ヤクザ娘の生き方

翠華

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メール

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12月25日クリスマス。


今日は宴会だ。


夕方になり、桜組の大きな門から一人、また一人と組員達が集まってくる。


それを眺めながら内心溜息をつく。


鈴音さんの手伝いも出来ないし、父さんも翠ちゃんも蓮もはるちゃんもあきちゃんも近づく事すら出来ない。


世…こういう時、世ならどうするかな…


どうしようもない気持ちが溢れ出し、叫び出したい衝動に駆られる。


とりあえず、部屋に戻って頭冷やそう。


ぼふっ。


部屋に戻ってベッドにダイブし、


「ああああああああ!」


枕に顔をうずめて叫ぶ。


「はぁっ!スッキリした!」


とにかく今日は会話して組員達の情報収集だ。何か良い情報が得られるかもしれない。


「あと一時間…何しようかな…あ、そう言えば…」


枕元に置いてあるスマホを掴む。


画面を開くと、


「おおっ…」


あかりからのメールが何件もきていた。


父さんの仕事でしばらく家から出られなくて花火大会から一度も会ってないからなぁ。学校は翠ちゃんが理由つけてくれたみたいだけど…あの後結局場所分かんなくて合流出来なかったし。メールはしたけど。


『花子ちゃん、花火大会ではごめんね。私全然気が利かなくて…』


『今度一緒に買い物行かない?』


『予定空いてる日とかある?』


『クリスマスパーティ来れそう?』


『今日私の家でケーキ一緒に作らない?』


『お正月は?一緒に年越しそば食べたいなぁ』


悪い事しちゃったなぁ。こんなにたくさんメールしてくれてたなんて全然気が付かなかった。スマホずっと部屋に置きっぱなしだったからなぁ。でもどうしよう。もう夕方で宴会もあるから今日は無理だし、年末年始は家族で過ごす事になってるからなぁ。2日とか3日ならいいかなぁ…父さんに頼んでみよう。とりあえず、


『ごめん!ずっとスマホ部屋に置いててメール見てなかった!年越しそばは無理だけど、2日か3日どっちか空いたら初詣一緒に行こう!』


と。これでよし。


ピロロロロロローン。


独特な効果音。


あ、もう返事来た。


『そうなんだ。嫌われちゃったかと思ってかなり不安だったけどメール見て安心したよ。2日か3日だね!また予定分かったらメールしてくれる?』


変な勘違いさせちゃったな。メール気づいて良かった。


『嫌うなんてありえないよ!じゃあまたメールするね!メリークリスマス!』


返信っと。


「ふぅ…会話って大事だなぁ」


改めて言葉で伝える大切さを学んだ気がする。


分かってるはず、なんて考え方は危険だからなぁ。今みたいに一度すれ違ったら言葉でちゃんと伝えないと誤解されたまま時間だけ過ぎてっちゃうし。


ちょくちょくメールも確認しないと。大事な時気付けなかったら嫌だしな。
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