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一章 聖獣への道のり編
07
しおりを挟むパパって呼ばなければ、いつまでも背中を向けてそうなフェンリルに
俺はどうしたものかと悩んだ
呼ばないといけないならこの洞窟を去る事だって平気だ
だが、元人間の性なのか
強い者は味方に付けた方がいいって言う思考が働き、分かってるのだが上手く言葉が出ない
狼としての知識と経験を学ぶなら
うってつけな相手だ
寧ろ、他に誰が居るなんて分からないからこそ
此処は素直に告げることにした
『 その……聞いてほしい 』
なんだ?とやっと此方へと顔を向けたフェンリルに
俺はベトベトの身体を拭く術を知ってないから
そのままの姿で言葉を繋げる
『 俺は……こんな子犬だが……じゃれかたも、この濡れた身体を乾かす方法も分からないんだ……。元人間だから、中身は……魂は……元人間の大人だった…… 』
変な事を言うだろうと、笑われるだろ
寧ろ騙したのか!と怒鳴られるかも知れない
だからこそペタリと耳を後ろに下げ
怒られる覚悟で言葉を告げれば、背を向けていたフェンリルは此方を向いた
動いたことでピクリと反射的に動く肩に、彼は優しく鼻先で顔へと触れた
『 っ…… 』
「 成り上がりか 」
成り上がり、ミューやルナールが言ってた言葉を思い出す
まるで俺が泣いてる様にも見えたのか、涙を拭くように頬を舐めたフェンリルは顔を離し
お座りしたまま俺に視線を落とした
「 希に只の獣や人間が神に近い、聖獣へと成り上がる場合がある。勿論、命を司る神の気紛れだ。だが、その気紛れでも魂は選ばれている 」
『 選ばれている? 』
「 なんの感情もねぇ、只の魂が新しい肉体を得るより。幾度となく転生した魂の方が聖獣として使えるってことだ 」
言ってる事がさっぱりと分からない
何もない場所から創られるのが聖獣じゃないのか
俺は偶々、あの神様が選んだだけで
粘土に命を吹き込み動かす程度、どんな魂も……
あ、いや……遊ぶなら感情豊かな方が見ていて飽きないか
『 感性ってやつ? 』
「 魂に刻まれた転生して得た記憶は、新しく創るより扱いやすい。教える必要がねぇんだからな 」
『 なんとなく分かる気はする…… 』
何故、赤ちゃんがハイハイをするのか、歩こうとするのか、声を発するのか
其は全て永い時を得て経験したDNAに刻まれた記憶と言う
「 分かったなら話を戻す。聖獣の数は限られている、必ず一定しかいねぇ。何故か分かるか? 」
『 沢山の人間が利用しないため……とか? 』
「 そうだ。神が落とした玩具だが、使い方によっちゃ人の世界を壊す。壊れたところでまた何千年と経過して人は新しく文明を創るのだが…此がまた面倒なわけだ 」
『 DNAが始めからになるからだな 』
「 あぁ、例え俺達が聖獣やら神に命がないにしろ同じ事を繰り返し見てるのは詰まらねぇ。だからこそ一定の数が決まっている 」
フェンリルに会う迄に様々な聖獣を見てきた
けれどそれ等に数がいると考えれば、確かに人間界で繁殖してる生き物に比べると果てしなく少ない
「 まぁ、聖獣なんて五十頭しかいねぇんだが 」
『 五十頭……たったのか? 』
「 たったの、と思うだろうが、その五十頭全てが人間界に行けば壊れるだろ? 」
聖獣同士を使った争いが起こることは目に見えている
それを防ぐために、と彼は答えた
「 人間界に召喚されるのはその五十頭の中で半分も満たない。だからこそ人間は召喚を試すんだ 」
『 俺が此処に来るまでに数頭は召喚されたんだが…… 』
ミューもルナールも、そしてロッサも召喚された
若い聖獣は召喚されやすいと言っていたがそれは何故だろうか
「 聖獣にも階級がある。簡単に言えばザコと普通と最強だ。そのザコはよく召喚されるが、最強クラスになると人間の世界で百年に一頭とかになる 」
『 勇者か…… 』
「 そうだ、勇者の素質を持つ人間に召喚された聖獣は最強クラスだろ 」
強い者に召喚されたらすぐに成長できる
だが、弱い者に召喚されたら何度も繰り返して呼ばれない限り強くならない、みたいな事をロッサは言っていた
なら俺の頻度はどのぐらいだろうか?
「 そして御前は、珍しい人間からの成り上がり。聖獣として生まれた時点で最強クラスの素質がある 」
『 えっ……俺がか? 』
そういえば、あの自称神様も最高クラスになれるかも知れないって言ってたな
「 あぁ、御前の魂は微生物、魚、獣、人間としての記憶を全てクリアした上で聖獣になったのだからな 」
それはつまり、やっぱり俺は人間止めちゃった系の魂ってことになるのか
だから人間に直ぐに転生して経験することが出来ずに、ふわふわしてたら神様が丁度いいと聖獣にしたってことか
平凡で何故死んだかも分からない大学生が
最後の人間としての生活だったと思うと、もう少し色々してた方が良かったと思うんだが
なんせ、人間として経験できなかった童貞だ……
今になって後悔してる気がする
4
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