すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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7話 恋に落ちた瞬間

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6年後


医大を卒業し、4月から県の総合病院へと勤め始めていた

専門は整形外科であり筋肉や骨組みが元々好きな俺には一番合う部門だったのが理由のひとつ

新人医師として毎日が勉強ばかりの日々の為に患者さんに顔を知って貰うことを優先していたり、先輩医師の手術を見たり技術を学ぶことも毎日、毎日欠かさず行っていた

医師がこんなにも忙しいなんて思わなくて、ニュースなんて殆ど患者さんから耳に入る程度
高校卒業後、大学に入る前の短期間で運転免許も取得し、勤める先が決まり卒業後車を買ったのはいいが歩かなくなって尚更、誰とも話さなくなり情報の遅れを感じていた

其でも毎年11月11日には時計塔の前で3時間以上は待っていた

一ノ瀬さんらしい人が現れたことは一度もない

「 ....えーと、この患者さんは.... 」

「 和泉先生! 」

「 なに? 」

先輩医師から頼まれていた事をやっていれば聞こえてきた声に振り返る

そこにはニコニコした看護師の姿があり俺は首を捻り、なんだろうかと見ていれば背に隠していた物を向けてきた

「 今日は11月11日。ポッキーの日ですよ!一緒に食べませんか? 」

「 11月11日....はっ!そうだ、11日じゃないか! 」

「 えっ、えぇ、そうですよ? 」

もう少し先だと思っていたが忘れていた
11月に入ったんだと言うことは覚えていたのだが当日だとは思わなかった

「 今日は何時までだったか.... 」

「 和泉先生は定時なので18時だと思いますよ? 」

「 良かった....間に合う 」

「 えーと、何がですか? 」

定時なら急いで行けば間に合うと安心した
胸を撫で下ろし、もう一度書類へと眼を向けていれば看護師はむっと頬を膨らませる

「 先生、そんなことよりポッキー食べましょうよ! 」

「 ポッキー?いらん.... 」

「 えー、なんでですか? 」  

「 あははっ、駄目だって。リサちゃん 」

「 あ、大輝先生!なんでダメなんですか? 」

顔を上げれば其処には白衣を着た大輝が入り口の扉に手をつけ笑っていた
所属してる場所は違い、彼は脳神経外科なのだが今いる患者さんで脳が悪いのに怪我をして入院してるためにちょくちょく様子を見に来るんだ

ケラケラと笑った大輝は看護師の方へと近づき、変わりにポッキーの袋を一つとり袋を開け一本口にいれる

「 あー!和泉先生と食べようと思ったのに.... 」

「 だから和泉先生は駄目だって 」

「 なんでです? 」

ポッキーを食べ終わり一本取れば俺の口元へと当てる大輝に仕方なく、口を開け食べるなり彼は一つ笑う

「 こいつってば高校生の頃から好きな人いるから会うために一生懸命なんだよなー? 」

「 なっ、内緒だろ!? 」

「 えっ、好きな人いるんですか?残念だけど気になる!どんな人ですか! 」

女性って本当に恋愛の話は好きだなと思いながら顔を背ければ大輝は告げた

「 うーんと、印象は可愛いな。クリーム色の髪だしフワフワした印象。お菓子みたいな? 」

「 マシュマロ系女子ですか!和泉先生、面食いんですね 」

「 だから、好きな訳じゃないって....約束してるだけだよ 」

マシュマロ系ってなんだ、どっちかと言えばあの人はカップチーノ系だと思う俺は好きではないことは否定した

「 ほう、態々医者にもなったのに好きじゃないって言うんだ~? 」

「 ....約束しただけだ。医者になるって....だから、そういった関係じゃない.... 」

「 先生、長年待つって時点で好きなんだと思いますよ 」

「 はぁ!? 」

そう言うもんなのかと驚けば、二人は何度か頷いた

好きというか、もう一度会いたいという思いが強い岳なんだがと思う俺には恋愛とかよく分からない

「 ....好きだとか言ったら迷惑だろ。約束したけじめをつけれて無いんだし 」

「 高校生から思ってたが、御前って本当....真面目だよなぁ。俺なら即ホテル連れ込んでヤってるわ 」

「 おまっ!? 」

「 大輝先生って、噂通りの屑ですね 」

「 君、それを本人前に言わないことだよ 」

何て言う会話を昼間っからしてんだと焦る俺を見て、大輝はにんまりと笑ってから首に腕を回し耳打ちをしてきた

「 会ったときに逃がさねぇようにな?今年は執行猶予も切れるんだし、頑張れよ 」

「 !! 」

看護師に聞こえない程度に告げた大輝は直ぐに離れ背を叩いてから歩き出した

「 それじゃ海斗、いい夜になるといいなー。おつかれー 」

「 あ、おつかれさま.... 」

なんやかんやで大学いても支えてくれた大輝に感謝してることはしてるんだよな

「 大輝先生ってあんなに、テンション高めでしたっけ? 」

「 手術中は緊張して怖いが、高校生の時からあんなんだったよ 」

「 へぇ....あ!私のポッキー取られた!! 」

まだまだ新米の俺達
手術の顔なんて集中してるから余裕がないがいつか先輩医師のようになれればいいと思う

今年で執行猶予は切れる、
それならあの人にも会えるようなそんな気がしていた



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