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16 恋と愛の違い
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― 実那斗 視点 ―
酷く辛そうな顔をして、頭を下げて告げた彼女の言動を見て、俺は" 焦り過ぎた "と言うのを自覚した。
「 はぁー……やらかした…… 」
「 でしょうね 」
麗菜と交代するように入って来た湊は、予定していた昼食の準備を止め、ローテーブルの上に散らかったゴミや空の瓶を片付けながら俺の言葉に、頷く。
「 エレベーターですれ違った時、泣きそうな顔をしてましたよ。私達が考えた、距離を縮めるなら、室内デート作戦。…失敗したんですね? 」
泣きそうな顔をさせてしまった事に、本当に申し訳なく思う。
そんなつもりでは無かった…。
湊の言葉が、余り耳に入って来ないまま、
自分の気持ちを呟く。
「 途中迄はいい雰囲気だった…。だが…妻にしたいと言う気持ちが先走って、妻になって欲しいと言ったら…。無理だと言われた… 」
「 ……伝えたのですか? 」
「 嗚呼……。俺が幸せにしてやるから…って、君を愛したい。側で笑っていて欲しいと…そう言ったら、自分より相応しい人が居るからと断られた 」
正直、断られるとは思っていなかったから
あんなにもきっぱり拒絶された事に、ショックがデカい。
数回目の溜息を付き、葡萄ジュースをグラスに注ぎ、酒に見立てて飲み干すと、片付けていた湊の手は止まった。
「 当たり前でしょう。そんな言い方だと、誰も断りますよ。よっぽどのお金目当てな奴以外は 」
「 そう言うものなのか?俺は、俺なりに告白したつもりだが 」
「 確かに貴方なりでしょうが……。全く、いいですか 」
手を止めた湊は、俺に向き合うように片膝を付いてしゃがみ込むと、こっちを真剣な眼差しで見上げ、自らの手元に視線をやる。
「 貴方は前々から知って、其れなりに好意があったとしても…向こうは、約1ヶ月前に会ったばかり、ましては貴方に好意を抱く前に、やっと貴方という存在に慣れた頃に、上から目線で幸せにしてやる。とか言われてみてくださいよ。絶対に嫌でしょう 」
「 ………いいじゃないか、幸せにしてやるのは事実なんだ 」
「 ほっっっとバカですねぇ~! 」
「 …………は? 」
飽きれる様に盛大な溜息を付いた湊の言葉に、何が馬鹿なのか全く分からず、頭の中が真っ白になった。
「 いいですか。恋愛は、その場限り、両者が自己満足に楽しければ続きますが、結婚と言うのはお互いに支え合い、尊重し合い、愛し合うものです。何方か一方的に与えるのは…それは愛情ではなく、押し付けです 」
「 押し付け……? 」
「 えぇ。幸せにしてやる…それは正直、一人で生きていけないペットなら言っても良いかも知れませんが…。生涯を共にする…パートナーとなる相手に言うには、少し違いますよ 」
「 じゃ、なんて…言えばよかったんだ? 」
俺は、恋愛って言うものを知らない。
ずっと仕事の事ばかりを考え、金目当てでやって来る女に興味は無かった。
それより、一生懸命に仕事をして、頑張って暮らしていた麗菜を見てる方が、マシだと思ったんだ。
だから彼女を幸せにしてやりたかった。
それは、湊も同じだろうに…
何故それが違うっていうんだ。
「 本当は…御自身で答えを見つけて欲しいんですが…一生無理だと思うので、今回ばかりは伝えます 」
「 ………嗚呼…? 」
俺には無理、と断言した湊に、そんな難しい事なのかと傾げると、彼は告げた。
「 一緒に幸せになろう。って言うんですよ 」
「 一緒に…? 」
「 えぇ、共に支え合い…共に幸せになろう。それが、パートナーになる人への、告白になります 」
湊の言葉に、俺は上体を起こし軽く首を振った。
「 共に支え合う?俺にはそんなもの必要はない。幸せだって、彼女を幸せにしてやりたいからここに連れて来たんだろ 」
「 はぁー………… 」
「 御前もそう言ってたじゃないか、それなのに幸せにしてやるって事が悪いなら、如何しろと言うんだ?どれだけ貢げばいい?何を買い与えればいい?如何したら彼女が振り向いてくれる!? 」
湊の言葉が理解出来ず、少しムキになって告げると、溜息を吐いていた彼の視線は、冷たく俺に突き刺さった。
「 私共は…少々、貴方を甘やかし過ぎましたね 」
「 はっ……? 」
「 分かりました。私共は、麗菜様のお世話は致しますが、貴方に対しては何もしません。共に支え合う必要が無いと仰るなら…どうぞ、炊事洗濯家事。全て行って見て下さい 」
「 何言って…… 」
「 どうぞ、ご勝手に 」
立ち上がった湊は、片付けようと纏めていた瓶を机に置き直すと、困惑してる俺を余所に、リビングを離れた。
「 ちょ、待て…湊!!御前等は使用人だろ? 」
「 そう言えば有給休暇を頂いたことがありませんね。2週間程、全ての使用人に頂きます 」
「 ……は? 」
「 なので、頑張って下さい。大切な娘を傷付けた男に、関わりたくないので 」
俺の言葉を聞く前に、湊は言うだけ言って態とらしく音を立て、玄関を閉めて出て行った。
「 全ての使用人が、有給休暇を得るなら…俺に何を食えと?まさか……作れと?いや、金はある。シェフを呼べばいい。よし、食事に関しては問題なさそうだが…なら、片付けや洗濯か?そんなもの…俺一人でも… 」
そうだ、麗菜に言ったじゃないか。
社長になる前は、ごく普通の学生だったと…。
それを思い出してやればいいんだ。
リビングへと戻り、ローテーブルの上にある瓶をキッチンのシンクに置き、ゴミを全てゴミ箱へと突っ込み、朝の着替えを持って洗濯機の前へと立った。
「 ……何処を押せばいいんだ?洗濯機 使い方で調べるか…は?柔軟剤?なんだそれ…てか、そんなもんどこにあるんだ… 」
ここにあるのは、形だけの洗濯機。
普段、着替え等の洗い物は全て、湊達が何処かに持って行っていたのを知っている。
なら、この洗濯機を使うには、柔軟剤やらを買う必要があるのか?
「 使用人に電話して洗剤を買いに行かせ………って繋がらないし…。はぁ、洗濯は…まだ少ないからいい。他の事…… 」
買いに行く気にもなれず、リビングへと戻ると、何故か散らかったように見える部屋に疑問を抱く。
それよりも、静まり返ってることに違和感を覚えた。
一人で暮らしてるはずだが、何かあれば使用人を呼び、告げていたのを思い出すと、
それが無い日は…もしかすれば初めてなんじゃないか。
幼い頃から、父が雇っていた使用人が側にいたし、実家にいる時は母が何かしらしてくれていた。
「 俺は…一般家庭の育ちじゃないのか?だが…高校は普通の、普通ってなんだ?俺の周りにいた奴等…全員親が、上級階級の奴等じゃ無かったか…? 」
親の会社を継ぐ為、マナーとビジネスを叩き込まれた学校だった気がする。
考えれば考える程に、自身に呆れてくる。
「 何が自立だ。企業を設立しただけで、生活面は自立してないじゃないか…。共に支え合うってなんだ…共に幸せになるってなんだ…。俺が幸せにしてやるってダメなのか…。くっ、そ…分かんねぇな…… 」
考えれば考える程に、頭が上手く働かなくなる。
思考を放棄するように、ソファに横たわって呆然と天井を眺めた。
どれだけの時間、考えていたのか知らないが、
気付いた頃には眠っていた。
そして、言葉通り。
俺の家に、食事を届けに来る使用人は存在せず、空腹の胃を満たすように、部屋にあった菓子などを食って空腹を誤魔化した。
「 ……ゴミってどうやって捨てるんだ 」
溢れ返ったゴミ箱を眺め、検索する気にもなれず、テーブルに袋を置き去りにし、風呂へと入った。
「 着替えを準備する奴もいないんだな…。はぁ…寝室まで取りに行かなきゃいけないのか… 」
風呂から上がり、全裸のまま寝室に行きタンスを開く。
「 どれが寝間着だ?適当に、薄いやつでいいか…… 」
経った一日なのに、俺がシャワーに行くと言った後湊や他の執事が" 着替えを置いておきますね "と言っていた言葉を聞きたくなる。
永年当たり前の日々だったが…。
風呂上がりの着替えを準備して貰うのは、普通じゃないのか。
上下チグハグの服を着て、ベッドに横になっては眠りについた。
最近、朝の4時半に起きる癖がついた為に、目を覚ましたが…。
彼女が来ることはなかった。
そして、出勤前に起こしに来る使用人もいなかった為に、俺は完全に寝過ごしたんだ。
此処に来たのが麗菜や湊でもなく、下の階で出勤した秘書なんて…。
「 何時だと思っているんですか!?さっさとスーツを着て、出勤してください!今日は午後からの会議と… 」
「 …スーツの着方が、分からないんだ 」
「 は?貴方はそれでも…社会人ですか?今まで如何やって着ていたんですか?まさか…赤子みたいに使用人に着せて貰っていたんですか? 」
「 そのまさか、なら…どうする? 」
「 ………幻滅しますね 」
だよな……と言う言葉を呟き、スーツ一つ着れない以前に、麗菜が好きだと言った髪型すら出来ない事に、自身でも呆れる。
あの髪型は、麗菜に会う前に使用人達がセットしたものだ。
この方が見栄えかよくなると…
格好良く見えるからきっと喜ばれると…。
そう言いながら弄られていたから、気にしてなかったが…。
直毛である俺の髪は、イジらない限りキモい男みたいにサラサラの髪なんだな…。
「 取り敢えず…時間が無いので、今日は着せますけど、私は秘書であって使用人ではありませんからね 」
「 嗚呼…すまない 」
「 謝るなら、喧嘩した使用人に謝ってください。そしてさっさと元の生活に戻ってください。自分は何も出来なかった。と反省したのを言えばよろしいのでは? 」
「 多分だが…それだけじゃ許してもらえないだろうな。本当の答えを…俺が自覚して知るまで、許してはくれないだろうな 」
湊は頑固なところがあるし、彼奴が執事長だから、他の執事やメイドは命令を聞く。
だからこそ、謝ればいいという簡単な理由ではない事は察しがつく。
もしそれで許してもらえるなら、彼奴は俺が寝過ごしたと知った時点で、呆れながらも文句を言って、手伝いに来るはずだ。
それがない時点で…相当、本気だ。
「( 共に支え合い、共に幸せになろう。その意味を知る必要があるのか…。確かに答えを聞いたとこで、俺があの場で…麗菜に言えるわけ無かったな…。意味が分からない… )」
その問題に直面しながら、俺は会社に向かった。
仕事はまともに出来るのに、帰宅してからはボロボロだった。
すぐに部屋はゴミで溢れ、菓子やデリバリーでは、満たされない腹に違和感を覚え、肌も荒れていく。
「( こんな姿を、彼女に見せれるわけがない…。だが…これが本来の俺なんだろう。何も出来ない…赤子同然のおじさんだ… )」
酷く辛そうな顔をして、頭を下げて告げた彼女の言動を見て、俺は" 焦り過ぎた "と言うのを自覚した。
「 はぁー……やらかした…… 」
「 でしょうね 」
麗菜と交代するように入って来た湊は、予定していた昼食の準備を止め、ローテーブルの上に散らかったゴミや空の瓶を片付けながら俺の言葉に、頷く。
「 エレベーターですれ違った時、泣きそうな顔をしてましたよ。私達が考えた、距離を縮めるなら、室内デート作戦。…失敗したんですね? 」
泣きそうな顔をさせてしまった事に、本当に申し訳なく思う。
そんなつもりでは無かった…。
湊の言葉が、余り耳に入って来ないまま、
自分の気持ちを呟く。
「 途中迄はいい雰囲気だった…。だが…妻にしたいと言う気持ちが先走って、妻になって欲しいと言ったら…。無理だと言われた… 」
「 ……伝えたのですか? 」
「 嗚呼……。俺が幸せにしてやるから…って、君を愛したい。側で笑っていて欲しいと…そう言ったら、自分より相応しい人が居るからと断られた 」
正直、断られるとは思っていなかったから
あんなにもきっぱり拒絶された事に、ショックがデカい。
数回目の溜息を付き、葡萄ジュースをグラスに注ぎ、酒に見立てて飲み干すと、片付けていた湊の手は止まった。
「 当たり前でしょう。そんな言い方だと、誰も断りますよ。よっぽどのお金目当てな奴以外は 」
「 そう言うものなのか?俺は、俺なりに告白したつもりだが 」
「 確かに貴方なりでしょうが……。全く、いいですか 」
手を止めた湊は、俺に向き合うように片膝を付いてしゃがみ込むと、こっちを真剣な眼差しで見上げ、自らの手元に視線をやる。
「 貴方は前々から知って、其れなりに好意があったとしても…向こうは、約1ヶ月前に会ったばかり、ましては貴方に好意を抱く前に、やっと貴方という存在に慣れた頃に、上から目線で幸せにしてやる。とか言われてみてくださいよ。絶対に嫌でしょう 」
「 ………いいじゃないか、幸せにしてやるのは事実なんだ 」
「 ほっっっとバカですねぇ~! 」
「 …………は? 」
飽きれる様に盛大な溜息を付いた湊の言葉に、何が馬鹿なのか全く分からず、頭の中が真っ白になった。
「 いいですか。恋愛は、その場限り、両者が自己満足に楽しければ続きますが、結婚と言うのはお互いに支え合い、尊重し合い、愛し合うものです。何方か一方的に与えるのは…それは愛情ではなく、押し付けです 」
「 押し付け……? 」
「 えぇ。幸せにしてやる…それは正直、一人で生きていけないペットなら言っても良いかも知れませんが…。生涯を共にする…パートナーとなる相手に言うには、少し違いますよ 」
「 じゃ、なんて…言えばよかったんだ? 」
俺は、恋愛って言うものを知らない。
ずっと仕事の事ばかりを考え、金目当てでやって来る女に興味は無かった。
それより、一生懸命に仕事をして、頑張って暮らしていた麗菜を見てる方が、マシだと思ったんだ。
だから彼女を幸せにしてやりたかった。
それは、湊も同じだろうに…
何故それが違うっていうんだ。
「 本当は…御自身で答えを見つけて欲しいんですが…一生無理だと思うので、今回ばかりは伝えます 」
「 ………嗚呼…? 」
俺には無理、と断言した湊に、そんな難しい事なのかと傾げると、彼は告げた。
「 一緒に幸せになろう。って言うんですよ 」
「 一緒に…? 」
「 えぇ、共に支え合い…共に幸せになろう。それが、パートナーになる人への、告白になります 」
湊の言葉に、俺は上体を起こし軽く首を振った。
「 共に支え合う?俺にはそんなもの必要はない。幸せだって、彼女を幸せにしてやりたいからここに連れて来たんだろ 」
「 はぁー………… 」
「 御前もそう言ってたじゃないか、それなのに幸せにしてやるって事が悪いなら、如何しろと言うんだ?どれだけ貢げばいい?何を買い与えればいい?如何したら彼女が振り向いてくれる!? 」
湊の言葉が理解出来ず、少しムキになって告げると、溜息を吐いていた彼の視線は、冷たく俺に突き刺さった。
「 私共は…少々、貴方を甘やかし過ぎましたね 」
「 はっ……? 」
「 分かりました。私共は、麗菜様のお世話は致しますが、貴方に対しては何もしません。共に支え合う必要が無いと仰るなら…どうぞ、炊事洗濯家事。全て行って見て下さい 」
「 何言って…… 」
「 どうぞ、ご勝手に 」
立ち上がった湊は、片付けようと纏めていた瓶を机に置き直すと、困惑してる俺を余所に、リビングを離れた。
「 ちょ、待て…湊!!御前等は使用人だろ? 」
「 そう言えば有給休暇を頂いたことがありませんね。2週間程、全ての使用人に頂きます 」
「 ……は? 」
「 なので、頑張って下さい。大切な娘を傷付けた男に、関わりたくないので 」
俺の言葉を聞く前に、湊は言うだけ言って態とらしく音を立て、玄関を閉めて出て行った。
「 全ての使用人が、有給休暇を得るなら…俺に何を食えと?まさか……作れと?いや、金はある。シェフを呼べばいい。よし、食事に関しては問題なさそうだが…なら、片付けや洗濯か?そんなもの…俺一人でも… 」
そうだ、麗菜に言ったじゃないか。
社長になる前は、ごく普通の学生だったと…。
それを思い出してやればいいんだ。
リビングへと戻り、ローテーブルの上にある瓶をキッチンのシンクに置き、ゴミを全てゴミ箱へと突っ込み、朝の着替えを持って洗濯機の前へと立った。
「 ……何処を押せばいいんだ?洗濯機 使い方で調べるか…は?柔軟剤?なんだそれ…てか、そんなもんどこにあるんだ… 」
ここにあるのは、形だけの洗濯機。
普段、着替え等の洗い物は全て、湊達が何処かに持って行っていたのを知っている。
なら、この洗濯機を使うには、柔軟剤やらを買う必要があるのか?
「 使用人に電話して洗剤を買いに行かせ………って繋がらないし…。はぁ、洗濯は…まだ少ないからいい。他の事…… 」
買いに行く気にもなれず、リビングへと戻ると、何故か散らかったように見える部屋に疑問を抱く。
それよりも、静まり返ってることに違和感を覚えた。
一人で暮らしてるはずだが、何かあれば使用人を呼び、告げていたのを思い出すと、
それが無い日は…もしかすれば初めてなんじゃないか。
幼い頃から、父が雇っていた使用人が側にいたし、実家にいる時は母が何かしらしてくれていた。
「 俺は…一般家庭の育ちじゃないのか?だが…高校は普通の、普通ってなんだ?俺の周りにいた奴等…全員親が、上級階級の奴等じゃ無かったか…? 」
親の会社を継ぐ為、マナーとビジネスを叩き込まれた学校だった気がする。
考えれば考える程に、自身に呆れてくる。
「 何が自立だ。企業を設立しただけで、生活面は自立してないじゃないか…。共に支え合うってなんだ…共に幸せになるってなんだ…。俺が幸せにしてやるってダメなのか…。くっ、そ…分かんねぇな…… 」
考えれば考える程に、頭が上手く働かなくなる。
思考を放棄するように、ソファに横たわって呆然と天井を眺めた。
どれだけの時間、考えていたのか知らないが、
気付いた頃には眠っていた。
そして、言葉通り。
俺の家に、食事を届けに来る使用人は存在せず、空腹の胃を満たすように、部屋にあった菓子などを食って空腹を誤魔化した。
「 ……ゴミってどうやって捨てるんだ 」
溢れ返ったゴミ箱を眺め、検索する気にもなれず、テーブルに袋を置き去りにし、風呂へと入った。
「 着替えを準備する奴もいないんだな…。はぁ…寝室まで取りに行かなきゃいけないのか… 」
風呂から上がり、全裸のまま寝室に行きタンスを開く。
「 どれが寝間着だ?適当に、薄いやつでいいか…… 」
経った一日なのに、俺がシャワーに行くと言った後湊や他の執事が" 着替えを置いておきますね "と言っていた言葉を聞きたくなる。
永年当たり前の日々だったが…。
風呂上がりの着替えを準備して貰うのは、普通じゃないのか。
上下チグハグの服を着て、ベッドに横になっては眠りについた。
最近、朝の4時半に起きる癖がついた為に、目を覚ましたが…。
彼女が来ることはなかった。
そして、出勤前に起こしに来る使用人もいなかった為に、俺は完全に寝過ごしたんだ。
此処に来たのが麗菜や湊でもなく、下の階で出勤した秘書なんて…。
「 何時だと思っているんですか!?さっさとスーツを着て、出勤してください!今日は午後からの会議と… 」
「 …スーツの着方が、分からないんだ 」
「 は?貴方はそれでも…社会人ですか?今まで如何やって着ていたんですか?まさか…赤子みたいに使用人に着せて貰っていたんですか? 」
「 そのまさか、なら…どうする? 」
「 ………幻滅しますね 」
だよな……と言う言葉を呟き、スーツ一つ着れない以前に、麗菜が好きだと言った髪型すら出来ない事に、自身でも呆れる。
あの髪型は、麗菜に会う前に使用人達がセットしたものだ。
この方が見栄えかよくなると…
格好良く見えるからきっと喜ばれると…。
そう言いながら弄られていたから、気にしてなかったが…。
直毛である俺の髪は、イジらない限りキモい男みたいにサラサラの髪なんだな…。
「 取り敢えず…時間が無いので、今日は着せますけど、私は秘書であって使用人ではありませんからね 」
「 嗚呼…すまない 」
「 謝るなら、喧嘩した使用人に謝ってください。そしてさっさと元の生活に戻ってください。自分は何も出来なかった。と反省したのを言えばよろしいのでは? 」
「 多分だが…それだけじゃ許してもらえないだろうな。本当の答えを…俺が自覚して知るまで、許してはくれないだろうな 」
湊は頑固なところがあるし、彼奴が執事長だから、他の執事やメイドは命令を聞く。
だからこそ、謝ればいいという簡単な理由ではない事は察しがつく。
もしそれで許してもらえるなら、彼奴は俺が寝過ごしたと知った時点で、呆れながらも文句を言って、手伝いに来るはずだ。
それがない時点で…相当、本気だ。
「( 共に支え合い、共に幸せになろう。その意味を知る必要があるのか…。確かに答えを聞いたとこで、俺があの場で…麗菜に言えるわけ無かったな…。意味が分からない… )」
その問題に直面しながら、俺は会社に向かった。
仕事はまともに出来るのに、帰宅してからはボロボロだった。
すぐに部屋はゴミで溢れ、菓子やデリバリーでは、満たされない腹に違和感を覚え、肌も荒れていく。
「( こんな姿を、彼女に見せれるわけがない…。だが…これが本来の俺なんだろう。何も出来ない…赤子同然のおじさんだ… )」
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