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二章 宝物捜索 編
07
しおりを挟む力を込めて振った瞬間、声が聞こえてきた
「 アルト、待て 」
『 ……… 』
停止させるには十分な言葉に、剣先が聖獣の項に当たる間際に止めれば、姿勢を正して鞘へと戻す
『 御衣…… 』
小さく返事をし彼等の元から離れて、血で濡れた甲板を歩いてクララの方へと歩いていると、彼は海軍少尉へと告げる
「 兄貴。その身を持って知っただろう。御前は弱い。誰も…俺等を捕える事は出来ないんだ 」
「 っ……くら、うす……ま、て… 」
「 ダグマール様、喋ってはなりません!! 」
流石、聖獣…
人間より丈夫だと思いながら、視線を外し自身の頬についた血を手の甲で拭き、それを舐めて毛繕いを始めれば、クララは彼等から背を向け、声を張った
「 テメェ等、この船の中にある食糧と金目の物を全て持って来い!!俺等の勝利だ 」
「「 おぉぉお!!! 」」
それまで呆然と立ち尽くしていたクルーは、クララの言葉に返事をして海軍船の中へと入り、物を強奪しては自分達の船へと運んでいく
食糧はもちろん、武器や衣服まで
売れそうなものは全て奪うのが海賊の役目
けれど彼等を止める事は出来ない
この海軍船に、ダグマール少尉と非戦闘員以外の生存者はいないのだからな
2500人の戦闘員は、全て死亡していた
『( 終わった……帰ろう )』
少し疲れた、と思いクララが船に戻るのを見て、追い掛けようと歩き出せば、背後で声が聞こえる
「 氷の聖獣…… 」
『( まだ何かあんのかよ… )』
気を失ってる主を抱え、涙を流す女の姿をした聖獣は、俺を睨んだ
「 黒き闇に染まるのは勝手だが…その先にあるのは、破滅だと忘れないように…。私は、貴方を許さない…。例え、故郷…神の庭で会おうとも… 」
『 勝手に恨めよ。そう言うの面倒くさい… 』
ハイハイと聞き流して背を向けると同時に、口数の多い聖獣を黙らせるように、クルーが船に戻って来たタイミングで、片手を向ける
『 生き延びたらいいな?黒破 』
ここからどうやって岸まで全ての人数が泳ぐのか見てみたい気もするけど、あの水属性の聖獣がいるから、簡単に解決すると思って納得した
海軍船を言葉通りの海の藻屑とすれば、俺はクルーが喜びの声を上げるのを他所に、船内へと入る
『 シャワールーム借りて、身体を綺麗……っ!!? 』
歩いていれば急に感じた心臓の痛みにフラつき、壁に手をつき爪を立てた
『( なん、だ……この、痛み… )』
身体が攻撃によって傷付くのとは違った痛みに、冷や汗が出る
心臓が強く誰かに握られるような感覚と手足が凍るような冷たさ、そして視界は赤く染まり、頬へと涙ではないものが伝う
『 血……なぜ、…怪我してない…はッ…ずっ…ぅ、っ!! 』
目から流れる血が理解出来ず、立つことさえ困難に思える程に息苦しくなっていれば、少し焦ってやって来る人物の姿が、ぼんやりと見えた
「 アルト!!? 」
『 っ……… 』
驚いてるようなデルが、片手を伸ばしたその後ろに、よく知る人が見えれば…
壁に当てていた肩と片手を外し、足取りをフラつかせ近づく
「 アル…… 」
『 我が、ご主人…… 』
デルを素通りし、その先にこっちを見て片手を向けてるクララの元に行けば、彼はそっと俺の手首を掴み歩き出す
「 急に、俺の魔法を使って…身体の負担になったのだろう。少し休め… 」
『 そう、なのか…… 』
「( アルト…、貴方……… )」
心配気に振り返ったデルを余所に、クララの言葉にそうなんだと納得しながら、船長室へと向かって歩いた
頭痛で頭が割れそうで、余り考えられない間に彼によってシャワールームへと入り、
全身を全て丁寧に洗って貰い、綺麗にしてもらった事が嬉しかったと思う
いつの間にか、服も綺麗になればソファで座る彼の膝の上で獣の姿で横になり、そっと頭を撫でて貰った
「 イイ子だ…。俺の、アルト。良くやった… 」
『( 褒められた……俺、偉い…… )』
其の言葉によって痛む頭や心臓ですら如何でも良く思える程に心地良く、魔力を回復するのに合わせて浅く眠りについた
「 ……コウガ 」
『 ……ライフ?あ、此処…夢の中か… 』
暗い視界が晴れて、真っ白な空間へと変われば、懐かしさもある姿を見て、人間界にいるはずがないと判断し、夢だと納得する
「 どっちでも良いが…。目的を忘れてるのではないか? 」
『 目的?俺は強くなることを望んでるし、主人の為になる事を目標にしてる 』
何故、当たり前の事を夢の中で聞くのか分からなかったけど、ハッキリと答えれば
ライフは眉を下げて、俺に近づき細い手首に付いた装飾品を密かに鳴らし、白い両手を頬を包むように触れた
いつの間にか俺は…狼の姿になってたのか…
『 クゥー…… 』
甘えるように声を漏らし、顔全体を撫でられる心地良さを堪能していれば、ライフは告げる
「 御前はとても綺麗な白色をしておる。だが…白はどんな色にでも染まる事を忘れてはならぬ 」
『 んー? 』
「 もう一度…自分の心に問い掛けて、本当の目的を思い出すのだ… 」
『 ライフ? 』
言うだけ言ったライフは、そのまま頬から手を離し姿を消し、少しだけ追いかけようとすれば重い体は、現実へと突きつけるように無理矢理起こされた
『 っ!!!あ、れ…… 』
目を覚ませば辺りは暗く、フッと横に聞こえる規則正しい寝息に視線を向ければ、そこには眠っているクララがいて、笑みは溢れる
『 俺って、少しは使えるだろ?もっと役に立つから……俺に命令してな、ご主人 』
そっと頭部辺りの髪へと口付けを落とし、もう一度布団に潜り、向き合うように目を閉じた
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