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一章 聖獣への道のり編
09
しおりを挟む懐かしい匂い、扉を開けた音が横から聞こえ
見覚えのある彼等の姿が其処にある
けれど、目の前にいる青年は俺を見下げてはそっと頭に腕を回し抱き締めた
「 最後に、俺からのプレゼントだ 」
『 最後……? 』
前より何処か幼く聞こえる、自分の声
そんな事よりも" 最後 "と言った言葉に理解が追い付かない
ガラスにヒビが入る様な音が聞こえ、彼の体温は酷く冷たく思える
「 俺の持ってる全ての魔力を渡す。其を持って帰りな 」
『 待ってくれ、此れからずっと一緒にいるんだろ……魔法使いは長命って言ってたのに、なんで…… 』
「 ノワール 」
『 !! 』
焦る俺を他所に、頭に触れられていた片手は頬に触れ
涙が溜まる視線を促されるままに上げれば、優しげに笑ったフリーレンは額へと口付けを落とした
「 リアン……ロルフ……。そして、ナイト。泣く必要はない。また巡り会えるのだろ、その時はもう一度……宜しくな 」
『 フリーレン……!! 』
流れ込んだ魔力の質と量よりも
彼の頬から目元にかけてヒビが入った顔に驚き名を呼べば
まるで氷が砕け散った様に、全てが粉々消えた
月明かりで光輝く氷の破片は地面に落ちる事なく、蒸発したように何も残らない
『 っ……フリーレン……!! 』
それと同時に発動した魔法陣
彼の服を掴み抱き締めては涙を溢れ、流れ落ちる
『 あぁぁっ…… 』
「 ナイト 」
『 っ…… 』
俺を呼ぶ声に、視線を向ければバトラーとネロが立っていた
何処か前より大人びた彼等の姿を見れば、バトラーは困った様な笑みを浮かべる
「 私の家は此処です。またいつでも帰ってきてくださいね。貴方の家でもあるのだから…… 」
隣では、何度か頷いたネロの姿を見れば
彼の外見と魔力に気付き、眉を下げ不器用に笑った
『 思い出したら帰ってくる……バトラー、ネロ……ありがとう 』
「 えぇ、また。会いましょう 」
「( またね、可愛い弟よ )」
片手を振ったネロに、最後は声とか目とか見たかったと思ってもそれはもう叶わない
バトラーに礼を告れば、魔法陣の光は俺を包み込んだ
持っていた服は消え、気付いた時には草花が咲き誇り、何処までも陸が続く神の庭 へと帰ってきていた
『 俺は、また……主を早くに失った 』
大切な物を取られ、大切な主を失った
その現状に、青空が広がる世界で両手を顔に当て声を出し、涙を流す
『 あぁっ!フリーレン……フリーレン……!! 』
魔法使いを目指していたルイスの願いが叶ったはずなのに、こんなにも直ぐに亡くなるなんて思っても見なかった
もっと皆で過ごしかった、もっと時間を共有して居たかったのに
胸に残る悲しみは、簡単には溶けることは出来ない
『 っ…… 』
目元を腫らし、涙は留まること無く流れ
喉の痛みを感じてはふらつき足を動かし、歩いていく
『 帰ろう……シロの元に、謝ろう…… 』
片手で腹下に触れ、取られたことを伝えよう
そう思ってゆっくりと歩いていれば
聖獣の声に、獣の耳は動く
「 北があんなに変わるなんて…… 」
「 雷鳴の巨狼が荒れてるらしい、近付けないや 」
「 本当、大気にまで影響が出る聖獣って困るよね 」
『( シロが荒れてる? )』
何故?何があったのかと、考えれば
寝床のある方へと腕を動かし走っていた
息を切らし、いつしか身体は獣の姿を得て
聖獣の多い泉の横を通り過ぎ、森の中へと入り突き進む
『 なっ……!? 』
俺が知る地形は、まるで地震が何度も起こった様に木々の根は抉り倒れ
崖崩れを何度も起こした山肌は土が見え
美しい川は散乱し、いつくも別の川が現れていた
唖然となる俺は、此処に来て急に酷く降り始めた雨に打たれながら先へと進もうとすれば
雲の流れる音に気付き、顔を上げる
「 やっと帰ってきたか、小僧 」
『 レイヴンさん!? 』
雲の中から姿を現せたのは、大きな黒龍であり
彼は長い髭を揺らし、その身体は雲から出ることが無いほどに何処までも長く蛇のように揺れ動いている
そんな事もよりも、俺を待っていたかの様な言葉に問う
『 何があったんだ?なんで、シロは…… 』
「 知るか、彼奴の気紛れなどよく変わるが、御前が居ないことが原因なのは気付いていた。この先は、羽がある奴でも落雷で通れない、連れていってやる 」
『 っ!!わっ…… 』
大きな姿は何処か小さくなり、雲の中から出てきた彼は、風のように早く目の前へ来れば
問答無用で獣の身体を両手で掴み、もう一度空へと上がり飛んでいく
いつか見た人型の時に運ばれた時よりもずっと速いのだが、目の前の光景に唖然となる
『 えっ…… 』
「 此が遥か昔、人間界をひっくり返した、雷鳴の巨狼の力だ……" 天変地異 " 」
地上から黒い雲へと昇る、雷を含めた竜巻は幾つも発生し
それに合わせるよう落雷が降り注ぎ、常に地震が起きてるように神の庭は揺れている
広く果てがない筈のこの場所はただ一人、一体の聖獣によって北の森から壊れてるように見えた
いや、振り返ってみれば其処には被害がないから
ライフが何かしら此処だけで止めてるのだと察する
「 落雷が邪魔だ……急ぐぞ 」
『 お、おう! 』
悲しむよりもこっちの方が衝撃的で涙は止まっていた
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