転生したら召喚獣になったらしい

獅月@体調不良

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二章 宝物捜索 編

02

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クララが手料理を食べてくれた!
そんな事を、デルに話したら微笑んでよかったですね、と答えて聞いてくれていたんだ

あの日から、少しだけご機嫌だった俺は、
もう少しクララとの距離を縮めようと思っていたら、今朝からなにやら騒がしいじゃないか

『 ん…、なにごとだよ… 』

のんびり召喚獣がお休みタイム
そんな時間を、感覚的には一瞬だけ体験して、
ドタバタと騒がしい甲板に行くと、クルーとぶつかりかけた

「 おっと!すまねぇ! 」

『 お、おう……大丈夫だけど… 』

鼻先を服が掠めた程度だから、なんとか反射的にお互いに寄せて、ぶつかることはなかったけど…
そのクルーは俺に構わず、甲板の手摺の方へと向う

「 こりゃすげぇや! 」

「 こんな海域…見たことねぇ 」

『 ん? 』

皆して、何をそんなに見ているのか…
興味本位でのっそりと歩いて、甲板の手摺の隙間から頭を突っ込んで、海面へと視線を落とした

『 おぉ……お? 』

そこには黄金色に光る水面があって、一瞬なにか分からずに傾げていると、隣りに居たクルーは教えてくれた

「 光で反射して見えづらいが、此の辺り一帯に…金や宝石が沈んでんだ 」

『 この光って…全部金ってこと? 』

「 嗚呼…俺達は、着いてしまったんだ…。黄金の島アウルム•イゾラに… 」

『 黄金の島……島? 』

島というからには、最もこんもりとある山の塊を
想像していたけど、顔を見上げて辺りを見渡しても、そんな山らしい小島は存在しない

一面海が広がってるだけだから、頭に幾つもの疑問符を浮かべていると、聞き慣れた足音が響き、俺の左側へとやって来た

「 噂通り…。島は既に、海の底みたいですね 」

『 海の中に…黄金の島があるんだ?あっ…降り続いた雨の影響?』

デルの言葉にハッとして、手摺から顔を外し、彼を見上げて問いかけると、こちらを見る事なく辺りに視線を向けた彼は、小さく頷く

「 えぇ。大半の島は、海の底に沈みましたから…。ですが、噂では…黄金の島だけは、存在し続けてると…勇者の魔法がかけられてる為に、とか言われてましたね 」

『 へぇ……勇者の魔法な…。でも、海の底に島があったところで、どうやって行くんだ? 』

此処にいる全員が、何百m先まで泳げるとは思えないけど?と思って、デルへと顔を上げると、彼は俺の方を見下げた後に新たに来た人物へと視線を向ける

「 それは…船長の命令に従うだけです 」

『 船長… 』

船長とは、と言いかけた言葉を閉じて、同じように振り返ると、薄汚れたベージュ色のシャツに、黒いズボンだけを履いた、軽装姿のクララの姿がある

「 てめぇ等!見えてる物に絶対に手を出すんじゃねぇぞ!それは罠だ 」

「「 あ、アイアイキャプテン! 」」

一瞬、欲に目が眩んだクルー達だが…
そこは絶対的なクララの言葉で理性を取り戻し、ぐっと堪えて、其々に返事をした

金なんて必要のない召喚獣の俺からしたら、
欲しいとは思わない物だから、人間って欲深いなって思う

「 イカリを下ろせ! 」

「「 イカリを下ろせー!!! 」」

船は、此処で止めるらしい

クララの掛け声と共に、クルー達は一段となってテキパキと行動する様子を見ていると、大きなイカリは黄金色に輝く海へと、鎖が擦れる音を響かせ落下する

「 アルト、御前は水面に立って島の入り口を探し出し、その迄の氷の道を作れ 」

『 氷の道…分かった( ウォータースライダーとかに使うあれかな? )』

筒状の道の事なんだろうかと思い
取り敢えず、言われた通りに手摺を飛び越えて海の方へ降り立ち、手足が触れる部分だけ凍らせて立つと、気配を集中させる

『( 入り口があるなら…何かしらの魔力の流れとかあるはず… )』

苦手な魔力感知を行い、尻尾を別々に揺らして、毛を逆立てて感じとっていると、水の流れが一部、壁に打つかって避けてるような感覚がした

『 多分、あった…!! 』

魔法陣を発動することなく、冷気だけで一気にその違和感ある場所から、水面に掛けて氷の筒を作り出す

「 おぉ!!流石、アルト! 」

『 クララ、入り口あった! 』

感心してくれるクルーを他所に、クララは直ぐに視線をクルーの方へと向けてしまった

「 俺とアルトは、此れから黄金の島アウルム•イゾラに入る。御前等は、明日の夕刻まで待機。それ以降は自由にしろ 」

「 え、待機の後に自由ってどういうことっすか? 」

「 そこは…キャプテン達が帰るまで待機とかじゃ… 」

『( 確かに…ちょっと違和感ある指示だな )』

まるで、帰って来ないかも知れない…
そんな言い方のクララに、クルーは疑問を投げかけるも、彼は軽く跳んでは俺の横へと着地した

「 御前等が俺を信じてくれるように…。俺も御前等を信じている。アルト、行くぞ 」

『 お、おう! 』

「 キャ、キャプテン!!! 」

本当はもっとクルー達は言いたい事は山積みだろうし、俺もデルと話がしたかったけど…
それは帰って来てから、伝えようと思う

ツルツルと滑る氷の筒の中を滑っていき、入り口の前で着地すると、目の前には古びた海藻の生えた、岩の扉がある

「 行くぞ 」

『 アイアイ… 』 

そんな掛け声が無くとも、召還士には着いていくのが召喚獣

今更、逃げるなんて事はしないのに…

チラッと後ろを振り返ってから、クララが片手で開けた、薄暗い扉の中へと踏み込む

「 御前はダンジョンに入るのは初めてだったな 」

『 ダンジョン…?え、黄金の島アウルム•イゾラってダンジョンなのか? 』

「 ダンジョンは知ってんだな 」

『 まぁ聞いたことはある( 前世だけど… )』

忘れ掛けてる前世の記憶の中で、ゲーム内にダンジョンが存在してた事は覚えてる

召喚獣になってから、色んな人達に出会ったけど…
ダンジョンに入る人はいなかったから、それが無い世界なんだと思ってたけど…実はあったんだ

『( まぁ、勇者パーティーに参加できそうなランクの召喚獣じゃないし…。勇者視点は終わってたから、仕方ないか… )』

勇者パーティーから追放されたけど、
実は最強の召喚獣を従えて、世界最強になります
なんて、そんな連中に召喚されるような、
高ランクの召喚獣ではないのは自覚してる

辛いけども!!

『( まぁ俺…まだ中級ランクのちょい上だもんな…。そういうパーティーに参加してる奴って、もうフェンリルとか名があるやつだろ?例えばそう…うん、そういう奴 )』

なんかチラッと想像つきそうな召喚獣がいたけど、
モヤっとした影みたいな姿しか分からなかったから、名前が出てなかった

若年性認知症かも知れない…
 
そんな事を思いつつ、クララの横を歩いていく

「 この世界には、突然発生した塔や島が無数に存在し、其処には必ず扉が存在する。その扉の中にはいくつかの階層になり、各階ごとにトラップや魔物が存在し、宝などもある。
黄金の島アウルム•イゾラは、勇者がダンジョンの最奥に…財宝を隠した事で、そう呼ばれてるが…元は"不能のダンジョン"と呼ばれていた 」

『 不能……? 』

違和感のある単語に、彼を見上げるとクララは自らの右手に視線を落としては、その手を前方に翳し、聞き慣れた魔法を発動しようとするも、うんともすんとも、何も起こらなかった

『 え…… 』

「 ここに踏み入った時点で、魔力無効化によって無力になっている。つまり…今の俺は、魔力を持たない…只の人だと言うことさ 」

『 …へぇー……え、ダンジョン内で魔法使えないとか、致命的じゃないか? 』

そうなんだーぐらいで終えようとしたけれど、
不意に重要な要素が無くなってることに驚いてしまうと、クララは口角を上げる

「 だから御前が必要なんだ 」

『 え、俺が? 』

「 聖獣は、魔力以外にもか神力しんりょくを持ってるからな。その為に俺は…御前の中の魔力を倍増させ、神力を得る量を増やした。今の御前の中は…封じられた魔力を補う為に、神力で溢れてるはずだ。それも分からねぇのか? 」

『 わか、らなかった……… 』

俺の中に…神力が溢れてる?

魔力と何が違うのだろうかと、目線を地面に落として疑問を抱いていると、クララは飽きれたように溜息を吐いて、歩き出してしまった

『( あれかな…。シャーペンで例えると、赤のインクは使えなくなったけど、青のインクなら使える…みたいな?元は一本のシャーペンだから、切り替え次第ではってことか…ん~……まっったく自覚ない!!神力ってどんな感じなんだろ )』

もっとこう…熱かったり、冷たかったり…
そう云う分かりやすい感覚があればいいのだが…

どうやら俺は、そう言うのに鈍いらしい




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