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一章 聖獣への道のり編
06
しおりを挟む現状況を全く把握できて無い
何故かって?
「 フフンッ 」
『 …… 』
あのバカデカくて恐ろしいフェンリルに
咥えられて洞窟の奥にある大きな平たい石の寝床に連れて来られてから
ずーーと、巨体に似合う舌でベロンベロン身体中を舐め回されてたら、恐怖を通り越して放心状態になるものだ
雨で濡れてたはずなのに一度舐められただけで身体中は涎でベトベト
なのにそれが何度も繰り返されて俺の毛並みは、涎まみれ
清らかな聖獣だから平気、なんて理由を聞きたくない程に身体が気持ち悪い
逆立つ毛もなく、鳥になりそうな程に鳥肌がヤバい
狼に喰われそうな子兎の気分だが、もう怖いって言う事より気持ち悪いって感覚の方が強い
よく町やTVとかでも飼い主が犬に顔を舐め回されてるのは分かるが、俺の場合は全身だ
子犬でありフェンリルより遥かに小さいのが原因で、一舐めで全身って考えるなら分かる
だが、その頭から尻尾の先まで舐められてたら
子犬でも嫌だ
こういう場合、獣の子犬ならじゃれついて終わるのだろうが、俺の場合は中身が成人を経験した元人間だ、どう反応していいか分からん
舐めてる本人は尻尾をブンブン左右に振って、犬のように楽しそうに舐めてるが
俺は丸まった耳は無くなるほど、尻尾は伸ばされる度に腹へと縮まってる
だって、相手は洞窟とほぼ同じサイズ
それに比べて俺は子供が抱ける位の両手サイズの子犬
えっ、味見でもされてんの?俺を食べても美味しくないから、必死に回避する事を考えた
『 っ、あのさ…… 』
「 んー……なんだ? 」
俺が話し掛けたところでやっと舐めるのを止めてくれたフェンリルに視線を向け
恐る恐る聞く
『 もう、綺麗になったから平気だ…… 』
「 別に綺麗にしようと思っちゃいねぇよ? 」
『( じゃ、何してたんだよ!! )』
なんで疑問系で返してくるんだ
そりゃ涎まみれなのに綺麗にしようと思ってたと言われたら、逆に手加減しろって怒るが
もっと理解できない行動に身体を動かし向き合えばフェンリルはじっと見下げてくる
そして、言うことを諦めたように顔を背けた
「 可愛いものを、可愛い可愛いと舐めて、可愛がってただけだ。それ以外の理由はねぇよ 」
『 ……えっ 』
可愛いと思ってた子犬をビビらせて舐め回してたのか?
相当、頭が可笑しいんじゃないかコイツ
変な奴を見る目を向けていればフェンリルの頬は僅かに赤らんだ
可愛くもなんともないぞ
「 お、俺は狼が好きなんだ。特に子供がな!
だからあの馬面も子育てを任せたんだろが 」
『( 子育て好きには見えねぇよ…… )』
何言ってんの、コイツ
みたいな冷たい顔を向けていればフェンリルは赤らめた頬を止め
俺の方に視線を戻す
やっぱり鋭い瞳を向けられれば一瞬、恐怖でドキッとする
「 だが、御前は子供にしてはしっかりしてるな。生まれたてのはずじゃねぇのか? 」
『 ……そうらしいが、普通は違うのか? 』
「 当たり前だろ。舐めてたら喜んでるさ。御前はずーと怯えてた 」
『( 怯えてんの分かってるなら、止めてくれりゃいいのに…… )』
可笑しい、と首を捻るが
俺には御前の方がよっぽど可笑しいやつに見えて仕方ない
デカいし、俺の身体なんて飴サイズにもならないんじゃ無いかって位の体格差がある
『 当たり前だろ!お、大きいんだよ。御前は! 』
「 デカいだと? 」
『( あ、喰われるかも…… )』
ちょっと小さいなりの抵抗を見せて言えば
唸り声が洞窟に響き、身体を震わせた俺に
フェンリルはムスッとした様子の後、軽く鬣を揺らした
『 えっ…… 』
「 小さくなることぐらい出来る 」
一瞬で狼よりはデカいが、それでも獣サイズまでは小さくしたフェンリルに驚いた
あのサイズ感って、成長して強くなれば自由自在なのか……
ポカーンと呆気に取られていた俺に、フェンリルは鼻先を向け顔へと擦り当ててきた
『 ん…… 』
「 これなら怖くねぇか? 」
『 怖くない、かもしれん…… 』
同じ狼だし、これなら平気かも?とすり寄られるまま答えれば彼は口角を上げ笑った
じゃらっと重い鎖の動く音は聞こえ、相変わらずの身体にあった飾りは健在にしろ
怖さは減ってきた気もする
「 ははっ!そうか!!ならパパって呼んで良いぞ!! 」
『 却下 』
「 !? 」
ガーーンと分かりやすく落ち込んだフェンリルだが、パパって呼ぶのだけは避けたいし死んでも嫌だ
元人間としての記憶がどれだけ邪魔なものか
今なら分かる
消して貰えるときに消してた方がよかったんじゃ無いかって位に
人の時の思考やら記憶が邪魔をする
「 この俺が今までどれだけのチビを育ててきたか……。あぁ、可愛かったな…。彼奴等、会いに来てくれないが、元気だろうか…… 」
『( やべぇ、この人(狼)スゲェ~めんどくせぇ )』
背を向けて落ち込んでは時よりこっちを見てくる様子に、会いに来るんじゃ無かったと後悔するほどに面倒だった
4
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