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一章 聖獣への道のり編

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~ ルイス視点 続 ~


どのぐらい走ったか分からないが、
銀狼の声が無くなったところで俺達は少し安心をした

国境にある岩場の間で休憩する目的と、此所なら他の部下が戻ってくるのが期待できるからだ

「 アメリア王女を運んでたなんて、そりゃ国の未来が関わるわけだ…… 」

「 言ってくれなきゃな 」

切れる緊張感と僅かな休息に
彼等は其々に座り込み、自身のコカトリスと共に休んでいた

俺の青毛をしたコカトリスもまた、透明馬に着いてこられて程に無傷であり主人に忠実だと思う

アメリア王女へと飲み物と食べ物を渡し、着いてきてくれコカトリスの頭を撫でる

「 よく頑張ったな、ありがとう 」

「 グァ…… 」

返事をし嬉しそうに頬へと嘴を押し当てる様子は、何処かリアンと重なる

「 アンドリュー隊長もどうしたんでしょ…… 」

「 国で一番最強と言われたあの人が銀狼に負けるわけないだろ…… 」

俺達を先に逃がすために、彼等は残った
その事に少しだけ胸が痛む

近衛同士で慰め合う中で俺はどんな言葉を掛けたらいいのか分からない
こんな時なら、リアンは鼻で笑ったりするのだろうか

「 と言うか、ルイス副隊長の聖獣どうしたんっすか?逃げたとか? 」

「 それ!現れなかったよな 」

助けてくれると思っていた、その言葉に
俺はリアンの声が聞こえない事に不安だからこそ、口は閉じた

「 聖獣なのに逃げたとか? 」

「 それは…… 」

「 んなことが有るわけ無いだろ 」

「「 !! 」」

突然と聞こえたよく知る声に、俺達は目を見開き
武器へと手をかければ、コカトリスの足音が聞こえ、そして暗闇から現れた人物に言葉を失う

「 彼奴は俺達を守るために足止めをした。そしてルイス、御前に贈り物だ 」

「 俺に? 」

アンドリューの姿と、彼の言った言葉の後に
他の死んだかと思っていた部下の姿も見え
安堵する

彼は贈り物があるとコカトリスから降りれば、その腕に大切に抱いていたものを見せてきた

「 っ、これは…… 」

「 生存者を見付けろって命令したらしいな?ちゃんと見付けてたぞ 」

「 っ……リアン、よくやった…… 」

赤子は少し衰弱してる気味だが、生きてるのは間違いない
受け取り優しく抱けば、赤子は小さく泣いた

「 なっ、えっと、水!? 」

「 あの……貸してくれませんか? 」

「 アメリア王女? 」

「 私、まだ出ますから 」

出るって何を?って疑問になる俺達に
彼女へと赤子を差し出せば、彼女は少し離れ、此方に背を向けたところで気付き、近衛隊は視線を外す

「 私の赤ちゃんは、産まれて直ぐに星になったんです……。相手は国民で、それをお父様が怒って。他のお見合いになって…… 」

赤子に乳を上げながら、優しく告げたアメリア王女の言葉
王家に子供が生まれたなら、近衛を含めて誰もが祝うのだが
相手が国民なら……王様は怒るだろう

「 君は其でいいのか? 」

「 いいのです。それが私の、新しい人生ですから……。ほら、お腹いっぱいだね 」

赤子がゲップをするまで丁寧に、相手をしたアメリア王女に俺達は何も言えなかった
王家に仕えてるはずなのに、今、彼女を他の国にやることは気に入らないと少なからず此所にいる誰もが思っただろう

「 はぁー、考えるのは仕方ないが。俺達は騎士だ。そんな事より先に進む方が優先じゃないか? 」

暗い空気を変えたのは、尊敬するアンドリュー隊長の言葉であり
俺達は其々に武器を持ち直し、コカトリスを立ち上がらせる

「 進みましょう。私を国に連れていってくれますか? 」

「 其が命令なら、俺達は命を掛けて貴女を国に送ります 」

「 はいっ! 」

強い少女へと一瞬でも心惹かれたのは分かる
けれど俺は近衛であり、今はまだやることがある
僅かな気の迷いは此れから先、役に経たないと思い気持ちに蓋をした

透明馬へと跨がり、彼女と共に赤子を前へと乗せれば、コカトリスへと乗った隊長達と共に国を目指す

「 ウォォォオン!!! 」

珍しい程に美しい満月が真上へと上がった夜中

シルバーウルフの遠吠えがまた聞こえる

「 走れ!! 」

アンドリュー隊長の言葉でそれまでゆっくり歩いていた、透明馬やコカトリスの脚を速め
岩の切れ目を走り抜けていく

「 隊長!上からシルバーウルフが!! 」

「 気にするな!この岩場を抜ければまた開ける、そこで倒せばいい! 」

「「 はい!! 」」

赤子を抱いた、アメリア王女が落ちないよう支えながら走れば
上から飛び降り、背後から走ってくる銀狼が見える

月の光が怖いほどに、俺達は開けた場所へと呼ばれてる気がする


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