不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良

文字の大きさ
3 / 25

03 何でもあって何もない部屋

しおりを挟む

考えても、考えても…。

今現在の私の脳では、上手く考えは纏まらなかった。

その場で座り込んで、どれだけの時間が経過したのか分からないまま、突然とインターホンが鳴った。

「 なに……? 」

訪問者?と疑問を抱き、脚をそっと立たせてから、玄関のドアノブに手を掛ける。

「( これって…私が勝手に開けても…いいの? )」

開けていいと、許可を貰っただろうか。

男性が告げた、いくつかの言葉の中で、
訪問者への対応方法がなかったと思う。

「( なら、駄目では…? )」

ドアノブに向けた手を引っ込め、自らの胸元に置いて数歩後ろへと下がると、ドア越しに声が聞こえてきた。

「 今回は開けましょう。どうぞ 」

「( えっ、え… )」

カードキーによってロックは開かれ、扉は自動で僅かに隙間を作る。

困惑してる私を余所に、扉の隙間から鼻先を掠める、香ばしいソースの香りが漂ってきた。

「 おや、いらしてたんですね。夕食の御準備が整いましたので、料理を持ってきました。どうぞ、リビングの方で頂きましょう 」

「 え、えっ…夕食……? 」

先程の燕尾服を着た男性と共に、白いコック服を着た男性が入って来ると、彼等は私の横を通り過ぎ、リビングへと向かってしまう。

恐る恐る着いていくと、燕尾服の男性は、手際良く丸みを帯びたガラステーブルに白いテーブルクロスを敷き、ワゴンに置かれているグラスや皿等を並べ始めた。

「 お座りください 」

「 は、はい… 」

否定出来ず、言われた通りに引かれた椅子に腰を掛けると、シェフらしき男性は一度頭を下げる。

「 今日からフランス料理を提供担当させて頂く事になりました。まずは、前菜の… 」

「 ちょっと、待ってください… 」

「 おや、フランス料理はお好きでは御座いませんか?主人に提供する方と同じく、一流シェフの… 」

「 そうではなくて…! 」

説明の途中で切ってしまうのは申し訳ないけど、此の状況は、理解できるわけがない。

「 如何なさいました? 」

「 その…何故、買われた私が…シェフの料理を頂けるのですか?身の丈に合わないかと… 」

自分で言うのもなんだが、目の前に並べられたカトラリーの使い方は、何一つ分からない。 
 
外側から使っていく、そんな記憶程度しか無いから、どのタイミングでカトラリーを交換して、どうやって食べればいいのかも…。
 
そんな私が、フランス料理のフルコースなんて…
似合うはずがない。

ましては、闇オークションで買われたのに…。

「 そんな事はございませんよ。これは主人が決めたこと。それに従うのも、貴女様の役目かと思いますよ 」

「 役目……。そうですね…御命令なら、頂きます 」

そうだ、これは命令なんだ。

食べろと言われたから、食べる。
  
そう思うと、少しだけ気が楽になった気分だったから、肩の力がほんの僅かに抜ける事が出来た。

そんな私とは裏腹に、彼等は小さく溜息を吐いた事に、気付かぬフリをする。

「( 呆れるよね…。だって私は、性奴隷や下僕と同然なのだから… )」

フランス料理の食べ方など分からなくて、
其れでも出されてものを口へと運んで行くだけの単純な動作。
 
何故か、一切の味がしなくて…
美味しいのかも分からないから、説明される料理に頷くしか出来なかった。

三品目を食べきった頃に、これ以上は食べれないからと、断りを入れてしまったぐらいには食欲がなかったんだ。
 
貧乏人なのに…

残すなんて……。

「 本当に…申し訳ありません…… 」

「 初日なのに、よく食べた方だと思いますよ。お気にならさず、では…寛いだ後に、お風呂でもお入りくださいな。着替えの方は、寝室のクローゼットやタンスの方に入ってますので、お好きにお使いくださいね 」

「 分かりました…。ありがとうございます 」

至れり尽くせりとはこの事。

シェフと共にテーブルにあった食器を片付けた男性は、直ぐに部屋を出ていった。

また一人になれば、静まり返ったこの部屋の静けさが、虚しさを感じさせる。
 
「 お風呂…か……… 」

お風呂に入る気力も無く、リビングに置かれているL字型のソファの下に敷けれたカーペットの上で横たわり、高価な照明のある天井を眺めた。

「 私は、なんの為に買われたのかな…。肥やして食べる為なのか…それとも、肉付きを付けて抱くのか…。どんな、結果でも…私はもう世間では、死んでるのだから…… 」

売られる前に聞いた、あの女性の言葉。
それが酷く、耳に残り…。

掻き消すように、無理矢理瞼を閉じて、眠りに入った。

眠っていれば時間が過ぎるし、忘れる事も出来る。

夢の中だけでは、何も考えないでいたい。

それなのに見た夢は、私がバラバラに殺され、
生きながら喰われるような、酷いものだった。

月が真上に上る頃に一度目を覚まし、
そこから二度、三度と浅い眠りを繰り返した。

やっと眠れたのは、朝方だったのだけど…
人の声で目を覚ますことになったんだ。

「 おはようございます。朝食のお時間ですよ 」

「 ………おはよ、ございます… 」

「 ちゃんとベッドで寝ないとなりませんよ。ほら、お風呂にも入ってないようなので、湯を入れておきました。どうぞお入り下さい 」

「 ………はい 」

この男性は、まだ出会って二日目だけど、
凄く物事が強引だと思った。

私がとやかく言う前に、お風呂に押し込めれるように誘導され、その後の行動すら告げる。

「( でも……確かに、気持ちがいい… )」

丸い可愛らしい浴槽は、脚を伸ばせる程で、ジェットバスになっていて、男性が入れた泡風呂用の液を立たせ、きめ細やかな泡にしていく。

泡風呂なんて初めてだから、それだけが楽しくて、朝食が来ていたのも忘れ、長風呂をしてしまった。

「 すみません…随分と長く入ってしまって… 」

「 いいえ、ゆっくり寛げたのならなによりです。フレンチ料理担当のシェフの方には帰って頂いたので、準備は私がさせて頂きます 」

「 ありがとうございます… 」

「 その前に、髪を乾かしましょう。ヘアオイル等をお持ちしますね 」

テキパキと動く男性に戸惑うものの、彼にソファに座る様に指示をされ、腰を下ろしてからは、
まるで何処かの金持ちのお嬢様の様に、綺麗に髪は乾かして貰い、ヘアトリートメントやオイルなどもつけられた。

「 慣れてますね……… 」

「 嗚呼、歳の離れた妹がございまして。幼い頃からしていたので…慣れてるかも知れませんね 」

「 そうなんですね… 」

そうか、この男性にも家庭があって…家族がある。

当たり前に接してるけど、それも全て仕事一つなんだと思えば、納得が出来る。

「 いや、じゃないですか…?私なんかの、お世話など… 」

「 嫌と思うなら、引き受けていませんよ。貴女様への御世話の担当は、ちゃんと使用人の中で話し合いましたので。私は…先程も申し上げたように、歳の離れた妹が居ますので、他の者より慣れてると思い、この仕事を引き受けました。決して、嫌でやってはいません 」

「 そう、なんですか……。ありがとうございます… 」

嫌ではない。
嘘でもそう、きっぱりと言ってくれた彼に、
ほんの少しだけ嬉しく思えた。

「( 本当に此処では…私を傷つける人は、いないのかな… )」

「 では、朝食に致しましょうか 」

「 はい…頂きます 」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【完結】東京・金沢 恋慕情 ~サレ妻は御曹司に愛されて~

安里海
恋愛
佐藤沙羅(35歳)は結婚して13年になる専業主婦。 愛する夫の政志(38歳)と、12歳になる可愛い娘の美幸、家族3人で、小さな幸せを積み上げていく暮らしを専業主婦である紗羅は大切にしていた。 その幸せが来訪者に寄って壊される。 夫の政志が不倫をしていたのだ。 不安を持ちながら、自分の道を沙羅は歩み出す。 里帰りの最中、高校時代に付き合って居た高良慶太(35歳)と偶然再会する。再燃する恋心を止められず、沙羅は慶太と結ばれる。 バツイチになった沙羅とTAKARAグループの後継ぎの慶太の恋の行方は? 表紙は、自作です。

従者に恋するお嬢様

よしゆき
恋愛
 従者を好きなお嬢様が家出をしようとして従者に捕まり閉じ込められる。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...