ヤクザ娘の生き方

翠華

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新学期

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「おっはよー!」


「おはよう花子ちゃん。朝から元気だね」


「当たり前じゃん!ウチはいつでも元気だよ!」


今日から新学期。クラスの雰囲気は休み明けというのもあってだらけきっていた。


「おっす」


「おう!バカ谷おはよー!」


「あ?!お前も頭ん中は同じだろうが!」


「んだとぉ!」


「やんのかコラ!」


「二人共同じだって」


「おはよう秀才!」


「秀司ね」


「あ、そうだった」


「いつになったら名前覚えてくれるんだろうね」


「ごめんごめん!悪気は無いよ!」


「悪気無い方がタチ悪いんだけど」


「えへへへっ」


「いや、褒めてないから」


「あ、そういえばさ…」


ゴソゴソと鞄の中を漁ってお守りの入った紙袋を取り出す。


「はいこれ」


「お?お守りか。さんきゅ」


「ありがとう」


「あかりと二人で初詣行ったからその時に買ったんだ!いやぁ、二人にぴったりのお守りがあって良かったよ!」


「何か複雑だが…まあ、そうか」


「確かに大和には学業御守が今一番必要だよな」


「おい秀司」


「ん?」


「本気で分かんないって顔してんじゃねぇよ」


「まあまあ!てことで今日からまた宜しく!」


「急に話終わらせやがった」


キーンコーンカーンコーン。


「あ!もうキョンキョン来ちゃうよ!」


「そうだね!」


「じゃ、また後で」


「…俺が何したってんだよ」


バカ谷はとぼとぼ席に戻って行った。


それを見ながらあかりとこっそり笑う。


----放課後----


立ち入り禁止の立て札を通り過ぎて少し歩くと小屋が見える。


「ふぅ、ここに来るのも久しぶりだな」


ギィィィィ。


扉を開けて中に入る。


誰もいないな。そう言えば前にあかりが見回りしてるって言ってたような…ちょっとここで待たせてもらお。


ソファで横になり、目を閉じる。


眠い…このままちょっと寝ようかな…ふぁぁ…でも…ゆ、め……が………。


真っ暗な中に明かりが三つ。ああ、懐かしい記憶だ。


《こんにちは。花子ちゃん》


《あ!◯◯だ!》


《あら、◯◯さんこんにちは》


《奥様こんにちは。今日もちょっと仕事の件で来たんですが》


《◯◯さんは頑張り屋さんですね》


《いえいえ。これでも結構楽しんでるんですよ》


《あら、◯◯さんは見た目によらず意外とたくましいのね》


《ははっ、そんな事ありませんよ》


《ねぇねぇ!花子と遊ぼ!》


《こら花子、服を引っ張らないの》


《だって全然花子に構ってくれないんだもん!》


《ごめんね、花子ちゃん。じゃあちょっとだけ遊ぼうか》


《ほんと!?やった!じゃあ◯◯が鬼!花子隠れる!》


《かくれんぼか。よし、早く隠れないと食べちゃうぞー》


《きゃははははっ》


《ふふっ、二人共怪我しないように気をつけてね》


《おかぁさんも!》


《よぉし、じゃあ二人で隠れようね!》


《うん!》


《お二人共あまり遠くに隠れないで下さいね。ただでさえ広いお屋敷なんですから》





三人で仲良くかくれんぼした時の記憶。母とウチともう一人。この人は…


「おい、起きろ」


「…んー?」


「ったく寝顔もブッサイクだな」


「…なんだとぉ!」


目を閉じたまま飛び起きる。


「寝ぼけてんじゃねぇよ!」


「あたたたたたっ!」


「起きたかよ」


「起きたから離してよ!った!痛い痛い痛い痛い!」


目を開けると目の前にさっちがいた。


「ちょっとさっち!寝起きの乙女に関節技かけるとか頭おかしいんじゃないの!?」


「てめぇが乙女とか頭おかしいんじゃねぇか?」


「うっさいわ!」


気がつくと小屋にはクインテット全員がいた。


「てか、皆見回り?」


「ああ」


「そうなんだ。今日渡したい物あったから待ってたんだよ」


「渡したい物?」


「うん。お守りなんだけど、」


紙袋から取り出して一人ずつ手渡していく。


「良縁御守…」


「ごめんね。余計なお世話なんだろうけど、皆に買うならこれかなって思って…」


「いや、ありがとう」


とっちは嬉しそうにしてくれる。


「良かった!喜んでもらえて!」


「ち、仕方ねぇ。貰ってやるよ」


「やった!」


「ありがとうございます」


「ありがとう…」


「………ありがとう…」


皆喜んでくれたみたいだ。


「それでさ、皆に頼みがあるんだけど、今日はもう遅いから明日一緒に買い物行かない?」


「買い物?」


「うん。ちょっと友達にね、プレゼント買いたくて一緒に選んでもらえないかな?」


「明日か…分かった。見回りの後になるが、それでも良ければ」


「うん!大丈夫!じゃあまた明日もここで待ってるね!」


「ったく、いつの間にここに勝手に入れるようになったんだよ」


「いいじゃん!本当は嬉しいくせに!」


「誰がだよ」


さっちは顔を背けるが、本気で嫌がってるようには見えなかった。
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