女王蜂転生〜 色彩の書 〜

獅月 クロ

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別ルート

二十二話 知りたくない事実

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~ サタン 視点 ~


「 私が衰えてるだと……!?ふざけるな!! 」

「 クロエ、落ち着いて…君は美しいよ 」

「 黙れ、黙れ!! 」

それは、ほんの二百年前

百年かけ俺は腹に子を宿していた、五五番目の子を……

これが最後の子だと、老婆になったクロエを見て誰もがそう思っていた
俺だけは、この世界にやって来てからずっと雄として傍にいたクロエを愛して、本当に好きだったからこそ、彼女が壊れる姿を見せたくは無かった

「 サタン様……もうクロエ様は永く有りません。それなのに、次の女王蜂は生まれて来なければ、この国は…… 」

「 分かってる、分かってるよ、ハク…… 」

彼等は女王蜂を産むことが出来なかったクロエを今か、今かと喰うタイミングを見ていた
彼女はそれを察してるからこそ気を荒げては辺りに八つ当たりすることが多かった

俺の腹は服の上から分かるほど膨れてはいるが、これが魔王クラスの雄ならば、彼等はクロエを喰らうだろ

それは本能として仕方ない
俺も一番最初に喰らっていい許可を貰っている唯一の“ お気に入り “だ
その事もあり、クロエが衰えようと俺が最初に喰わなければ彼等は手を出すことはない

だからこそ、さっさと俺が食えと言う視線には気付いている

「 分かってる?サタン様が、他の雄を近寄らせなければ、女王蜂は産まれたかもしれない……俺は、母には発情出来なかったが…… 」

「 えぇ、私は母親でも構いませんでした 」

彼等に性別の親も子も関係無い
繁殖をする為だけに、産まれてきてる雄ならば
女王蜂が若い頃に交尾すれば良かったと、今になって思うのだろ 
クロエが手を出した魔王クラスは、俺の子にはいない
元女王蜂の世代に産まれた俺を含めた雄達であり、若い雄は未だ未経験の者が多く
尚更、次の女王蜂を焦っていたのだ

ネイビーの言葉に、ハクもまた頷けば俺は一つの賭けをした

「 ……俺の腹にいる子を、人間界の雌に孕ませる。そうすれば、女王蜂(雌)が生まれる確率はあるだろう 」

「 なにを言って……。人間に生ませる!?魔物の子をですか!? 」

「 魔物の子は、生まれた瞬間から魔界の子だ。天界には行けず堕天する……死後、人間に与えられる選択肢が無くなります…… 」

ハクとネイビーは其々に、拒否したような言葉を掛ける

魔物の子を孕む女を探すことは容易いだろ
だが、その子供は魔界の子になり天界には行けず堕天して魔物になる
どんな姿に堕ち、醜い外見になっても、“雌“が生まれる確率が僅にあるのならば、俺はそれだけで良かった

「 ……俺は人間界に行く。戻るタイミングは分からないが、俺の娘が来たときには優しくしてあげてね 」

「 サタンが離れるなんて聞いたことが有りません!!女王蜂はあのような姿、魔界の王が離れれば…… 」

「 ハク、“女王蜂“が欲しいのならば……この城ぐらい、ネイビーと共に守ってくれ 」

「 っ……それが、サタン様のご命令ならば受け入れましょう…… 」

真面目で少し堅物なハクには、冷血だが、気に入った物には感情的になりやすいネイビーと共にいるのがあってるだろう

人間界の時間は、魔物にとってはほんの些細な時間
腹の子を“雌“として産み分ける為に、俺は魔法を使い、魔界の横にある餌用の人間界ではない

天界と魔界の間に存在する、“人間“だけの世界へと行くことにした
ハクとネイビー以外の魔物には「 少しの間、留守にするからクロエの相手よろしくね 」なんて言ってたから立ち去った

大きな魔方陣と共に、魔力の半分を使い移動すれば目を開けた時には知らない世界が広がっていた

人間界にいた頃とは全く違う、
三千年近く歴史が動いた、この世界は俺の知らない物が多かった

「 此所が、人間界か…… 」

「 なにあの人、コスプレ? 」

「 妊婦コス?笑える 」

「 ………… 」  

この世界では俺の姿は可笑しいらしい、よく目につくスーツ姿の男達を見れば同じ服装にしては腹の膨らみを隠し、過ごした

「 出来れば綺麗な女がいいな……。雌を産めそうな女性らしく、美しい女…… 」

若い頃のクロエには及ばないだろうが、それでも幾日も歩いては女を探した
魔物は数日食わなくても生きていける為に、そこまで苦ではなく、歩き続けて探せば目についた長い黒髪の女性を見掛け、脚を動かしていた

「 御前…… 」

「 な、なに!? 」

「 顔に惚れた、俺の子を産め 」

「 ……はぁ!? 」

それが、一番目の女である美月(みづき)と出会った時だ 
流石に有り得ないと一発目はぶっ叩かれたが、その日から何度も会社という前に場所に通っては口説いていれば、彼女は告げた

「 私、ちゃんと働いてる人がいいの。何処に働いてるの? 」 

「 ……働く、俺が働くわけないよ?働き蜂ではない。只の雄だよ 」

「 ふはっ、そりゃ男なんだから雄でしょ?それとも、獣なの? 」

「 ……ケダモノ、ではないが…… 」

何度か会話し、デートと呼ばれるものもした
金は全て彼女が払ってくれていたが、それでも向けられる笑顔を見ていればこの世界も悪くないと思ったんだよ

何度目かのデートで、ホテルと呼ばれる場所に誘われ“行為“だと分かれば、卵を移動させることにした

「 ……避妊の仕方ぐらい、分かるわよね? 」

「 嗚呼、精子を放つことはしないから…… 」

「 フフッ……じゃ、いいわよ 」

する必要の無い事だと言う言葉は、口付けと共に塞がれ、求めるままに流され行為を行い
挿入した後で卵の移動を思い出し、魔法を使い腹へと移した

「 ぁ、なにを……したの……!? 」

「 御前は、俺の子を産む権利を与えられた。女の子を産め、強く美しい…… 」

「 最低 」

「 いっ……!! 」

二度目にぶっ叩かれた事に、魔界だと殺していたと思った

卵を孕ませて、俺の役目は終わった
彼女に会うことも無くなり、何処に行こうかなにをしようかとぶらぶら気がすむまで人間界の遊びを楽しんで、知らず知らず増えていく借金といつの間にか半年が経過した頃に、彼女の元に行く

家は知ってた為に、鍵が閉まってたが魔法で鍵を開け、部屋に入り相変わらず汚い部屋を見渡した後に、僅に聞こえた声にリビングへと脚を向ければ、そこには子供用のベッドで起きていた、赤子を見掛けた

「 ……産まれていたか…どれ。性別は……ほぅ、雌か……。なら、今すぐ死んで魔界に行け 」

一旦、この世にある命を終らせる必要がある
片手を向け、鋭い爪を伸ばせば背後に聞こえた袋を落とす音に視線をやる

「 なにを、してるの……なにを!! 」

「 っ……なんだ? 」

振り返る時には、すでに身体を押され赤子を抱いた彼女は俺へと怒鳴ってきた

「 今更、なにをしに戻ってきたの!?貴方のせいで借金返済をしろとか、仕事はクビになるし、この子は半年もたたずに生まれてきた……貴方はなんなの……なんで……出逢って十年も経つのに、服装も容姿は変わらないし…… 」

「 一度に多く聞かないでくれ、頭が痛い…… 」

「 ……っ、バケモノ!!この子も、アンタも、バケモノだわ!! 」

「 あ? 」

 俺が百年かけて腹にいれて大切にしていた子をバケモノと呼び、たかが半年で生まれただけでパニックを起こすようなヒステリックな女にイラッとしちゃった

「 ……腹減ってるんだ、そう怒るな……喰いたくなる 」

「 いやぁぁああっ!! 」

此方に来てまともな肉を食わなかったからこそ、女から赤子を奪った後に、適当に置き彼女の喉を引き裂き、気付いた時には全て喰らっていた 

「 成長のさせかたも分からないとは…… 」

血の血痕だけが残るなかで、赤子に触れ血のついた指を舐めさせては、吸い付く様子を見て思った

「 ……仕方ないなぁ~、俺が育てよう。可愛い可愛い、女王蜂……君は“ルイ“だ 」

この子が歩けるようになるまで育てることにしよう 直ぐに殺しても、俺が向こうに戻れなければ意味がない
きっと誰だこの赤子は!?で終わって食われるに違いない、だから育てようとした矢先に警察という連中がやって来た

「 殺人容疑で逮捕する!! 」

「 ……は?待て、俺の子を返して!! 」

「 施設に預ける。御前は大人しく刑務所に入れ!! 」

ルイは奪われ、サタンである俺が刑務所に入った
流石に、裁判を待つ気もなくて壁やら破壊して脱獄しては、気配と匂いを頼りにルイを探した

「 俺って人間界で頑張ってたんだ 」

『 やっぱり死んでくれ 』


~ ルイ視点 ~

常識外れのサタンが人間界で好き勝手してた?
で、俺は里親が出来る度にコイツは喰ってた?

絶対に、堕天したのってコイツのせいだと思うんだ

「 十二回殺人容疑で逮捕され、十二回脱獄してる 」

『 殺人容疑というか、もう凶悪犯罪者だろ 』

「 安心して、パトカーの音が聞こえたら毎回姿を変えていた。ルイちゃんの前ではこの姿だよ? 」

『 確信犯じゃねぇか 』

「 そして、小学生の頃に、俺はパトカーと事故って、気づいたら魔界に戻ってた 」

『 死んだんだな、御愁傷様 』

ちゃんと骨を骨壺に入れたのは覚えてるから、一回こっちで死んだんだな

母さん、今ならこの人がどれだけ死んで良かった相手だと分かる
寧ろ、よくこの人の為に葬儀までしてくれたよな

顔が良かったから置いてたのかも知れないが、それでも誰一人として泣けなかった理由も今なら分かる

人を喰っては殺して、捕まって、脱獄を繰り返したような奴に涙の一粒も必要ない

『 というか……魔界に堕ちた原因って御前のせいか!!死ね!! 』

「 ぐっ、だって……女王蜂、欲しかったんだもん…… 」

『 こっちじゃ、男の姿なんだけど!? 』

「 それはきっと……俺の腹にいるとき、男の子だったから……元の姿に戻ったんだよ……っ!! 」

『 やっぱり死ね!! 』

首を絞めたけど、サタンはそう簡単に死にはしなかった
俺もまた、本気では無かったから直ぐに手を離したけど
サタンの腹の中にいた、子が次は父親を孕ませてるって……

前世は父親だった、なんて言えなくなるぐらい血筋が近いじゃねぇか……ネイビーとも、ハクともだ……

馬鹿なことを言ったサタンの腹を、剣があったら突き刺していた

俺の生まれも育ちもグシャグシャだな……
なら、やっぱり女王蜂になるために産まれたのか……

最悪だな……後で、アランに謝ろ

真面目に、知りたくなかった事実に死にたくなった

クロエ……あのババァなんて思ってたけど、母親だなんて……

ちょっと、心の中で謝っといた
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