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一章 聖獣への道のり編

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チャイムはこの建物の何処かにある鐘のようで
低い音が校舎に鳴り響けば、直ぐに辺りは騒がしくなった

「 教室に戻らねぇと……っ、なんだ、これ…… 」

『( ルイス?大丈夫か? )』

音に気付き寝ていたルイスは起き上がろうとすれば、そのまま床へと膝から崩れ落ちた
体調が悪いのか?と傍に寄り見上げれば、彼は片手で頭を抱えてから立ち上がる

「 身体が、重い…… 」

病気か?気だるいのか?熱か?
ルイスの体調不良に心配はしてるものの
俺は、歩こうとする彼を見守るしか出来ない

もどかしさに足元をうろうろして居れば
聞こえてきた靴の音に顔は通路へと向けられる

「 ルイスくん、こんなところに居たのね。理事長が御呼びです 」

「 なんで…理事長が? 」

体調悪そうなルイスを歩かせるのか?
この眼鏡教師を嫌いになりそうな気はしたが
ルイスは人前だと平然を気取るのか、何事もないように歩き出した

『( 強がりな少年だな )』 

フラフラの足取りに見えるのだが、
教師についていく様子は背筋すら軽く伸ばしてる
俺に言った言葉が無意識のものなんだろうが
普段は真面目そうなイメージがある

そうでなければ本気で卒業課題がクリア出来ないだけで悩まないだろう
俺は悩みはしないな

魔法学校だから、なんか仕掛けのあるのかと思ったが、何処にも無い様子

『( 此処はいったい、どんな施設なんだ? )』

まだ分からないな、とルイスに横を着いて歩いていれば、教師は立ち止まりノックをした後に中へと入った

「 理事長、ルイスくんを連れてきました 」

「 入りなさい 」

「 失礼します 」

高校生の時に見掛けた、校長先生の部屋みたいなイメージがある
よく分からない置物とかトロフィー、それに歴代の写真が飾られている

其々の顔をじっくり見ていた俺は、感じた視線に目線をやれば
理事長と呼ばれた男性を見上げる、彼の横に飛んでる炎っぽい赤い妖精は俺を見ていた

『( なんだ? )』

「 俺に話ですか? 」

「 そう、ルイス・ディ・ロペスくんですね? 」

「 あ、はい…… 」

敬語なんだが、見た目は琥珀色の髪をした
爽やか系のイケメンだ
理事長って言うからもっとオッサンなのかと思ってたが、年齢も若いだろ、20代後半位の容姿に馬術師みたいな格好をしたスラッと体型の彼は
ルイスに笑顔を向けた

『( うわ、胡散臭い )』

このタイプの笑顔は、好きじゃない
ランケを思い出すような笑顔にぞわっと毛を逆立てていれば彼は告げた

「 授業で精霊召喚を失敗したようですね? 」

「 っ…… 」

態々確認して言わなくても良さそうな事なのに
理事長はその笑みを崩すこと無く、言葉を続けた

「 そして精霊でないものを呼び出してしまったと……本当ですか? 」

「 ……本当、です 」

精霊ではないもの、なんて酷い言い方じゃないか
俺が大きかったら唸ってたな
ルイスの感情が伝わるのか、苛立ちではなく焦りを感じ取れる

あぁ、卒業が掛かってるからだ

「 本当でしたか。貴方は別のものを召喚をしてしまった、もう二度と精霊は呼べないでしょう 」

「 な、んでですか。呼べないって 」

やっぱり、この理事長はなにかを知ってるのに
態と遠回りに言ってる気がする
こいつも性格悪いなって判断した

俺はもう疑うことを恐れないからな
ランケで痛い目にあったから警戒してて越したことはない

「 精霊に問わず、召喚できる者はその魂に一つだけなのです。能力の問題ではなく、精霊同士が主を取り合い喧嘩をするから。だから精霊の方からも他に契約した人の元には行かなくなるのです 」

「 俺は、卒業課題……失敗ですか? 」

そうなんだ、じゃ俺は応援できないじゃん、と言葉に納得していれば
ふっとこの理事長の視線が俺の方に向けられたことに肩は揺れた

『( えっ、見えんの!? )』

「 精霊召喚は課題ですが、別に精霊じゃなくてもいいです。魔獣でもなんでも。自分の力になってくれる者ならば…… 」

驚いてる様子のルイスに、俺もまたどうしたらいいのか分からない
立っていただけの理事長は、迷うこと無くルイスの傍迄来ればしゃがみこんだのだ

俺の目の前で……

『( なっ、なっ!?見えてんの、俺は見えてたのか!? )』

「 ルイスくん。貴方は合格しました。こんな可愛い聖獣を召喚できたのですから! 」

「「 聖獣? 」」

『( ぎゃっ!!? )』

ルイスと女教師の声が揃った
というかやっぱりこの理事長知ってたんじゃ無いか!!

抱き上げられた俺は逃げようともがくも彼は腕へと抱き抱え、ルイスに向き合い肉球を揉みながら答えた

「 君には見えませんか?この愛らしい聖獣を、少し呼ぶ感覚で、見ようと思ってください 」

「 呼ぶ?子犬をですか 」

「 そうです! 」

『( ルイスに見えないで、理事長に見えるなんて意味か分からん!なんでだよ!? )』

んーーと、目を凝らして何かを念じるようにするルイスに俺はわーわー騒いでいれば
視線の端に映った炎に気を取られた

「( そりゃ、アタシが彼に見せてるから見えてるの )」

『( 喋った!? )』

「( 喋れるし話せるわよー。なんせ、アタシ達妖精は神様は違えど似たような物なのだからね )」

聖獣を創った神様とは違うと答えた、炎の妖精に
俺は親戚に出会った気分だ

聖獣同士が兄弟なら、きっと彼女達は遠い親戚なんだろう
そう思って理解しようとしていれば、ルイスは溜め息を吐いた

「 俺には見えません…… 」

「 では君に新しい卒業課題です 」

「 なんですか? 」

「 見えるようになって、是非。この聖獣と仲良くなってみましょ! 」

この理事長、悪い人では無いのか?
聖獣の事も知ってるし、炎の妖精の態度を見ると悪人では無さそうだが

ずっと肉球をにぎにぎされてるのは気に入らないが、まぁルイスを不合格にしなかっただけいいか
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