ヤクザ娘の生き方

翠華

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ブロック対抗リレー

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「山田さーん。ちょっと集合」


キョンキョンが笑顔で手招きしている。


非常に怖い。まさかこんなに時間が過ぎているとは。


「キ、キョンキョーン、今日は一段と美人だねー」


「ありがとう」


だめだ!これはもうだめだ!表情が変わらない!


それからウチは死ぬ程怒られた。


「家族にだってあんなに怒られた事ないのにー」


「花子ちゃんが悪いよ。私はちゃんと言ったからね」


「ごめんごめん!いやぁ、寝てたらいつの間にか時間過ぎててさーははは」


「もう、能天気なんだから」 


「え?脳は天気じゃないよ?どゆこと?」


「大丈夫。気にしないで」


あかりは何事も無かったかのようにグラウンドに目をやる。


「あ、次の次ブロック対抗リレーだよ。花子ちゃん入場門に行かないと」


「あ、そなの。じゃ、ちょっと行ってくるー」


人混みをかき分けながら見知った顔を探す。


「バカ谷いたー」


「誰がバカだ!つかバカだとしてもお互い様だろ!」


「んだとぉ!一緒にすんな!」


「一緒だろうが!」


言い争っているうちにブロック対抗リレーの選手達がかけ足で進む。それぞれ位置につき、最初の選手がコースに並ぶ。


「位置について…」


全員が地面に手をつく。


「よーい…」


おしりを上げる。


「どん!」


走り出した。


その瞬間、静かだったグラウンドが一気に戦場と化す。


これがリレーか!いいね!盛り上がってるね!こりゃ力が入るぞ!


高揚感で胸が高鳴る。


こんなの初めてだ。何だこれ。胸がドキドキしてる。緊張?そんな感じじゃない。何かこう…力が湧き上がってくるような…


だんだん順番が近づいてくる。


そして、


「やっとウチの出番か!」


コースに立つとより実感する。


凄い。学校中の人間が、外部の人間が、大人も子供も全員、選手を見てる。そんでバトンを貰ったら今度はウチがこの視線の真ん中になるんだ!


「お願い!」


前の選手からバトンを受け取る。


「任せろ!」


力一杯走った。周りの声なんか聞こえない。見えるのは前の選手だけ。そして一人、また一人と抜いて行く。


ついに誰もいなくなった目の前は、とても広く、とても明るく感じた。


「バカ谷!」


バトンを渡して足を止める。


ゆっくりと深呼吸をして息を整える。すると、聞こえなかった声が耳から入ってきた。


「きゃああああ!」


「誰あの子!?」


「1年生だよね!?」


「かっこいい!」


「めっちゃ速かったよね!?」


「もしかしたら男子より速いんじゃない!?」


走る前は尖った声ばかりだったのが、いつの間にか黄色い声に変わっていた。


そしてブロック対抗リレーが終わり、自分の席に戻ると、


「花子ちゃん速いね!凄いね!」


「お前やばすぎだろ!」


「私感動して泣きそうになっちゃった!」


クラスメイトに囲まれたウチはしばらく褒められまくった。


結果、青ブロックは総合優勝を収め、ウチも周りの生徒も有頂天だ。


閉会式も終わり、冷めない熱の中片付けをしていると、


「花子ちゃん、ブロック対抗リレー凄かったね!あんなに速いと思わなかったよ!」


「いやぁ、ウチが本気出せばあんなの楽勝楽勝!」


「最下位から一気に1位になっちゃうんだもん!皆びっくりしてたよ!」


「ほんと、昔から足には自信あるんだよね!足速くて良かったー!」


「あれだけ活躍したんだもん、花子ちゃん一気に人気者だよ!」


「いやぁ、それほどで、も……え?」


「え?何?」


「今、何て言った?」


「え?花子ちゃん一気に人気者だよって…」


「え………マジで」


「そうだよ!周り見てみなよ!皆花子ちゃん見てるよ!一番点数高くて一番目立つブロック対抗リレーで一番活躍したんだよ!凄い事だよ!」


なん、だと!?


「花子ちゃんがリレー走り終わった後女の子達の黄色い声が凄かったでしょ?あれ全部花子ちゃんに向けられてたんだよ!気づかなかったの!?」


「なん、だと!?」


この時ようやく自分が何をしたのか理解した。しかし時すでに遅し。取り返しはつかない。


有頂天だった気持ちは、あっという間に後悔で支配され、一気に気持ちが冷めていく。


人生初の体育祭は、人生最大のミスを2回連続で犯してしまうという最悪の結末で幕を閉じた。
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