おまけのチートが知りたくて…

ゆーく

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スキルの手掛かり?

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太陽が傾きかけ、森の輪郭が茜色に染まり始めた頃、貴一はようやく森の縁に辿り着いた。木々は地球のものより遥かに大きく、幹は黒々としている。枝葉は重なり合い、内部は夕暮れ前にも関わらず薄暗かった。

「水源はあるだろうか……」

喉の渇きが徐々に痛みになってくる。ペットボトルのお茶はとうの昔に飲み干してしまった。慎重に一歩、また一歩と森の中へ踏み込む。

湿った腐葉土の匂い。鳥の鳴き声は、記憶にあるものとは似ても似つかない甲高い音を立てていた。どこかで水が流れる音がしないかと耳を澄ますが、聞こえるのは風に揺れる葉擦れのざわめきばかり。

(まずいな。日が暮れる前に何とかしないと……)

焦燥感が募り始めた時だった。
背筋がぞくりと粟立った。
冷たい刃物を首筋に当てられたかのような、鋭い悪意。殺気。
今まで感じたことのない感覚に、全身が硬直する。

「なっ……」

咄嗟に振り返る。すると、十メートルほど離れた茂みの陰から、三つの小さな影がこちらを窺っていた。

緑がかった醜悪な肌。汚れた腰布。手には石斧や粗末な棍棒。爛々と光る黄色い瞳が、獲物を見つけた獣のようにこちらを捉えている。

ゴブリン。

ファンタジー作品で嫌というほど見聞きしてきた存在が、今、目の前に現実として立ちはだかっていた。

(マジかよ……)

頭が真っ白になりかける。しかし次の瞬間、驚くべきことに身体が勝手に動き出した。
恐怖で硬直するどころか、脳裏にはまるで以前から知っていたかのように、逃走ルートと簡単な戦闘方法が閃く。
近くにあった太く丈夫そうな枯れ木の枝を掴むと、無意識に身構えた。

「グルルゥ……!」

一番体格のいいゴブリンが唸り声を上げ、先陣を切って飛び掛かってきた。石斧が月並みな弧を描いて振り下ろされる。

死を予感させる刃。だが、不思議と頭は冴えわたっていた。
相手の動きが、やけに遅く見える。狙いも単調に感じる。
本能的に身体を半身に捩じると、石斧は顔の横を虚しく通過した。

「……ッ!!」

完全に当てるつもりだった攻撃が外れたことに、ゴブリンが驚愕の表情を浮かべた。
その隙を逃さず、貴一は握りしめていた太い枝を思い切り振るった。
鈍い衝撃と共に、ゴブリンの横っ腹を打ち据える。

「ギャイン!!」

悲鳴を上げて吹き飛ばされるゴブリン。残りの二匹が怒り狂って襲いかかる。
混乱する頭の中で、また妙な感覚が走った。
相手の呼吸。重心の位置。振り上げようとする腕の僅かな震え。
それらが全て、手に取るように分かる。
まるで長年共に戦ってきた仲間のように。

次々と繰り出される棍棒と石斧の連撃を紙一重で躱しながら、カウンターで反撃する。
荒事なんて生まれてこの方経験したことのない自分なのに、身体は正確無比に敵の弱点を叩いている。
殴打の度に感じる骨が砕ける感触は不快極まりなかったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

最後の一匹が地面に這いつくばり、虫の息になったところで、ようやく貴一の身体は動きを止めた。
肩で荒い息をつきながら、足元に散らばる醜い怪物たちを見下ろす。

(なんだこれは……俺は何をやってるんだ……?)

手に持つ血塗れの枝。初めて生物を殺したという罪悪感よりも、むしろ身体に沸き起こるのは達成感にも似た奇妙な高揚感だった。
そして何より、この超人的な運動能力と戦闘技術は一体どこから来たのか。

あの声が言っていた

「それなりのチートスキル」

それがまさか、こんな形で発揮されたというのか。

「……赴くままに、生きろ……か」

空を見上げると、既に太陽は西の山脈にほとんど沈みかけていた。
暗闇が迫っている。
今日の寝床も確保できていない。
水も未だに見つかっていない。

それでも、貴一の瞳には先程までの絶望的な色はなかった。
未知なる力が、確かに自分の内側に眠っている。
それを知っただけでも、大きな収穫だった。

「よし……進むか」

新たな決意を胸に、貴一は再び森の奥へと歩を進めた。
この世界でどう生き抜くか。
その答えを探すための、長い旅が今、本当の意味で始まったのかもしれない。
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