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二章 宝物捜索 編

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~ ジョセフ 視点 ~


腕を生け贄にして、魔物の能力を取り付けても結局は身体は再生する
長く伸びる爪の能力だけ得られたことに両手を見てから、本を片手に他にやれることはないか考えた

「 そこまでだ!!この辺りを荒らす、錬金術師!! 」

「 手を上げて地面に伏せ……っ!! 」

「 君達が伏せた方が身のためだよー?ほら、殺しちゃいな……ボクのオモチャ達…… 」

生き物の数が減れば、その原因を探すのは人間の性であり
滞在した先々で、研究室を特定され乗り込んでくる者が多かったけど、その度にキマイラ達は殺して食っていく
彼の元は魔物だから、餌となる人間は必要だった
 
「 アハハハッ!もっと人数で来なきゃ……。はぁー、ねぇ、足りないよ……餌が足りない 」

ずっと表に居れば腹を空かせるキマイラの餌の確保は大変であり、聖獣を元にして錬金術の経験を生かして
見えない檻を造り出した

聖獣召喚と同じ役目である、キマイラ召喚の魔法陣
カプセルに入れたキマイラ達を地面に埋めるようなやり方であり、これなら何処に行こうか何処で取り出そうが簡単に出来た

「 ハハッ。魔法なんて必要ない……錬金術がこの世の全てだよ。何でボクは聖獣なんかに拘ってるのだろ……聖獣なんて、ねぇ……? 」

ふっと考えて分からないことがある
聖獣を拘ってた理由、時間が経過して忘れていく感覚に思い出す度に腹が立つ

「 あー、そっか……あの聖獣を殺すためなんだぁ。でも、何処にいるのかな……?世話をする人間が生まれてきても可笑しくないけど……ふふっ、探そう……キマイラを連れて 」

世話をする人間が生まれて来る度にあの聖獣も現れる、ずっとずっとボクとその世話役の人間の魔力を食いまくってる暴食の聖獣に会わなきゃ

言ってあげなきゃ……君が食ってるのは、ボクの中に合成して入っていく魔物達の魔力だって
聖獣の魔力が醜く染まるなんて面白いよね……

「 良かったね……ボクが沢山の魔物や人を食ってたから、君は、速く成長してたんだよ。ねぇ……ノワール……どんな気持ち? 」

『 っ!!! 』
 
犬らしい聖獣の情報を聞く度に会いに行き、主を殺していた
そして、一人の狼使いの青年の傍に居た犬を見てもしかして?と思って呪いを付けた
彼が転生する度に、知らせてくれる寄生虫の虫によって、赤子の頃から見ては、召喚する時に近くに居た

そして、見つけた……醜いほどに黒い姿をした聖獣が猛スピードで美しくなっていくのを……

「 魂のヒントを得て、魔力を固めた方が強いものが出来ると知った……残念だけど、あれは勇者気取りの奴に取られたけど……十分だよ。だって……キミがこうして、ボクのものに戻ってくるのだから…… 」

『 俺は…… 』 

「 コウガ、聞く耳を持つな!!御前は、魂を奪った錬金術師を殺すんだろ!そいつは、主じゃねぇ!! 」

「 五月蝿いなぁ……黙ってて 」

「 くッ……! 」

魂は只の魔力を貯めるための道具でしか無かった
それも、彼の胎内でないと成長しない
そんなのは必要なくて持っている意味もなく、勇者に奪われても取り返す気はなかったけど
何千年も待って、そして美しく成長した聖獣は手の内に戻したかった

「 でも……そこの犬と契りを交わしてるのは許せないなぁ!! 」

「『 !?、っ……ガハッ!! 』」

成り上がった最高神を攻撃すれば、同じタイミングでボクの聖獣も血を吐き、身体をぐらつかせる

倒れている死神風情の犬には興味は無く、まだ起き上がろうとする最高神は褒めてあげれるけど、ボクの聖獣はメンタルが弱いらしく、動くのさえ鈍くなるよね

「 ノワール……いや、コウガ……ボクの元においで……そうすれば、誰も傷付かないよ 」

『 っ、ジョセフ………… 』

手を伸ばしたボクの元に、ゆっくりとやって来る獣の姿へと戻った氷の聖獣

彼が望むのは、只一人……自分の" 主 "だけ

「 コウガ、聞くな……御前の、望みは子だろ、主じゃない、殺せ……御前じゃないと、そいつは殺せないだろ!! 」 

「 愛しいものに声が届かないなんて可哀想だね、最高神になっても、守れないものはあるんだよ 」

「 っ…………ふざ、けんな……!! 」

魔法を避けること無く受けたコウガの怪我を諸に受け入れる最高神
可哀想に、弱い聖獣と契りを交わしたせいで倒れる相手にも手出しが出来ないなんて……

相手を選ばなきゃね……学んだ……?

『 我が、主………… 』 

「 そう、ボクがキミの……主だ 」

「 コウガ!!! 」

聖獣は主に従うことしか出来ない
そして、身を委ねた瞬間に意識なんて関係無いほどにこの腕へと入る

やっと手に入れた……ボクの醜い聖獣

冷たい身体を抱き締めれば、聖獣は僅かに首を動かし髪へと擦り付けた

『 ごめん……俺のせいで苦しんで…… 』

「 いいんだよ……ノワール…… 」

『 だからもう…………おやすみ…… 』

「 っ!な、ん……で…… 」

鋭い痛みが腹へと感じ、口から流れる血に目を見開けば、目線を下げたときには身体が離れ
聖獣の胸元から伸びた氷が腹へと突き刺さっていた

背後へと倒れたボクの前には、涙を浮かべる狼の姿があり、彼は口を開いた

「 やめ、あるじ……なのに……ボクは……ずっと、魔力を、あたえた………… 」

『 だから、ごめん……許さなくていい……おやすみ……ジョセフ 』

口を開いた狼の牙が喉へと突き刺さった瞬間に、涙は頬を伝った

頭に過るフラッシュバックする過去の記憶と、この聖獣のせいで壊れて失った時間に涙を流せば

あの、真っ白な青年は現れた

「 生まれ変わる御前に、二つの道を与えよう。一つは力を持たない人間になるか、もう一つは恨み続けたコウガと" 共に生きる "か……選べ、フリーレンの魂が混じる迷える子羊を…… 」

「 ボクはもう……生きたくないよ…… 」

「 それは出来ない。罪滅ぼしの未来が待っている 」

「 ……なら、ボクは…… 」

神が一番愛するもの、それは聖獣であり人間ではない
コウガの為に考えた言葉や思いをボクは知ることは無い

願った言葉は、彼は眉を下げて優しく笑った

そして光に包み込まれ、ボクの身体は消えていく

また、次に会うときは……大嫌いといってあげる……

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