最有力王妃候補に転生しましたが、何がなんでも回避しようと思います

翠華

文字の大きさ
11 / 18

Episode10

しおりを挟む
裏路地の奥の方にある錆びた扉の前まで来て、ノックをせずに開ける。

「ルナお嬢様、危険です。ここは私に任せてここでお待ち下さい」

「いいえ、私も行きます。行かなければいけません」

理由は分からないが、そう感じた。

「では、私が先導致します」

「分かりました。お願いします」

ギィィと鈍い音をたてながら扉を開けると、錆びた匂いの中に微かに血の匂いがする。

「うっ…」

思わず口を手で覆う。

なるべく足音をたてないように中に入って行く。

少し歩くと、真っ暗でよく見えないがリビングのような部屋にたどり着いた。

「なんてこと…」

そこには生きているのか死んでいるのかも分からない子供達が横たわっていた。

「大丈夫ですか?私の声が聞こえますか?」

大きな声を出さないように耳元で尋ねるが、何も応答はなかった。

「まずいですね。レイ様、申し訳ありませんが、治癒魔法が使える方を連れてきて下さいませんか?ユーリ様、ここの子供達の事を頼みます。私はこの先に進みます」

「いけません。おひとりでは危険です。私が行きますので、ルナお嬢様はここでお待ち下さい」

「いいえ、私が行きます。ユーリ様はここの子供達をお願いします。もし誰かが来てしまったら私には守ってあげられません。自分の命を守るので精一杯なんです」

「ですが…」

「お願いしますね、ユーリ様」

私はユーリ様の手を優しく握る。

納得していない様な表情のユーリ様を置いて、私は先に進んだ。

リビングの奥にある部屋も真っ暗で何も見えない。

『だ…れか……』

先程から聞こえている声はだんだんと小さくなっている。

ここ…?

私は床に耳を傾け、声を頼りに歩き回る。

ギィィィ。

部屋の窓際まで来ると、床板が音を立てながら開いた。

中を覗くと、階段が下まで続いている。

失礼しまーす。

心の中でそう呟いて階段を降りていく。

嫌な空気だなぁ。何か出てきそうなんだけど。

階段を降りていくにつれ、男の怒鳴り声が聞こえてきた。

下まで降りると、目の前に扉が一つ。

なるべく音を立てないように開けると、倒れている小さな女の子の下に魔法陣のようなものが描かれており、女の子の体からキラキラした綺麗な光のようなものが出てきそうになっている。

女の子はそれを細い腕で必死に掴んでいた。

一人で来たはいいけどどうしよう。

焦る気持ちを抑えて考えていると、ふと母の言葉が浮かんでくる。

『困った時は歌を歌いなさい。きっと良い事があるわ』

歌…とても久しぶりな感じがする。結局お茶会では歌えなかったからなぁ。

「ええい、なるようになるでしょ」

母の曲の中でも一番好きな歌を思い出して息を吸う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...