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一章 聖獣への道のり編
02
しおりを挟むこの時代がいつなのか、此処が何処なのか
俺には分かりはしない
だが、辺りへと視線をやれば少年と同じ色の布の服と濃い緑色のズボンを履いてるのを見れば
学校であり授業中だと予測は付く
「 おや、此は…… 」
眼鏡を掛けた女の人は
俺を見るなり片手で眼鏡を持ち上げた
けれど、女性の肩に座っている、蝶のような羽根を持つ子供を見た事がない
いや、子供じゃないピクシー?とか言うやつじゃないのかと思う
「 ふざけんなよ…… 」
女性の肩にいるピクシー?に気になって忘れそうになっていたが
俺の目の前には十五歳前後の少年が俯き、肩を震わせていた
声も何処か震えてるほどに小さく聞こえ、拳を魔法陣へと殴った
「 やっと、やっと不得意な精霊召喚できたと思ったのに……こんな、精霊にも見えない、使えない子犬なんて…… 」
『( 精霊?俺は、聖獣なんだが…… )』
使えない、確かに俺は子犬だ
シロのように強くて格好いいわけでも魔法が使える訳じゃない
だが、ノアの魂とまた廻り会えた喜びを感じる前に拒絶されたら心は痛む
「 ルイスくん、落ち着いて。きっと…… 」
女の教師は何かに気付いたのか、ルイスと呼ばれたのが彼の名前なんだろう
少年は名を呼ばれた後に立ち上がった
「 いらない……。精霊じゃなきゃ意味ないんだよ!! 」
『 ガウッ!( ちょっ、待てよ! )』
「 来んな!! 」
「 ルイスくん!! 」
走ってその場から逃げたルイスに俺は呼び止める事が出来なかった
ポツリと残された俺と一部始終を見ていた生徒は笑った
「 ふはっ!精霊じゃなくて子犬とか、笑えるんだけど! 」
「 よく精霊召喚魔法で子犬呼べるよなっ! 」
「 彼奴ある意味天才ねんじゃね? 」
「 ぎゃははっ、違いねぇや! 」
俺がもしフェンリルの姿で現れれば、ルイスは笑い者にはならなかったのだろな
ツボにハマったように笑い合うルイスと同じ位の子供達に、教師はどう止めたらいいのか分からないように焦っている
召喚獣として自覚して此処に来たのはいいが
どうやって過ごせばいいのか俺には分からない
ルイスが離れていく感覚だけが分かり、ゆっくりと魔法陣から出れば俺の身体は周りから見れば消えたらしい
「 子犬が消えた? 」
「 えっ、只の子犬じゃねぇの? 」
「 なんなの、今の子犬…… 」
「( 理事長に相談してみましょうかね )」
只、必要なくなったから他人には見えなくなった様にも見えるが
丁度いいとそのまま走り去り、ルイスの方へと追い掛けた
廊下を走ればガラスが美しく、赤土のようなレンガが積み重なって出来た城のような創りに見える
『 魔法学校か…… 』
廊下から中庭を見れば、他の教師が生徒に魔法を教えてる光景がある
授業をするような教室は何処か大学を思い出させる
案外、広い校舎を走りっては立ち止まり
ルイスの気配がする方に行く
『( 空き教室か? )』
僅かに開いてる隙間がある
教室から感じる気配に、俺は中へと入った
見つかってまた着いてくるなと言われても
行く宛が無いのだから追い掛ける気で傍に行く
机に伏せて落ち込んでるルイスの足元に行っても気づかない様子に、俺の事はまだ見えないのか
『( 必要とされないと見えないのか?まぁ、聖獣だもんな…… )』
どうやって姿を見せたり隠したりするのかはまだ分からないが
今はこのままで十分かと、足元に落ちてる紙へと視線を落とす
『( 魔法陣だ。卒業課題、精霊召喚…… )』
その紙には見たことない文字だが、今は読めて
そして課題と書かれた魔法陣もある
どうやら魔法陣の書き方は教えられてるようで
発動する事が出来たら運よく精霊に会えると書いてある
『( 精霊と契約し、守護をつけて貰うことで魔法使いへの道が切り開く?……ルイスは魔法使いになるために此処にいるのか )』
属性を持つ精霊を仲間にすれば確かにいいだろう
そうか、この時代の人間は聖獣の事を忘れて精霊に頼ってるんじゃ無いかって思えた
あの眼鏡掛けた女の教師っぽい人の肩に乗ってたのは
ピクシーではなく精霊なのだろう
妖精みたいなイメージならあってそうだ
『( きっとそうだ、こっちの紙には… )』
散らばった紙へと視線をやり
読めることをいい事に見ていれば精霊の説明もあった
精霊とくくりつけられた大きなグループの中で、形のあるのは妖精と言う
なら、やっぱり読んでたのは妖精でいいのか?
面倒だなと思うが聖獣より何となく、ややこしくなくて良さそうだ
「 っ、風が…… 」
カーテンが揺れ動き、風が吹き抜ければ他の紙もまた散らばっていく
床へと落ちた紙を拾うのを止めたルイスは、机へと額を置く
「 あの、子犬に酷いこと言ったな……精霊じゃないからって、また精霊呼べばいいのに…… 」
『( ルイス…大丈夫。呼べるように俺も応援する )』
酷いことを言ったと自覚してるならそれで十分じゃないか
俺はそれでいいと笑みを浮かべ小さな尻尾を左右に揺らしていた
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