ヤクザ娘の生き方

翠華

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反省

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《花子!生クリーム付いてるわよ》


《え?どこどこー?》


《ほら、ここ》


優しい手がほっぺに触れる。


《ありがとう!》


《花子は甘えん坊さんね》


《いいもーん!花子、おかぁさんに甘えるの好きだもん!》


《お母さんも花子に甘えられるの好きだもーん》


《ほんと!?やったぁ!じゃあずっとこれからも甘えられるね!》


《そうだね》


二人の笑い声がいつまでも頭の中で響く。


「…ははっ」


「目が覚めましたね」


「……?」


「花子ちゃん大丈夫ですか?」


「…うん。もう平気。きっと眠かったんだね」


「…そうですか」


「翠ちゃん」


「はい」


「ぎゅーーーっ!」


そう言って翠ちゃんに抱きつく。


「どうしたんですか?」


「あははっ!翠ちゃんの驚いた顔好きだよ!普段見れないからね!」


「…全く、困りましたね」


「ね、翠ちゃん。もう少しだけこのままでもいい?」


「今日はいつも以上に甘えん坊ですね」


「うん!」


昔の夢を見るとすぐ甘えたくなる。早くこの癖直さないと、一人じゃ立てなくなってしまう。


「…花子ちゃん、飛春さんが部屋に来るようにとの事です」


「…そっか。ありがとう。翠ちゃんの元気ウチがぜーんぶ貰ったから!今日は翠ちゃん大変かもね!」


翠ちゃんから離れてにひっと笑う。


「それは大変ですね」


「あははっ!」


「それでは、私も誰かに元気を貰いに行きます」


「蓮からだ!」


「よく分かりましたね」


「ウチって天才!」


「そうですね。では、私はこれで失礼します」


「うん!」


翠ちゃんは扉を閉めて出ていく。


「はぁ…」


駄目だな。子供みたいにはしゃいで。こういう"癖"も直らない。早くどうにかしたいのに。頭では分かってるのに心がついていかない。


服を着替えて身だしなみを整える。


「よし」


鏡に映ったウチは少し幼く見えた。


----七代目の部屋----


「来たか」


「はい。昨晩は本当にすみませんでした。罰は心して受けさせて頂きます」


「あまり気負うな。皆家族だ。気軽に接してやれ」


「…申し訳ありませんが、それは頷けません」


「何故だ?」


「出来るか分からない事を出来るとは言えません。ただ、努力は致します」


「はぁ…それを気負っているというんじゃねぇのか?」


「………」


「とにかく、宴会では組員としっかり関係を深めろ。相手の事を知る良い機会だ」


「はい。心得てます。この機会を無駄にしないよう努めます」


「…まぁ、そうだな」


「お話は以上でしょうか?」


「ああ、そうだ」


「では、これで失礼します」


「待て。父さんとはまだ話をしていないぞ」


「七代目…」


「父さんだ」


「…父さん…ごめんなさい。規則破っちゃった…でも、理由も話せなくて…」


「どうしても話せないのか?」


「そんな事ない…でも、この事に関してはウチが悪いんだ。だから…」


「分かってる。誰も責めやしねぇよ」


「ありがとう」


「で、どうしたんだ?」


「大した事じゃないんだよ。ちょっと友達庇って石ぶつけられたってだけなんだ」


「大した事じゃねぇか。大事な花子の体に傷跡残っちまったらどうするんだ。頭だって六針塗ったんだぞ」


「え…そうなんだ…ごめんなさい。心配かけちゃって」


「いいんだよ、そんな事は。花子の体に傷がついちまった事が問題なんだ」


「………」


「怒っちゃいねぇが、冬休みの間外出する時は鈴音と一緒に行動してもらう。これ以上傷ついて欲しくねぇ」


「うん…」


「鈴音も心配してたからな。あれは俺が言わなくてもずっとお前から目を離さねぇぞ」


「そうだね…父さん…」


ウチは父さんに抱きつく。


「どうした」


「…昨日は出来なかったから」


「そうだな」


「…甘え過ぎかな」


「今更だろ」


「そうだね。もうずっと毎日ハグしてるもんね」


「ああ」


「鈴音さんにも謝らなきゃ」


「ああ」


「父さん…ありがとう」


「…ああ」


何だか目が熱くなる。


もう同じ失敗は絶対しないように気をつけないと。桜組の娘としても、父さんの娘としても顔向け出来なくなってしまう。
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