ヤクザ娘の生き方

翠華

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意欲

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ギィギィギィ…。


ブランコの揺れる音が静かな公園に響く。


「どう?怖くなった?」


まっちは期待の目で見てくる。


「うーん、残念ながら」


「はぁ?何で?僕人殺したんだよ?しかも好奇心で」


「まぁ、ヤクザにもそういう人はいるからね」


「そう。じゃあ僕にぴったりだね」


「それはどうかな」


「どうして?人を殺す事に生きがいを感じるんだよ?ぴったりじゃん」


「何言ってんの。ヤクザは死ぬ覚悟がなきゃ出来ない事ばかりだし、まっちまだ高校生でしょ。もっと子供っぽくしなよ。今が一番楽しい時じゃん!それに、不良が急にヤクザとかに入ったりすると後悔しかないよ」


「確かに死ぬ覚悟なんてないね。てか死ぬ為に生きてる人間なんていないし、そんな覚悟必要なの?」


「まぁ、ウチみたいなヤクザの人間にはね。まっち達にはそんなのなくてもいいよ。それに、今まで楽しい事何も出来なかったから人を殺す事にしか生きがいを感じられないんだよ。もっと一緒に楽しい事しようよ!」


『もっと一緒に楽しい事しよう』


まっちは少し驚いた顔をし、


「一緒に…叶真も初めて会った時そんな事言ってたな…」


ぼそっと小さな声で呟く。


「ん?何て?」


「いや、何でもない。そんな事より、君といて楽しい事なんて出来るの?」


「甘く見ないで欲しいな。ウチといて楽しくない人間なんていないさ!」


「凄い自信だね」


「当たり前じゃん!まっちとこれから楽しい事いっぱいするんだから!」


ブランコから降りてまっちの目の前に立つ。


「よしっ!じゃあまずは帰って皆で美味しいご飯食べよう!」


まっちの両肩を掴んで笑顔で言う。


「全く、馬鹿なのかアホなのか分かんないね」


「いや、どっちも嫌なんですけど」


「さっさと帰ろう。荷物が重くて手が疲れる」


「そんなに入ってないじゃん」


「何?何か言った?」


「言ったわ」


少し距離が近づけたようで嬉しくなったウチは、調子に乗ってスキップなんかしてしまった。


「ただいまー」


「おかえり。大丈夫だったか?」


とっちは心配そうにしている。


「おい、あれから何時間経ったと思ってんだよ!奏明が腹空きすぎて大変だったんだぞ!」


「うるさいな!こっちは皆の為に大量に食料調達してきて大変だったんだぞ!」


「でも買い物に2時間もかかるなんて何かあったんですか?」


ゆっちの鋭い質問にドキッとしてしまう。


「ううん。何も無かったよ」


「この人方向音痴で大変だったんだよ」


おぃぃぃぃっ!まっちの奴ウチのせいにしやがって!まぁ間違ってはないけど、1ミリくらいはまっちのせいだぞ!


ウチがまっちを見ると、明らかに目を逸らした。


「ちょっとまっちさん?」


「え?何?」


完全に知らん顔だ。


「はぁ…皆先に食べてて。ちょっと翠ちゃん所行ってくるから」


溜息をついて一度リビングを出る。


「翠ちゃん、いる?」


翠ちゃんの書斎の前で声をかける。


「どうしました?」


「ちょっと入ってもいい?」


「どうぞ」


ガチャ。


扉を開けて中に入る。


椅子に座って仕事をしていた翠ちゃんは、書類の上に本を乗せ、見えないようにする。


「どうしたんですか?花子ちゃんがここに来るなんて珍しいですね」


「うん。ちょっとお願いがあって」


「お願い、ですか。本当に珍しい事もあるものですね」


「うん。忙しいのにごめんね」


「いえ、大丈夫ですよ。花子ちゃんのお願いなんて初めてですし、私も頼ってもらえて嬉しいです」


「ありがとう。実は…」


「そんな事があったのですか。分かりました。飛春様に報告してからになりますが、すぐに処理致します」


「うん。お願い」


「…良い傾向、なのでしょうか…」


「ん?何か言った?」


「いえ、何でもありません」


「あ、そうだ。これあげる。チョコレート。疲れた時は甘い物っていうし。じゃあ、ウチは皆と勉強の続きしてくるね」


「ありがとうございます。勉強頑張って下さい」


「うん、ありがとう」


部屋を出て少しほっとする。


翠ちゃんに任せておけば完璧だ。本当なら自分でどうにかしてあげたいけど、ウチじゃ"全て無かった事"にする事は出来ない。


もっと勉強しなくちゃな。


ウチは改めて勉強への意欲を燃やすのだった。
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