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しおりを挟む夕暮れが長くなる夏
もう19時だと言うのに、明るくてそれでも昼より気温が下がったようにも感じる
こっち方面のスーパーは知らないために、彼女の行く方へと何気無く着いていけば話すのはどうでもいい他愛ない話
それが何故か悪くないと思う
『 しょーたってどっち似なんだ?母親?父親?つーか、家族は? 』
「 俺は母親似だと言われてるよ。両親は離婚というか....別居してるから、俺は選んだ学校に近い兄の家に居候してる感じ 」
『 母親似な....綺麗な顔立ちしてんもん、ん?ってことは他に兄弟いるの? 』
「 そうかな?まぁ、弟はまだ中学生だし母親の家にいるよ....会っても仲良くないから、余り会ってないけど 」
クラスメートの奴にも言わなかった事を何故か話してしまう
それだけ彼女には“ 俺 “の事を知って欲しいのかも知れない
『 へぇ....ん?どうした? 』
いつの間にか立ち止まった俺に、彼女は少し前で歩いてた脚を止め俺の方へと顔を向けた
夕方の涼しい風が頬を靡き、揺らす金色の髪を見て改めて俺とは住む世界が違うと分かるほど、綺麗な子なんだ
それでも人と関わりを極めて避けていた俺が、自分を知って欲しいのは何故なんだろう....
「 こんな、しょうもない話でも聞いてくれるのは嬉しいよ 」
『 ん?改めてなんだ? 』
「 ....いや、なんとなく.... 」
改めて、なのだろうか
ずっとパンツの事しか聞いてこなかった彼女が俺の家族や兄弟の事を知りたいと少しでも思ってくれる、そんな些細な変化が嬉しいのかも知れない
「 んん、何でもない。俺の兄弟は似てるよー兄の敦士はタレ目だけど、雰囲気とかは 」
『 あー、散髪して貰ったとき思った。似たなかったから兄弟とは気付かなかったけど雰囲気は分かる 』
「 ははっ、やっぱり? 」
俺を怖いと思わない君に、俺は少しだけ助けられているんだよ
「 ....お菓子は500円迄です 」
『 えーー、ポテチー 』
「 どんだけ食べるの!? 」
買い物へとやって来れば、俺がカートを押して色々買ってる間に彼女はかご一杯のお菓子を持ってきた
それも全部袋菓子だから、開けたら残しそうなのは目に見えて拒否していく
『 しょーたと完徹する為に? 』
「 は?俺、晩御飯作ったら帰るよ? 」
『 えー、泊まろうぜ。ポケやったり無双とか.... 』
「 いやいや、泊まるなんて君の父親に殺される 」
そう、なんで泊まる話になってるだろ
父親が只でさえ釘を打たれた感じがするのに、付き合ってもない男女が同じ家で過ごすのには抵抗がある
寧ろ、その常識は彼女に有ればいいのに....
本人無自覚のよう頬を膨らませて明らかに怒ってるじゃないか、俺が怒りたい位なのに
『 なんで、お父さん関係ない 』
「 大有りです。取り敢えずお菓子は500円まで....というか5個迄ね 」
『 ケチ.... 』
なんとでも言えばいいと吐き出してから、カートを押す俺は別の物を選びに行った
仕方なくお菓子を片付け、ちゃんと5個だけ持ってきた彼女をまるで子供を相手するように褒めながら会計へと向かった
彼女の持ってきた黒いカードで支払いを終えてから、彼女は軽めの物を持ち俺は両手にビニール袋を持ち来た道を帰る
『 お父さんとも余り買い物に来ないから、新鮮だった。スーパー楽しかった! 』
「 余り一緒じゃ無いんだね? 」
『 ....そうだね 』
あれ、此は地雷だったかな?と思うぐらい彼女の表情は暗くなり来るときより日が落ちた空を見上げてから俺へと顔を向け、眉を下げて不器用に笑った
『 お父さんは忙しい人だから....お母さんが早くに亡くなってからずっと男手一つで育児と仕事をして来たから....余り一緒にいれなくて。それでも出来るだけ一緒に居てくれるんだけど.... 』
「 ん? 」
聞かない方がいいのに聞いてしまいたくなる
それはきっと、俺の事を知って欲しいと願って話してみたくなるのと同じで
少しでも彼女の事を知りたいと思うから、聞きたいのだろ
俺は、パンツに興味のある彼女の他の部分を知りたくて仕方無いんだ
『 お父さん....たまに私とお母さんを重ねるとき合ってさ。それが少しだけ....寂しいなって.... 』
それは、俺が兄貴と俺の価値を比べられた時とは違って
弟が俺を敵視するのもまた違った、
彼女なりの寂しい部分だと知って
何故か、胸はきゅっと締め付けられた
この感覚が“ 同情 “なら俺は酷い奴になるだろうから、それに問い掛ける言葉を見付けようと何故か必死だった
『 ごめん、変なこと言った。あー、今日の晩御飯なにかなー 』
「 ....ハンバーガだよ、自信ある 」
『 それは楽しみ! 』
俺は、もう少し人と接していれば良かったと思う
こんな時に投げ掛ける言葉が何一つ見付からなかった
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