ヤクザ娘の生き方

翠華

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新しい季節

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桜の木に挟まれている通学路。


「桜もう散っちゃったなー。ていうか、ここって景色は最高なのに治安が悪いんだよね。何かもったいない」


「仕方ないな」


のんびりとマイペースなとっち。


「お前は治安が悪いとか関係なさそうだけどな」


「どういう意味だ」


「そのままの意味だよ」


悪口言ってくるさっち。


「なんだとぉ」


「ちょっと、毎日毎日睨み合って飽きないわけ?」


呆れた顔のまっち。


「まぁ、それがこの二人ですからね」


冷静なゆっち。


「……それも仕方ない」


眠そうにしているかっち。


皆と登校し始めて早数ヶ月が経ち、ウチとまっちとさっちは二年。とっちとゆっちとかっちは三年になる。


だいぶ仲良くなれたとは思うけど、まだ距離は感じる。


「そう言えばさ、中桜区っていつからこんなに治安悪いの?昔から?」


「知らねぇ」


「黒薔薇組が来てからって噂ですよ」


「黒薔薇組?…ってどこかで聞いたような…うーん、思い出せない」


記憶のどこかにあるはずなのに、何かに拒まれているみたいに思い出そうとすると頭が痛くなる。


「花子、大丈夫か?」


気づいたとっちが心配してくれる。


「うん、ありがとう。大丈夫だよ」


「ま、花子丸は頑丈だからな」


「誰が花子丸だ」


「つっこむとこそこなんだ」


「え?他に何かある?」


「いや、いいよ」


まっちは疲れた顔だ。


----昇降口近くの掲示板----


「げっ、同じクラスかよ!」


「しかも三人とも…」


新しいクラス表を見ながらまっちとさっちは落ち込んでいる。


「いいじゃないか」


「叶真、本気で言ってんのか?」


「良かったじゃないですか」


「……うん」


「お前らもかよ」


「いいじゃん!ウチは嬉しいよ!三人で楽しい学校生活送ろうじゃないか!」


「どこ見てんだよ」


「あ、あかりも同じBクラスだ!バカ谷と秀才もいる!こんな偶然あるんだ!」


「聞けよ」


教室に入ると、全員の視線がさっさとまっちに集まり、賑やかだった生徒達は静かになる。


それは生徒達がまっちとさっちに対して線を引いている証拠だ。


「あ、花子ちゃんおはよう!また同じクラスだね!」


「あかりおはよう!」


あかりは笑顔で手を振ってくる。


「あ…」


でも、さっさとまっちを見てあからさまに動揺する。


「あかり、さっちとまっちだよ。今日から同じクラスだし、皆で仲良くしよう!」


「さ、さっち?まっち?…もしかしてあだ名?」


「うん!そだよ!」


「………」


「………」


さっちとまっちは気恥しそうだ。


「ぷっ、あはははははっ」


あかりは急に吹き出して笑い出した。


「どうしたの急に?大丈夫?」


「ご、ごめんね。何か、拍子抜けしちゃったっていうか」


「え?どゆこと?」


「ううん、何でもない。私小日向 光です。さっきはちょっとびっくりしちゃって、ごめんなさい。さっちさん、まっちさん宜しくね」


「お、おう…」


「よ、ろしく?」


二人ともクインテットのメンバー以外の人とまともに話すのは初めてなのだろう。物凄くぎこちない。


「いやぁ、これからはさっちとまっちの色んな顔が見られそうで楽しみだなぁ」


ニヤニヤしながら言う。


「ぶっ飛ばすぞ」


「ほんと、君性格悪いよね」


「ははははっ、よく言われる」


「仲が良いんだね」


あかりは何だか羨ましそうにしている。


「何言ってんの。これからはあかりも一緒に皆で思い出作るんだよ」


「そうだね」


あかりは最近少し暗い感じがする。やっぱり言葉なんか駄目だな。行動で示さないと。


「あかり!」


まず始めにあかりにはもっと心を開いてもらいたい。


安心させるようにギュッとあかりを抱きしめる。
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