猫かぶりのライオン

翠華

文字の大きさ
2 / 11

入試

しおりを挟む
「ここが試験場か」


目の前の体育館を見ながら、これからの試験が憂鬱で仕方ない。


「おいおい、迷子になっちゃったのかなぁ?」


「怪我したくなきゃママの所に帰りな」


大柄な男達がゲラゲラと笑いながら横を通り過ぎて行く。


いつの時代も体の大きさだけで力の有無を判断する奴は弱い人間だ。


心底哀れな奴らだと思う。そうやって自分の人生を自分で駄目にしていくのだから。


ガヤガヤとうるさい体育館の中は大柄な男達でいっぱいだ。


ざっと300人はいるな。男子校だから仕方ないけど男の匂いで目眩がしそうだ。


「はい、じゃあ今から入試始めるぞー」


覇気のない声が壇上から体育館内に響く。


「簡単に説明するが、今からお前ら全員で喧嘩してもらう。その結果によってクラスや出席番号が決まるから、そのつもりで頑張れ」


本当に簡単だな。この学校大丈夫だろうか。


ここ、『兵(つわもの)高校』は名前の通り強い者を育てるという意味だが、これは精神的な強さよりも力の強さの方だ。


強い者が上に立って弱い者をまとめる。だから生徒会も当然強さで選ばれる。何をするにも生徒会の決定が全てだ。教師は手を出さない。


それでもこの学校が成り立っているのは、生徒会が生徒達の事を考えた行事を行い、しっかり監視をしているからだ。


そんな力重視の学校の為、入学するには筆記試験だけではなく、もう一つ"試験"がある。


普通の学校なら止めなければならない事をこの学校では意図的に"試験"として行う。改めてとんでもない学校だ。


そしてなぜそんなとんでもない学校に俺が入学する事になったのか。


それは簡単な話だ。俺の探している人物の手がかりがあると思ったから。つまり自分の意思だ。


「じゃあ後は適当に喧嘩してくれー」


壇上の赤髪教師が言うと、体育館中に罵声が飛び交う。


「オラァっ!」


「死ねコラ!」


「ぐぁっ」


開始早々バタバタと倒れていく。


巻き込まれないように一度体育館の隅に避難する。


壇上の赤髪教師は喧嘩する男達を品定めするように眺めている。


良いご身分な事で。


まぁ、なるベく喧嘩はしない方向でいかないとな。面倒だし。


「おいおい、こんなとこにちっこいのがいるじゃねぇか」


そう思ったのも束の間、刺青だらけの男が近づいてくる。


「弱ぇやつはいらねぇ」


そう言うと思いっきり殴りかかってくる。


俺が避けると、そいつの拳は体育館の壁に命中した。


「ぐぅっ」


いやぁ、今のは痛かっただろ。相当勢いつけてたからな。まぁでも安心したまえ。君のその拳はレベルアップした事だろう。


「クソがっ」


男は俺を見て歯ぎしりする。


「ぶっ殺してやる!」


やっべ。やる気出しちゃったかな。


人が密集している所まで走るが、刺青の男は構わず腕を振り回しながら追いかけてくる。


刺青の男の拳は相当威力があるらしく、一発当たっただけで周りの男達を倒していく。


馬鹿力かよ。あんなの当たったら死ぬって!やばいって!


男達の間を素早くくぐり抜け、倒れた男達に紛れ、死んだフリをする。


こういう時、体が小さいとバレなくていいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

そして鳥は戻ってくる

青波鳩子
恋愛
リネットの幼馴染ジョディーの家に、ジョディーより7か月だけ年下のクレイグという義理の弟がやってきた。 同じ伯爵家同士で家も隣、リネットはクレイグに恋をする。 3人での交流を重ねているうちに、クレイグがジョディーに向ける視線が熱を帯びていることにリネットは気づく。 そんな頃、ジョディーの誕生会の場でトラブルがあり、リネットはクレイグから自分へのマイナス感情を立ち聞きしてしまう。 その晩リネットは、裁ちばさみを握りしめて——。 *荒唐無稽の世界観で書いていますので、そのようにお読みいただければと思います。 *他のサイトでも公開します *2026/2/26 番外編を追加でアップしました。リネットの父親視点です。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...