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一章 聖獣への道のり編
4話 何事も経験らしい
しおりを挟むシロが言っていた、あの気紛れな神様であるライフが月が出た時だけ俺を人の姿に戻してると
確かに、人の姿になった時に洞窟から外に出れば
必ず大きな満月がくっきりと見える
欠けることを知らない満月は、此処に来て何度か見たが、人の姿になれると知ってから見る時とは
何となく月の出てる長さも頻度も気にしてる気がする
今の人の姿だと、死んだ時と同じ20代ぐらいで
銀髪の青年だが太陽が出てるときは子犬のまま
シロに求められ触れて貰えるのは、この月が出てるときだけだ
『 はぁー、中々召喚されないな…… 』
月がよく見える、洞窟から崖を上がったところにある尖った岩の上
人の姿だと身体の能力が上がってるのか此処まで来るにはとても簡単だ
だが、子犬なら来る事も出来ない
強くなりたいと願っても、呼ぶ召喚師が生まれないのなら仕方ない
『 人の世界で何年、何十年経ってるのだろうか 』
神の庭に居ればその感覚は麻痺して
数日しか経ってない気もするし数年経過してる気もする
太陽も月も、毎回同じ位出てる訳じゃない
ライフが太陽が見たければ太陽を、月が見たくなれば月を、そんな彼の思い一つでどちらの長さもまた変わるらしい
其を知ってから余り一日経過しか、なんて考えるのを止めてから
とてもゆっくりとして、のんびりとした時間を過ごしていた
「 そんなに気になんのか? 」
『 あー、起きた?まぁ、ちょっとだけ…… 』
声のした方に、消すことのできない獣の耳はピクリと反応し
振り返ること無く告げれば、ブーツの音が聞こえ
シロは隣へと片足を立て座った
鎖の音やマントの揺れる音は
此処に来るようになってよく聞く
傍にシロが居ると分かる音だからこそ安心さえする
『 俺はまだ一度しか召喚されてない。他の者に聞く程、経験がないから…… 』
「 別に焦ることも無いねぇだろ 」
後頭部に当たる手の感触に、撫でられてると分かれば尚更 胸が痛む
焦る必要はないと言ってもこの姿はライフがくれた仮の姿
きっと俺達の関係を認めてくれたから
俺に大人の姿を与えてくれただけ
だから早く、本来の子犬の姿を成長して
ライフが見せてくれてるこの姿まで大きくなりたいんだ
「 んー!吼えたくなるなぁ。御前も吼えてみると
いいスッキリする 」
『 ……分かった、なら吼える 』
岩に座り直し、ふっと子犬の姿へと戻れば
隣にいたシロもまたフェンリルの姿に変わる
月より綺麗で格好いい彼の横で俺は吼えてみた
『 アゥ~ン!! 』
子犬が吼えるなんてそんなもんで
可愛いと思えるのだろ、そんな声で鳴けば
鼻で笑ったシロは首を下げてから空へと顔を反らした
「 こうやって、やるんだ 」
『 !! 』
その声は何処までも遠くまで届きそうな程に
低く長く
大人のフェンリルが吼える声の凄さを改めて実感する
心が震えるほどに恐れすら感じる、遠吠えは
子犬の俺にはまだまだ出来そうに無い
「 ふぅ、スッキリした 」
『 シロは格好いいな……俺も早く、大人になりたい…… 』
「 ……… 」
恋人に子犬と言われ、幼いと言われるのは
少しだけ傷付く
本人は気にしてないのだろうが、成長したい俺は
どうしても思ったんだ
『 まぁ、考えても仕方ないか!寝床に帰ろう 』
「 あぁ…… 」
けれど、それは突然と訪れた
『 えっ、なに? 』
「 まさか…… 」
岩を降り、帰ろうと歩き出した瞬間に聞こえてきた誰かが俺を呼ぶ声
足元から明るく光る光に眉を寄せシロへと顔を向ける
「 コウガ、物は試しだ。行ってこい 」
『 ……ん!行ってきます!! 』
気を付けてな、何処か寂しげな表現を浮かべた
シロに大丈夫だと拳を握り締め笑ってから
俺は光の中へと包まれた
魔法陣の中に埋まるような感覚と、けれど直ぐに呼ばれた場所だと本能的に気付く
目を開ければ、其処には魔法陣に両手を当て此方を見ては驚いた様子の少年の姿があった
『 ガウッ!( 呼んでくれてありがとう、ノアの魂よ! )』
子犬の俺は、感じたことのある感覚に
直ぐにノアの魂だと知って嬉しくなり尾を揺らせば、固まっていた少年は声を上げた
「 ふざけんな!!! 」
『( えっ……? )』
のんびりと暮らして、平和ボケしていた俺は
すっかり忘れていた
人間界での召喚獣への期待を………
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