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16話 森林浴、想定内の襲撃、『秩序』の強制
しおりを挟む何度かの弱い魔物の襲撃を除けつつ、ガストンの目利きによって食べれる野草や果物などを採集しながら、魔の森に沈んだ旧道を歩く。
魔の森とはいえ、過去に道があった場所だ。冒険者であれば大きな危険はないだろうが、たしかに一般人には厳しい道だろう。
「手押し車は問題ないですか? ニ、サン」
「はい、レティ様。多少揺れますが、損傷はありません」
「よろしい。……ふぅ。森の中は空気が美味しいですね」
「レティ、空気って味があるの?」
「植物は光合成をするので、森の中は酸素濃度が高いんですよ。濃い酸素を、脳が『美味しいもの』、『気持ちいいもの』として受信している……のかもしれませんね」
「さんそ……?」
「ガストン、実際に深呼吸してみてください。どう感じますか?」
「……ふう。……たしかに、『美味しい』ですね。頭がすっきりして、気持ちいいです」
「さんそが、美味しい……?」
私であれば、酸素が無くても問題ないような対処もできるが。
それはそれとして、森の空気は良いものだ。
魔の森の旧道は、昔は普通の街道だった。
今はなぜ魔の森に飲まれているのか。
単純に、森の生育スピードが早いから。これは、魔の森に接する街や領にある木こりギルド、という組織が、定期的に大伐採をすることで現在は抑えられている。
魔の森は、人間が木と魔物というリソースを削り続けなければ、こちらを飲み込んでくるバケモノなのだ。
森自体が魔物だという学者もいたり、森全体が特殊なダンジョンだという学者もいる。
ダンジョンというものは、遺跡や洞窟などの魔力の溜まりやすい場所に発生する異常で、魔物が繁殖ではなく再生産されたり。人間の欲しがるものを内部に置いて餌として利用したり。
まあ、私の知識の中にある、ファンタジーにおけるダンジョン、に殆ど相違ない。
さて、そんなこんなで平和に歩いてきたが。
旧道に侵入した瞬間から、私の人間属性による心拍センサーが森の方にいる人間を察知している。
悪意は感じるが。何かしてきてくれたら、退屈も凌げるのに。
と思った矢先。
その悪意から、一本の矢が、果物を拾おうとしたシエラに飛んできた。
「シエラ様!」
イチがシエラの前にとびだし、矢をかわりに受ける。
どちらにヒットしても、無傷なのは変わらないが……
「い、イチ! 服が……っ!」
「っ! レティ様、ご用意いただいた服を損傷させてしまいました! 申し訳ございません!!」
イチの服、肩のところに穴が空いてしまった。
…………そんな、そこまで悲愴的にならなくていいのに。
「許しましょう、ふたりとも。シエラ、傷つかないとはいえ、もう少しだけ周りを注意しましょうね」
「ごめんなさい、レティ……」
「いいのよ。この程度、間違いのうちに入りません」
そんなことより。
茂みから出てきた、賊が三人。
……私が見た以上の、隠された強さはないようだ。
こんなんでよく喧嘩売ってこれたなあ。
「おまえら、ここを誰のナワバリだと」
「うるさい。『筋肉緊張強制』……話は口からじゃなくて脳から聞きますから」
賊の筋肉を強制的に固め、動くことも、呼吸することもできなくした。一分くらいはこのままでも意識はあるだろう。
近づき、声を『奪って』、まずは呼吸のための筋肉のみ解放してやる。
脳からデータを吸い出し、やはりあったアジトの情報を得る。
私への忠誠を『与えて』、物言わぬ兵器として改造する。当然、肉体強制健全化、筋力増大、リミッター排除、五感強化、思考力強化、脳冷却システム、感情除去、その他便利機能を搭載。
……感情さえ無ければ、これだけ詰め込んでもなにひとつ破綻しない。人間の感情のデータ量と計算領域使用量の異常さを改めて感じるな。
さて、これらの試運転をしてみよう。
「さあ、超越兵団。アジトへと案内しなさい」
「レティさん、ネーミングをもう少し……」
「レティ、『レナトゥス・オーダー』とかどうかな?」
……!! もうこれからネーミングはシエラに任せよう。それが最も効率的だ。
……自分のセンスを諦めたわけでは決して無い。断じて無い。
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