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一章 聖獣への道のり編

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何気無く魔法か知らないが、俺の身体を乾かしてくれたのが分かるほど 
柔らかな空気に包まれたら、濡れて重かった身体は乾き軽くなる

「 やぁ、ロッサ。ミュー、ルナール。この子は氷牙だよ 」

「「 コウガ? 」」

『 えっ、本名ってダメなんじゃ…? 』

サラッと真名を教えた事に驚けば、彼はにこやかに笑ってから片手を頬に当て恐らく可愛いげに首を傾げた

「 そんな事言ったけ? 」

『 簡単には教えれないって 』

「 それは地上の人間とかだよね?此処は神の庭、そして君達は私の子供。つまり兄弟なのだよ。兄弟の名前を知らないのは可笑しいだろ? 」

『 ……… 』

あれか、聖獣同士ならそんな事は無いって言いたいんだな
神様って本当に自分勝手で、必要な事しか告げないんだなって思った

『 分かった、此処ではコウガって名乗ればいいんだな 』

「 うむ、そういうこと 」

改めて名乗る場所が其々違うことに
面倒だなって思う

「 いつか強くなれば、新しい通り名が与えられるさ 」

「 イグニールとか! 」

「 クラーケンとか! 」

『( 聞き覚えはあるが、それは聖獣なのか…… )』

クラーケンに至っては聖獣というより魔物とかなんだが、それも強いからこそ名前が付いたのだろ

「 それまで頑張って 」

『 また消えた…… 』

消えては現れ、そして好きなことだけ言って去る
まるで俺の両親みたいだと思う
必要なときしか帰ってこないような両親と被る神様ってなんだろうか

「 あの人はみーんなを見てるから忙しいの 」

「 うん!会えたのがラッキー! 」

『 そう言うものなのか…… 』

「 僕もぉ、何百年ぶりに見たよぉー? 」

何百年ぶりに見て成長が終わってないドラゴンってなんだ……
俺はその貴重な人を既に三回は見てるんだが
それはまた違うのかと眉間にシワを寄せていれば
二頭は顔を合わせてから俺へと視線を戻す

『 ん? 』

「 私、呼ばれたから行くね! 」

「 ばいばーい!コウガ、有名になる日を楽しみにしてるよ! 」

『 えっ?はっ……? 』

「 ばいばぁーい 」

尾を振った二頭に急になんで御別れするのか疑問に思えば、其々に僅かに光加減が違う魔方陣が現れた
直ぐにその下へと入っていき、消えた頃には2頭は目の前にはいない

『 えっ、彼奴等何処に行ったんだ!? 』

「 召喚されたんだよぉ。新しい主に呼ばれたんだろうねぇ 」

『 主…… 』

「 波長ってのが有るみたいだからぁ、必ず呼んだ人と似た属性なんだぁ 」

ノアが俺を呼べたのは、俺がノアと同じ波長だったと言うことか
確かに傍にいて嫌な気は何一つ無かった

主だからって理由でも分かる気はするが、それでも今の魔方陣を見れば、他の奴が呼べるわけではないと知る

「 だからぁ、ブリザードとか呼ぶのは勇者とか。すごーく強い人になるんだぁ 」

『 強い人か…… 』

強さを求めるのなら、強い聖獣を呼びたいのは分かる
あのモブ王子が俺を小汚ない子犬と言ったように、現れたのが俺のような子犬なら幻滅するだろう
まだノアのように気にならない子供相手なら、俺はいいのだろ

『 じゃ、俺は、小さいから子供に呼ばれてる方がいい…… 』

その場から離れて、何処か落ち着ける場所でも探そうと歩き出せばロッサもまたついてきた

「 うーん、子供とは限らないと思うよぉ? 」

『 なんでだ? 』

「 だって勇者でもブリザード呼べない人いるし、何て言うのかなぁ…… 」

何故、ついてくるのか分からないが俺の知ってる事を聞かせてくれるなら丁度いいと見上げれば
二足歩行で歩いてる彼は、小さな手を動かし爪で頬を掻きながら考える素振りを見せた

どうやら、上手い言葉が思い付かない様子

「 力だっけ、んー、元々あるぅ…… 」

『 魔力って奴か? 』

「 そう、それ!よく知ってるねぇ! 」

『 ちょっと聞いてな…… 』

ノアじゃない、嫌な奴から聞いた言葉の意味を知るなんて思わなかった

歩きながら辺りを見れば、当たり前の様に魔方陣が現れて姿を消すものを見掛ける
人間の住む世界が広いように、召喚を試みるものも多いのだろう

「 魔力の量とか、質とかで決まるんだ。もしかしたらコウガを呼んだ人はとても強いかもしれない、それはコウガも強いってこと 」

『 強くはないだろ。まだ幼い子供だった…… 』

「 うーん。力を使いこなせてたら強かったかもよぉ~? 」

力を使いこなせてたら、それは俺にも言えたことだろ
弱かったからこそ守れなかった
俺に力があれば守れてたのに……

『 こんな子犬体型じゃなければ、人間の姿をしてたら…… 』

「 コウガは、人間の姿になりたいのぉ? 」 

『 いや、そんな事はないが…… 』

人間を止めて、獣としての生を生きようとして
また人間の姿を求めるのは可笑しいだろ
だが、子供の手を取れるほどの大きさになれば、俺は他に求めるものはない

『 ……俺は、守りたいだけだ 』

「 じゃ、強くなったらいいよぉ。聖獣の中には人の姿になれるのもいるし、俺も、その中の一人 」

『 えっ? 』

「 ふふ~ん 」

驚かないで、とばかりに自信気に笑った
ロッサは向き合えば辺りに火が現れ彼の身体を包み込んだ

ロッサもまた、火を司る聖獣なのか……?

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