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二章 宝物捜索 編
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しおりを挟む軋む身体に、流血して貧血気味の脳内で如何してこうなったのか、考えても分からなかった
主の機嫌がピークに達して、俺を拷問じみた事をしてから…
えっと……そう……
『( 思い出す迄…此処に居ろと命令されたんだった… )』
誰を思い出せば良いか分からないのに、そんな事を言われても困ると思った
ボヤける視界の先に見える、綺麗に出来なかった血で汚れた服やその先に足枷と鎖、何となく誰かに似てる気もしたけど、酷い胸焼けの様な感覚がして思い出すのも嫌悪感を抱く
『 いっ、っ……聖獣、なのに…。治り遅い… 』
主から付けられた傷だから、他人に付けられるより治りが遅く、折れた肋骨が痛み呼吸をするだけで息苦しく、肺を動かす度に息が詰まる
『 はぁ、ッ……… 』
なんとか身を動かし、冷たい鉄の上を這いずる様に、鉄格子の方へと行けば手を伸ばす
『 ……やっぱり…魔法が掛けられてる 』
指先に当たる電気の様な感覚に、雷耐性を持ってるからこれは痛みに入らないが、出られない事は察しが付いた
常に感電したくないから、少し下がって鳥籠のような中央に居れば、地下へとやって来る足音が聞こえて来る
『( 誰の足音だろ……鼓膜が破れてるから、聞こえづらい… )』
其れでも、主では無い事は分かるから…
クルーの誰かだと思った
「 ッ…なんて、酷い事を…… 」
『 この声は…航海士…さん? 』
あの地図を見てた人かな、と思い…籠の前へとやって来た男へと顔を上げれば、彼は眉を下げ直ぐに扉へと片手を向けた
「 ……… 」
何か分からないような呪文を唱え、開くはずが無さそうな扉が開かれると、中へと入って来て俺の傍へと駆け寄る
「 召喚士に怪我をさせられた聖獣は…治りが通常よりかなり遅いと言うのに… 」
『 航海士…さん……。なんて、言ってるのか…聞こえないんだ 』
「 っ……直ぐに治して差し上げます 」
ブツブツと言ってるのは分かるけれど、耳に届くのが雑音だから、違和感を感じる
ぼんやりと見える視界の中で、彼は片手を俺の方へと向けると淡い緑色の様なベールが身体を包み込んだ
「 聖獣に効果あるか分かりませんが…回復魔法です。止血と… 」
やっぱりまだブツブツと言ってるけど、痛みは徐々に引いて、視界がクリアになり呼吸すら出来る様になっていた
『 ゴホッ……ゴホッ…… 』
其れなりに時間を掛けて回復魔法を行ってくれた事も有り、傷口は癒える
「 ふぅー……次は、血で汚れてるので綺麗にしましょうか 」
『( どうして、俺に…そこまでするんだろうか… )』
彼の行動が分からず、座り込んだままじっとしていれば着ていた服は脱がされ、空の桶に湯を出した彼は布を浸けて絞り、汚れた身体を丁寧に拭いていく
『 ……この、香り…知ってる気がする… 』
「 私が好きなハーブです。気持ちがスッキリとして落ち着くでしょう 」
『 ……そう、だな 』
湯が赤黒く染まる度に、中身をやり変えて髪も身体も全て綺麗にしてくれた彼は、洗い終えて乾かした服を着せ直した
全て終わった頃には、夜中になっていたけれど…
彼はこんな場所に留まっていた
「 綺麗になりましたね 」
主以外に触れる事は嫌いなのに、何故か頬を撫でる手は嫌な気がしなくて、心地が良い
少しだけ求める様に、指先へと擦り寄っていれば、彼は眉を下げた
「 辛い事に目を背け、楽しい記憶を全て閉じてしまったのですね…。私やあの方の事まで…忘れてしまうなんて… 」
『 忘れたのか…俺は。でも、…確かに…いつの間にか色々と思い出せないでいる… 』
どんなきっかけかは分からないけど、いつの間にかクルーの名前が分からなくなっていた
そっと顔を上げれば、金色の髪に血よりも綺麗な目をした彼が、悲しそうに見詰めてくる瞳と重なる
「 思い出したいですか?私は…記憶の魔法使い。デル•アンスブラント。貴方が蓋をした箱を、少し開ける事が出来ますよ 」
『 それは…主の為になるか…。思い出せと…言われてるんだ… 』
「 そうですね……。まずは心の負担にならない事から思い出しましょうか。ほら…膝の上に頭を乗せて下さい 」
『 頭…… 』
人の姿では無い気がして、何となく狼の姿へと戻れば、座ってる彼の膝へと顎を乗せるように横たわるとそっと頭部から首後ろの飾り毛を撫でて来た
「 ~♫ …~♫ 」
聞き覚えの無い言葉だったけれど、何処か懐かしいような、そんな感覚がする程に心地いい子守唄に耳を傾けた
眠くなったはずなのに、深い眠りに入るような…
そんな感覚に、心地よくて身を任せた
子守唄が導くように、暗くて冷たい場所から一筋の光が差し込むように、視界が晴れる
一面に広がる色とりどりの花と青々とした木々が、柔らかい風によって揺れる
鮮やかな蝶は華麗にひらひらと好きな花を選ぶように飛んで、俺はその様子をじっと見詰めていた
何処かに行く蝶を追い掛けていれば、綺麗な小川があって覗き込むと魚が泳いでいて、興味津々に捕まえようとしてる
" っ……!むっ……全然捕まらない "
どんなに捕獲しようにも出来なくて、少し不貞腐れていれば、呆れたような声が聞こえてきた
" 幻と言ったでしょう。幻で作り出した部屋の中では、生き物は捕まえられませんよ "
" そんな…… "
聞こえてきた声に振り返ると、顔に靄が掛かった人が其処にいて、彼は背を向ける
" ____様がお待ちです。行きましょう "
" おう!! "
誰かの名前を言った気がするけど分からなくて、
その場所から出れば、何処かの部屋と繋がって、
階段を下りて行った先に、とある人物が待っていた
" 少しは楽しめたか…? "
" んー、全然! "
" ふふ、そうか… "
その人はとても優しい雰囲気を持っていて、
暖炉の火の傍で座っていたから、俺は膝に頭を置いて撫でて貰った
今みたいな…唄を聞きながら……
永く…永く、悲しい時にずっと撫でて貰っていた…
" やっと、目を覚ましたな……ナイト "
その靄は、徐々に晴れていき…
俺の幸せは、そこで途切れた……
もう一度、あの幸せを感じたいと思った時には、男は氷の様に砕けて消えてしまった
『 フリーレン……ッ……! 』
思い出した…
誰がこのローブをくれたのか…
誰が俺を、人の姿にしてくれたのか…
そして…此の航海士が、誰なのか……
「 思い出しましたか?ナイト 」
『 シル、キー……… 』
「 えぇ…シルキーです。フリーレン様は、貴方の心をこうして溶かしたのですよ 」
壊れてしまった心を、何十年…何百年と溶かしてくれたフリーレンは…もういない
俺が殺してしまったようなもの…
けれどもう一度…彼の事を知ってるシルキーに出逢えたことは、嬉しく思うんだ
『 っ……俺、でも…思い出せない事が多い… 』
「 焦る事は有りません。一つ一つ思い出していきましょう。大丈夫ですよ、私が着いてます 」
蓋を閉じてしまった記憶を、彼が鍵を渡してくれるから、それを使って徐々に開いていく
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