最有力王妃候補に転生しましたが、何がなんでも回避しようと思います

翠華

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Episode14

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歌い終わる前から泣いたせいで周りがよく見えていなかった。

「すみません。泣いてしまって最後上手く歌えませんでした」

ぐすんぐすん。

言葉はなかったが、女の子のすすり泣く音は聞こえた。

「あの、貴方のお母様の歌は分かりませんが、私の母が落ち込んでいる時によく歌ってくれた歌なんです。大好きな歌なんです。ですから、その…」

上手く言えない。"最後に"なんて言いたくない。少しでも気持ちが安らかになってくれれば、心を込めて歌いました、そんな言葉じゃない。私が本当にしてあげたかった事は、そんな事じゃ……

「あ、りがと…素敵なうた、だった…」

「…え」

先程よりもはっきりと聞こえる。目をこすってよく見ると、怪我の跡がなくなっている。体はさっきと変わらずやせ細ったままだったが、顔色は少し良く見える。

「も…だい、じょう、ぶ…まだ、生きて、る…」

「え??」

「あなたの、おかげ…ありがと…」

どういう事?死なないの?まだ生きててくれるの?私は助けてあげられたの?

頭がぐるぐると回ってわけが分からない。

「え?え?」

コンコン。

「大丈夫ですか?」

ノックの後にユーリ様の心配そうな声が聞こえる。

「え?あ…え?」

「ルナお嬢様?」

「は、はいっ」

「本当に大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です!すみませんが、お医者様を呼んで下さいませんか?」

「何かあったのですか?」

「説明は後でします!今はお医者様をお願いします!」

「分かりました」

しばらくすると、若い白衣の男性がノックをして入ってくる。

「失礼します」

白衣の男性は椅子に座ると、女の子の上に手をかざす。

手からは光が溢れ、女の子の体を包む。

「これは…」

それからどれくらい経っただろうか。

白衣の男性は手をおろして私を見つめる。

「ど、どうかされましたか?」

「申し訳ありません。少し驚いておりました」

「どういう事ですか?」

「初めて彼女を見た時、体中の骨は折れ、心臓となる核は光を失いかけておりました。しかし、核は正常に光を取り戻し、体中の骨も全て治っています。どんなに優秀な魔術師や医者でもあれ程の傷を修復する事は不可能です。一体何が…」

白衣の男性は不思議そうに私と女の子を交互に見る。

「えっと…」

私は何もしてない。そんなに見られても困る。

「とりあえず、今はゆっくり休ませてあげて下さい」

そう言うと白衣の男性は部屋を出て行った。 

すやすやと眠る女の子を見ながらほっと息をつく。

何だか微笑ましい。

母親が子供を見る時ってこんな気持ちなのかな。

親になった事はないからよく分からないが、この女の子がこれから先も生きられると分かっただけで十分だ。

私は女の子の頭を撫でて部屋を出た。
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