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宴会
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障子を開けると、広い座敷に長い机。その周りに140人の組員が座り、その中心に七代目と側近である翠、蓮、遥人、彰人が座っている。
「全員揃ったな」
とりあえず入ってすぐの所に座る。
「今日は全員よく集まってくれた。せっかくの宴会だ。料理を作ってくれた鈴音に感謝して楽しく騒げ。羽目は外すなよ。じゃ、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
七代目に続いて全員が叫ぶ。
ワイワイワイ…。
あちこちで会話が飛び交う中、一人居心地の悪さを感じていた。
「お嬢、こっち来て下さいよ。今家族の話してるんです」
すぐ目の前で話していた30代位の強面の男が手招きする。
「…はい」
あまり気乗りしないが、少し距離を空けて近くに寄る。
「こいつ波田野(はたの)っつんすけど、今奥さんと娘一人と息子二人養ってるんですよ。で、最近その娘がお父さんの服と一緒に洗いたくないって言い出したらしいんですよ!ぎゃっはは!おもしれぇでしょ!」
強面男は自分の正面に座っている同じく30代位の男を笑いながら指差して言った。
「おい久遠(くどう)!てめぇ何勝手に人の悩み言いふらしてんだよ!笑ってんじゃねぇ!」
「いいじゃねぇか!そんくらい父親なら通る道だろ!ね?お嬢もそういう事ありますよね?」
「いえ、私は…」
「無いんですか!?さすが七代目!父親なのに娘に好かれて羨ましい!」
「おい、俺が娘に嫌われてるみたいな言い方してんじゃねぇよ!」
「あ?ちげぇのか?」
「ちげぇよ!てかお前も人の事言えねぇだろ!お嬢、こいつも娘が二人いるんですけどね、この前お父さんと寝たくないって言って、それから娘二人共奥さんと別の部屋で寝てるんです!絶対嫌われてますよね!」
「んだと!言いやがったな!」
「てめぇが先に言い出したんだろうが!」
目の前でぎゃあぎゃあと騒ぐ大人達。
まるで子供みたいだ。
「ははっ」
思わず笑ってしまう。
「あ、」
「今…」
驚いた顔でこちらを見る二人。
「すみません…」
「何で謝るんですか!」
「いい笑顔じゃないですか!」
気が付くと、周りの組員全員が驚いた顔で騒ぎ出す。
「お嬢が笑った!」
「お嬢が笑ったぞ!」
「何だと!?」
「俺久々に見た!」
「俺なんか話してるとこ見るのも久々だぞ!」
「どこだ!?俺も見たい!」
「お嬢が俺らの中に入ってる事自体全然無かったよな!?」
「こんな近くで見たの初めてだ!」
「すげぇ!今年最後にめっちゃ縁起良くね!?」
「おい!もっとちゃんと見とかねぇと!もう次いつ見られるか分かんねぇぞ!」
全員の視線がウチに集まる。
「えっと…」
罪悪感と気まずさと、それでも敬遠しようとする自分が嫌で、
「すみません。少し席を外します」
また逃げてしまった。
少し歩いて近くの縁側に座る。
「はぁ…ウチって情けない…」
真っ暗な中、賑やかな声だけが響いてくる。
「いっそこのまま逃げてしまおうか」
「お嬢…」
「え!」
驚いて見ると、そこには久遠さんがいた。
「すみません。ちょっと話したくて追いかけて来ました」
「…今の…聞きました?」
「はい。すみません」
「…いいんです。私が悪いんですから」
「…隣、宜しいですか?」
「どうぞ」
久遠さんは気を使ってくれたのか、少し距離を置いて隣に座る。
冷たい夜風が今は心地良い。
「全員揃ったな」
とりあえず入ってすぐの所に座る。
「今日は全員よく集まってくれた。せっかくの宴会だ。料理を作ってくれた鈴音に感謝して楽しく騒げ。羽目は外すなよ。じゃ、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
七代目に続いて全員が叫ぶ。
ワイワイワイ…。
あちこちで会話が飛び交う中、一人居心地の悪さを感じていた。
「お嬢、こっち来て下さいよ。今家族の話してるんです」
すぐ目の前で話していた30代位の強面の男が手招きする。
「…はい」
あまり気乗りしないが、少し距離を空けて近くに寄る。
「こいつ波田野(はたの)っつんすけど、今奥さんと娘一人と息子二人養ってるんですよ。で、最近その娘がお父さんの服と一緒に洗いたくないって言い出したらしいんですよ!ぎゃっはは!おもしれぇでしょ!」
強面男は自分の正面に座っている同じく30代位の男を笑いながら指差して言った。
「おい久遠(くどう)!てめぇ何勝手に人の悩み言いふらしてんだよ!笑ってんじゃねぇ!」
「いいじゃねぇか!そんくらい父親なら通る道だろ!ね?お嬢もそういう事ありますよね?」
「いえ、私は…」
「無いんですか!?さすが七代目!父親なのに娘に好かれて羨ましい!」
「おい、俺が娘に嫌われてるみたいな言い方してんじゃねぇよ!」
「あ?ちげぇのか?」
「ちげぇよ!てかお前も人の事言えねぇだろ!お嬢、こいつも娘が二人いるんですけどね、この前お父さんと寝たくないって言って、それから娘二人共奥さんと別の部屋で寝てるんです!絶対嫌われてますよね!」
「んだと!言いやがったな!」
「てめぇが先に言い出したんだろうが!」
目の前でぎゃあぎゃあと騒ぐ大人達。
まるで子供みたいだ。
「ははっ」
思わず笑ってしまう。
「あ、」
「今…」
驚いた顔でこちらを見る二人。
「すみません…」
「何で謝るんですか!」
「いい笑顔じゃないですか!」
気が付くと、周りの組員全員が驚いた顔で騒ぎ出す。
「お嬢が笑った!」
「お嬢が笑ったぞ!」
「何だと!?」
「俺久々に見た!」
「俺なんか話してるとこ見るのも久々だぞ!」
「どこだ!?俺も見たい!」
「お嬢が俺らの中に入ってる事自体全然無かったよな!?」
「こんな近くで見たの初めてだ!」
「すげぇ!今年最後にめっちゃ縁起良くね!?」
「おい!もっとちゃんと見とかねぇと!もう次いつ見られるか分かんねぇぞ!」
全員の視線がウチに集まる。
「えっと…」
罪悪感と気まずさと、それでも敬遠しようとする自分が嫌で、
「すみません。少し席を外します」
また逃げてしまった。
少し歩いて近くの縁側に座る。
「はぁ…ウチって情けない…」
真っ暗な中、賑やかな声だけが響いてくる。
「いっそこのまま逃げてしまおうか」
「お嬢…」
「え!」
驚いて見ると、そこには久遠さんがいた。
「すみません。ちょっと話したくて追いかけて来ました」
「…今の…聞きました?」
「はい。すみません」
「…いいんです。私が悪いんですから」
「…隣、宜しいですか?」
「どうぞ」
久遠さんは気を使ってくれたのか、少し距離を置いて隣に座る。
冷たい夜風が今は心地良い。
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