的を果たすための、有用で裏切らない駒を見つけ、パーティメンバーとする。
……まあひとまず、冒険者として活動しながら、計画を練っていこう。
近場の街は…… 山を越えてすぐ、鉱山と大きな魔の森が有名な「ドベルグ」という街があるはずだ。
まずはそこを歩いて目指そう。
「……何時間歩いても疲労も苦痛もない。やっぱり私の力は便利ですね」
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