ヤクザ娘の生き方

翠華

文字の大きさ
上 下
13 / 80

寂しがり屋の本音

しおりを挟む
「おい、いつまでくっついてんだ」


「えーもうちょっとー」


「ざっけんな」


さっちに肩を捕まれ引き離される。


「男ならどんと肩くらい貸してよー」


「十分貸しただろうが」


ウチはさっちの隣に座る。


「で、何でそんなに我慢してんの?特にさっちは言い返しそうな感じなのに」


「あ?」


「いやそういうとこだよ」


「…別に言い返したって意味ねぇよ。どうせ“これだから親がいない子供は躾されてなくて困る“ とか言われんだからよ」


「…さっち親いないの?」


「…ああ。俺だけじゃねぇよ。真白も優も泰明も叶真も全員施設で会ったんだ。親なんかいねぇよ」


「他の皆も!?…皆、施設にいるの?」


「そうだ。でも18になったら俺ら5人共施設を出るんだ」


「施設出たらどうすんの?」


「まだ分かんねぇ。でも働いて稼いで一人で暮らしてかなきゃならねぇ」


「やりたい事は?」


「やりたい事…ね。そんなもんねぇよ」


「何で?」


「お前も見ただろ。目立たねぇようにしてたってさっきみたいに悪目立ちしちまう。やりたい事なんて考えた事もねぇ」


「…そっか。じゃあ、これからやりたい事考えよう!ウチが一緒に探すからさ!」


「何言ってんだお前」


「お前じゃない!花子だ!」


「っぷ」


「何笑ってんだ!」


「いや、お前どう見たって花子って感じじゃないだろ」


「うるさい!次言ったら蹴飛ばすからな!」


「へっ!そんな細っこい足で何が出来んだよ」


「うるさい!」


「はっはははは」


バカにされたのは気に食わないが、笑顔を見られたから良しとしよう。


「とにかく!さっちのやりたい事はウチが一緒に探すからな!さっちに拒否権は無いからな!」


「ねぇのかよ」


「当たり前だ!覚悟しとけよ!」


「ふっ、訳わかんねぇ」


笑うと雰囲気が柔らかくなってヤンキーっぽさが無くなる。


「いつもそういう顔したらいいのに」


「あ?」


「何でもなーい」


「んだよ」


「それよりさ、さっち今日一人?」


「いや、あいつらもいる」


「じゃあ何で今は一人なの?」


「ああ、今日はちょっとな…」


「ウチに言えない事?」


「………」


さっちは気まずそうに目を逸らす。


「分かった。詮索はしない」


「ああ…」


「でも、何かあったら、もし、何か危ない目にあったりしたらウチに助けを求めてよ。頼ってよ。それくらいならいいよね?」


「約束は出来ない」


「そんなに…嫌なんだ」


「俺がしている事は安全な事とは言えない。もしお前を巻き込んで何かあっても責任は取れない」


「ウチが言ったんだから自分の事は自分で責任取るよ!」


「それでもだめだ。女のお前に出来る事はねぇよ」


「………」


まだ距離がある。そりゃ簡単に近づけるなんて思ってないけどさ。


「アホみたいな面してんじゃねぇよ」


「何か役立たずって言われてるみたいで腹立つ」


「何でだよ!言ってねぇだろ!」


「そう言われた気になった!」


「それはお前が勝手にそう思っただけだろ!」


「そうだよ!悪いか!」


「逆ギレかよ…」


「そうだ!ウチを怒らせたらめんどくさいぞ!今のうちに機嫌取り戻さないとめんどくさいぞ!」


「既にめんどくせぇよ」


「分かった。もういい。勝手に関わってやるからな!」


「…はぁ…ま、何かあったら誰かに頼るかもな。お前とは限らねぇけど」


「ドンと来い!」


胸をどんと叩きドヤ顔でさっちを見ると、さっちは呆れたように笑った。
しおりを挟む

処理中です...