転生したら召喚獣になったらしい

獅月@体調不良

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二章 宝物捜索 編

01

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途中に現れる海獣や海賊など、
もう…漆黒の死神団セイブル•ディ•トートの敵では無かった

財宝を取りに行かずとも、この船に溜め込んだ宝で、一生を生活出来ると思うのに…
海賊は強欲だからこそ、全ての宝を手に入れたいと望むのだろう

俺はデルに言われた言葉が引っかかって、クララの命令は聞きつつ、心ここにあらず状態が続いていた

この先…クララとの関係を如何すればいいのか…
それを考えて仕方ない事だと何処かで分かっていても考えてしまうから、頭のネジはいくつか飛んでいる

「 たす、けてくれ… 」

『 助けてやりたいのは山々だけど…皆殺しって命令されているんだ。ごめんな 』

「 そ、んな…………!! 」

海賊相手に謝る必要は無いだろうけど、死にたくない、助けて欲しいと言った奴を命令ってだけで殺すのは、少々胸が痛むようになった

ほんの少し前までそんな事は無かったのに、デルから言われた一言で胸を痛むなんて、俺はまだ…完全に闇に染まったわけではなさそうだ

心の中でデルに感謝しながら、屍となった肉体から剣を引き抜き、血を振り払う

「 てめぇ等!さっさと運べ! 」

「「 アイアイキャプテン! 」」

生存者が居なくなった後に、この海賊達が持っていた少量の宝と食糧などを奪った後、いつものように船を沈めた

「 浮かない顔だな。どうした? 」

『 あ、いや…なんでもない… 』

ぼんやりと宝を確認するクルー達を離れた場所で見ていると、近くに来たクララの言葉に軽く首を振る

他の者達が積荷を奪って運んだ後、いつものように敵船を沈没させてから、船内へと戻った

「 キャプテンとアルトが居ると敵無しだわ! 」

「 ははっ、間違いねぇや! 」

戦闘が終われば奪ったもので、宴が始まる

何十回と見慣れた光景なのに浮かない気分なのは、殺したくもない人間を大勢殺した後だからだろう

『( 俺の手は…もう、綺麗じゃない… )』

甲板の手摺りに背を預け右手を眺めては、そっと拳を握り締めた
汚れているこの手は、海賊のもの

人を殺し、宝を奪う者達と同じ手だ

「 アルト、来い 」

『 おん…… 』

宴の席にいたクララに呼ばれ、軽く返事をしては彼の後ろを歩いて着いていく

薄暗い通路を歩き、彼の部屋である船長室へと入り、自らの手で入り口の扉を締める

「 其れなりに活躍したと言うのに、不満そうだな。どうした? 」

『( 態々聞いてくるなんて珍しい… )……どうもしてないさ 』

コルクを外し、ワイングラスの中に赤いワインを注ぎ入れるクララは、俺の言葉を聞いては、そのグラスを傾けて軽く鼻先に寄せ、匂いを嗅いでは一口飲んだ

「 どうもしてない奴が、そんな顔をしてないだろ。さっきの戦闘も殺すのを躊躇してた様に見えたが?それともなんだ、御前はいつから主に逆らう駄犬になった? 」

『 ………………… 』

彼が目線の先にあるワイングラスの中身を見たまま問い掛けて来た言葉に、一瞬なんて返せばいいか分からなくなって、密かに息を吸ってしまう

詰まった言葉に、口を閉じて視線を外すとクララはワイングラスをテーブルに置き、俺の方へとブーツのつま先を向ける

「 其処まで俺の事が気に入らないか? 」

『 …契約者に対して、好きも嫌いもないと思う。少なからず…俺は聖獣で、貴方は召喚師なんだ 』

少し前の俺なら、召喚師であり主の事を気に入って尻尾を振っていたかも知れないけど、こう言った人に出会えば、一線を引くのも手だと思ったんだ

この人の嫉妬や束縛以前にダメだ…と言う本能が告げている

「 はっ、気に入らねぇ…… 」

『 …………! 』

彼が鼻先で笑い、片手を振った瞬間に、頭部に当たる地味な痛みと頬に触れる冷たい床の感触に気づいたけれど、視線はいつの間にか彼の爪先を見てて、俺の胴体の方は首から血を吹き出していた

死ぬことが無い聖獣とは言えど、痛みはあると言うのに…
この人は本当に無茶苦茶だと、この状態ですら呆れすら生まれる

「 俺に不満があるなら直接言え。グタグタ考えてたところで、御前は俺の聖獣には変わりない 」

傷口が治癒して、血が止まり、辺りに飛び散った血は消えていく
頭と胴体が離れたままクララの言葉を、聞いていると彼は俺の髪を掴み、持ち上げた

「 分かったなら、返事をしろ 」

『 ………じゃ、一つだけ伝えたいことがある 』

「 なんだ? 」

『 …俺はもう、人を殺したくはない 』

罪が有ろうが、無かろうが…
これ以上の人殺しはしたくないと思うんだ

聞かないかもしれない願望を告げると、クララは呆れたように溜息を吐き、掴んでいた手を離した

「 それは聞けねぇな。御前には、最後まで役に立ってもらう。その為に召喚したんだ。……影に戻れ 」

『 ………………はい 』

もう一度冷たい床と頬を擦り合わせる事になったけれど、影へと戻った後に胴体と頭が繋ぎ合わせた

『( やっぱりダメか……。俺はもう…血に染まった聖獣か… )』

聖獣に、主の命に逆らって足掻くことなんて出来はしない
どんな命令すら、応えるように創り出されたご都合の良い獣なんだ

仕方ない…と、何処かで諦めて、静かに目を閉じた

後日
少しだけ、気晴らしに食堂の方へと向かって、厨房に入ってみた

「 アルト…が?聖獣が料理なんて聞いたことねぇよ 」

『 気まぐれにな、蒸かした芋以外作ってやるよ 』

「 お、おう……そうか。んじゃ、頼むわ 」

コックから借りたエプロンを身に着け、袖を巡り上げて手を洗う。

コックは少しだけ離れて、食堂のテーブルの方へと席につくと、噂を聞きつけたクルーがやって来た

「 アルトが料理って? 」

「 本当かよ!!聖獣が作る料理なんて、気になるわ! 」

「 聖獣の世界にある料理だったりして 」

「 尚の事、食ってみてぇ! 」

『( 取り敢えず、材料を見てみるか… )』

クルーの話なんて知らず、ある材料で何が作れるのか確認するべく見てみると、そこにはじゃがいもらしき芋以外、全てが見慣れない食材だった

『( え、なにこの…トゲトゲのオレンジ色をしたきゅうりみたいなやつ?きゅうり? )』

取り敢えず、何か分からないから一口齧ってみた

「 お、おぃ…嘘だろ……。表面に猛毒のあるベルメックの実を食ったぞ… 」

「 次は…ルルメルを食べてる…。生で食うと強い酸味があるのに… 」

「「 そういえば、聖獣って…味覚なかったんだよな… 」」

『( あれ、なんだ…この味…無味。じゃ…匂いに頼るか?これ、塩?砂糖?どっち?無臭なの分かんねぇ… )』

思った以上に異世界の材料に苦戦して、30分以上かけて作った時には、鍋の中がどす黒い紫色に染まっていたけど、俺からすればカレーを作ったはずだ

『 出来た!味見と嗅ぎながら作ったから、上手く出来たと思うぜ!見た目はあれだけど 』

「 …ちょ、コ…コック長…お先にどうぞ… 」

「 はぁ!?俺が?いや、ここは御前が… 」

「 後でいいんで! 」

「 アルトが作ったんだろ?俺が食うぜ! 」

ヤーゴが我先にと名乗りを上げ、カレールーだけの代物が入った皿を手元に寄せると、スプーンを手にして、笑顔を浮かべた

「 んじゃ、いただきます! 」

他の者達が眺めて中、彼は一口口へと運ぶ

「 !!!? 」

ものの0.001秒ぐらいで、ヤーゴは床へと倒れた

「「 ヤーゴ!!??? 」」

「 お、おい!!気絶してる!!? 」

「 あのカビが生えても食えるヤーゴが!!? 」

「 鉄の胃袋を持ってるコイツが… 」

『( え、何…そんなやばいの作ったの?そりゃ見た目はやばいけど… )』

匂いはカレーに近いはずなんだけど…と、皿を見ていると、
他のクルーも興味本位で食った者達が、次々に倒れていった

「 御前等、何騒いでやがる 」

「 キャプテン!その、クララが料理作ったんですけど…この通り、一口で全員気絶してるんです… 」

「 や、ば、い、っ…す……しらない、ばっちゃん…出てきた… 」

青褪めた顔でなんとか一人起き上がった奴が告げると、クララは眉間にシワを寄せ、テーブルの方へと近付く

『 あ、食わなくていいって…。俺、味覚も無ければ…嗅覚も悪かったみたいだから…きっと美味しくない… 』

あの後で、クララに料理は食わせたくないから止めようとすると、一度俺の方をチラ見してから、無造作に置かれているスプーンを手に取り、彼は一口掬っては口へと運んだ

「 ……………… 」

「「 キャ、キャプテン……? 」」

一瞬硬直したクララにクルー達は驚くと、彼は二口目を食べ進めた

そのまま皿に入ってるのを食い終わると、俺の方へと空の皿を向けて来た

「 おかわり、あるんだろ?くれ 」

『 っ!!おう! 』

クララの事は苦手だが、本気で嫌いになれない理由はここにあると思う
捨てるしかないと思ってた料理を、おかわりしてくれることに嬉しくて、たくさん注いで渡す

「 キャプテンが顔色一つ変えずに食ってるってことは…実は美味いのでは? 」

「 こいつ等、美味すぎて気絶したとか? 」

「「 じゃ……いただきます!! 」」

俺等も!とばかりに食ってなかったクルーは、揃って口へと含み、秒で床へと倒れた

『 クララが一番食ってくれてる!ありがとうな! 』

「( "特殊"状態異常耐性無いと食えねぇだろ )」

「「( そんなもん…普通の人間は持ってねぇっす…キャプテン )」」

何故か、この後…一週間ぐらい料理を食べたクルーが寝込んで、俺は料理をしなくていいと言われたけど、クララは何気なく言ってくれたんだ

「 また気が向いたら作りゃいい。食ってやる 」

『 あ、ありがとう…… 』

俺はきっと、自分じゃ分からないぐらい不味い料理を作ったんだろうけど…
それでも食べてくれるのは嬉しいな

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