パパとナイショの関係

獅月 クロ

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~ 颯 視点 ~


「 はぁ~……うちの娘……色気有りすぎるだろ 」

どうやったらあんな風に成長したか、問いたいぐらいに凹凸のある完璧なスタイルに
男達が、放置できないのも分かる気はするが……
それが全て身体目的って言うのが気に入らない

今朝の男なんて、茶髪でピアスも多くてチンコにすらピアスあったぞ
あんな奴のどこがいいのか疑ったら、セフレ?
寧ろ、どうやってあんな奴と出会うのかすら気になることだ

出会い系サイトやら色々使ってるらしいが
一番は、街中でのナンパだろうな

部下から、ナンパされてましたよーなんて話を聞く度に胃が痛む

「 甘やかして育てたはずなのに……寂しいのか…… 」

俺が24歳、そして瑠菜が9歳の頃に
正式に引き取ったのは良いものの
忙しくて家に置いておく時間の方が遥かに多かった

引きこもりで、学校が不登校でも行くように
強く言えないまま、彼女は高校を1年で自主退学してたのも後から知ったしな……
それから、バイトをちょくちょくやってるが
3ヶ月経過するか、しないかぐらいで辞めている

別に仕事をしなくても、養って生きていけるぐらいの収入は俺には有るし
此れからも其のつもりだと思っていたが……

瑠菜が結婚したり、とか考えると自立するのを無理に甘やかす必要もないんだろうな

子育ての難しさを実感した時には
瑠菜は23歳になっていた

いや、結婚か……今朝みたいな奴を婚約者として連れてきたら追い返す気はあるが
瑠菜の事だから、デキちゃった結婚になりそうで不安だ

「 それも彼奴の事だ……きっと、誰の子供か分からないまま、相談に来るに違いない……あぁ、俺の可愛い娘が…… 」

何でもかんでも、素直に話してくれるのは嬉しいが……
たまに余計なことも言ってくるから、吐血しそうになる
誰と寝たとか、そんなの聞きたくは無いが聞いてしまうんだ
ちゃんと、話すから……

そう思うと“ パパ、お腹ふっくらしたの “なんて言う日が着々と迫ってる気がして
胃に穴が空いて、吐血しそうだと思う

「 でも、瑠菜の子供なら……俺はきっと可愛がるだろうな。寧ろ、男はいらないから瑠菜と孫で過ごしたい……孫か、さぞ可愛いだろうな…… 」

じぃじ、なんて呼ばれたらきっと何でも好きな物を買ってやるに違いない

「 あの、社長。独り言はいいんですが……会議中だとお忘れなく 」

「 会議の内容を、俺の娘をどうすればいいか、っていう話に変えないか 」

「 それなら時間を増やしたらどうですか 」

「 君も真面目に答えるんですね 」

悩みが口に漏れていた俺に、部下は軽く片手を上げては答えてくれる
あの後、仮眠することなく仕事場に戻ってきたんだよな
瑠菜と朝御飯が食べたいが為に……

俺の横で書類を持って立っていた、秘書であるひいらぎくん
黒淵眼鏡を着けて、如何にも真面目な秘書って雰囲気を出してるが伊達だからな……
人の見た目って恐ろしいが、
彼が眼鏡を着けてないと目付きの悪さに、
一瞬ヤ○ザの一員かと思われるほど人相が恐ろしいから、彼は此が定着している

「 休める時間が増やしたいが…… 」

「 残念ですが、1ヶ月の予定はびっしりと決まってますね 」

「 ほらな…… 」

1日経過する事に、1ヶ月後の1日のスケジュールが埋まっていく
似た内容なら数ヶ月先も予定が組み込まれてるから、
柊くんが管理してくれてないと記憶に飛ぶほど、日々の忙しさに溜め息が漏れる
30代から生え始めた白髪によって、定期的に白髪染めをしなきゃいけなくなったし
いつまでも格好いいパパは維持できないかも知れないな

「 社長、休みの日は娘さんと何してるんですか? 」

「 嗚呼……ひたすら、撫で回していた 」

「「 えっ…… 」」

「 いや、甘やかしていたって事な 」

瑠菜は人であり、人ではない……

あの日、俺が拾ったのは紛れもない瑠菜だったか
その場に居たのはとても可愛くて、
そして怯えて、生きる気力を無くした“ 子 “だった

全員が嫌そうにドン引きした目線を向けたが、
直ぐに否定してもその目は変わらなかった

「 休みの日をそうやって甘やかすから、普段居なくて寂しがるのでは……? 」

「 あ、そうそう。ペットとかも休みの日に特別に甘やかしてると日頃、鳴くって言いますし 」

「 ほぅ、なるほど……? 」

「 いや、ペットと娘さん一緒にしたらいけないでしょう 」

「 そうでもないぞ。此はペットの飼い方の本を買ってみるか 」

強ち間違いでは無いんじゃないか
昔から、赤ちゃんの育て方の本じゃ 
何一つ参考にならなくて手探りだった為に
ペットの本ならいけると思った

会議が終わり、次の仕事が始まる前に
ビルの中にある書店へと足を向けた

此所にあるペットの本がどんなものがあるか
見るには丁度いいだろう

「 猫……猫……あった 」

猫の本を探せば、雑誌のような物から
本として纏められた物まである
その中で、疲れていても比較的に読みやすい猫の雑誌を持ちページを捲る

「 猫の気持ち……猫は独占欲が強く寂しがり屋。飼い主にベッタリの気分屋のツンデレ…… 」

瑠菜は確かにベッタリだが、ツンデレの“ ツン “の部分が全く無いほどにデレしか無いな
甘えて来るのは気分と言うより、俺の様子をちゃんと伺ってると思う 
そして、大丈夫そうなら甘えてくる

とても利口な子だと思うから、此には当てはまらないか?と思いページをパラパラと捲り
読みやすそうだった為に、買うことを決めた

「 おや、久遠くおん社長。お疲れ様です。猫でも飼うんですか? 」

「 お疲れ様。まぁ、ちょっとな…… 」

レジへと行けば店員のおばさんは雑誌を見るなり、微笑ましそうに笑った
猫を飼うと言うか、飼ってるというか……
まぁ、似たようなのが居るために頷けばおばさんは茶色の封筒にいれ差し出す

「 そうですか。きっと可愛い子なんでしょうね 」

「 ははっ、それじゃ…また 」

「 いえいえーありがとうございました 」

なんて答えればいいか分からないまま、封筒を手に持って歩いていれば 
休み時間が終わったとばかりに早歩きで歩いてくる、恐ろしい柊くんから逃げたくなった
彼はきっと、俺よりオーラがあると思う 

「 社長、予定より1分遅れましたが表に車を回してあります。次の…… 」

「 あーはいはい。行くから…… 」
 
1分ぐらい良いじゃないか、と思うが塵も積もればなんとやら
夕方頃には大場場に残業してる並みには、遅くなるのだろうな

結局、移動してはスポンサーをしてる契約先と会話したり、次の予定やら、企画の内容を話していたら外は真っ暗になった

夏なのに……暗いぜ……

「 はぁ、瑠菜……今日も男を連れてこんで無いといいが 」

「 帰るの止めますか? 」

「 いや、帰るさ。そして男を追い出してやる 」

「 追い出して、貴方を嫌わない瑠菜さんも凄いですがね 」

そりゃ、俺の方が男より好きだろう、なんて自慢気に言えば運転をしてる柊は溜め息を漏らした
俺に良く似て、素直に表情に出す奴だが……
2人だけの時は特に、そう言う顔をするな

「 今日はまだいい……日付が変わる前に帰れるんだからな 」

「 そうですね 」

まだ、と言えるほどの時間である22時過ぎだ
家に帰って男を追い出してから、瑠菜と過ごす時間はある
ご飯を食べてないなら、簡単にパスタかデリバリーでも頼もうか
そう思いながら、夜の街を眺めていれば目についた人物に驚く

「 柊、車を止めてくれ 」

「 は?えぇ、止めますが……どうしたんですか? 」

「 瑠菜が居た。連れてくる 」

「 えっ……? 」

直ぐに横に寄って一時停止した車から降りて、さっき見えた飲食店の前へと向かう
早歩きで歩いて道を戻って行けば、店の横に立つ
3人組の男と、その中央に立っている瑠菜を見て
胃はグツグツと煮える

「 じゃ、4人で遊んじゃう? 」

「 すげー可愛いし。めちゃくちゃ可愛がるぜ 」

「 どうしようかな 」

長い髪を結ぶことはなく、太股が曝した白い短パンに胸元が強調された肩だしの黒いカットソー
リップを付けただけでメイクしてるように可愛いのは認めるが、その服装でこんな夜に出歩くのは気に入らない
諸に、それ目的に見えて仕方無い

「 娘に用があるなら、俺が相手になるが? 」

「 あ?誰だ、オッサン 」

「 えっ、娘って言わなかった……? 」

「 マジか。父親登場とか 」

生憎俺より身長は低い連中らしく、瑠菜の前に行くように間に入れば
彼等は其々に顔を見合せた

「 父親が登場とか萎えるわ……行こうぜ 」

「 つーか、マジで父親かよ。年齢近くね? 」

「 ふはっ、やべー 」

シラケた様に軽く笑っては立ち去ったホストみたいな連中を軽く睨んでから、振り返れば瑠菜は髪を弄り視線を外す

「 瑠菜、バイトを探してた訳じゃ無いだろ?態とこの時間に遊び歩いてたのか 」

「 ……別にいいじゃん 」 

「 遊ぼうが構わないが、俺は御前を心配してるんだ。怪我でもしたらどうするんだ 」

若い女が誘拐され、ヤられるだけヤられて切り刻まれて捨てられた
なんてニュースがたまにあるんだ
他人事じゃないと言いたいが、瑠菜からすれば今夜遊ぶ相手が居なくて不愉快なんだろう
いつもは残念そうに笑うだけなのに、今はふてくしてる

「 話を聞いてるのか。俺は御前を心配してな…… 」

「 折角、金のあるセフレ増えると思ったのに……。パパが来たら誰も寄って来ないじゃん 」

「 っ……!! 」

俺が心配してるのに、瑠菜にとってはセフレが出来なかった事の方が嫌なのか……
なんだ、この無性に腹が立つのは

瑠菜には怒りたくは無いが、込み上げる感覚に奥歯をグッと咬み手を握れば 
一つ息を吐き、手首を掴む

「 なら、諦めて今日はもう帰るんだ。ほら行くぞ 」

「 ……いたい 」

ポツリと呟いた彼女はそれ以上話すことなく、車の後部座席へと乗せ、その横へと座れば
柊はなにも言うことなく、車を走らせた

明らかに不機嫌な彼女をどう、機嫌を取るか
分からないまま御互いに顔を背けて窓の外を見ていれば、場の空気を読んで柊はフォローを入れる

「 瑠菜さん、お久しぶりですね。元気でした? 」

「 今、元気じゃ無くなった 」

「 そうですか。でも、今日はゆっくりと颯さんと一緒に居られますよ? 」

「 パパと…… 」

俺の方をチラッと見た瑠菜と視線が合えば、少しだけその不機嫌な雰囲気は無くなった

「 悪くないかも…… 」

「 そうですよ。たまにはお2人でゆっくりと御話しでもしたらいいですよ 」

流石、柊だと褒めたくなった
後で御礼のメールでも入れようと思う

そうだね、と頷いた瑠菜の機嫌は直りつつあった

家に着く頃には、不機嫌な雰囲気は無くなり
柊に軽く手を振るぐらいには直った

「 柊さん、お休みなさい。またねー 」

「 えぇ、お休みなさい 」

先に部屋へと入っていく瑠菜を見てから、
俺は一つ息を吐き、窓の冊子に触れる

「 その…ありがとうな。怒る前で良かった 」

「 いえ、瑠菜さんは寂しがって他の男性を求めるだけなので……怒らず向き合って、御自慢の溺愛っぷりで甘やかしてあげてくださいな。それでは月曜日……御迎えに来ます 」

「 嗚呼、宜しく 」

明日は日曜日か……そうか、久々の休みだからゆっくり出来るのか
普段、忙しくて日付感覚が狂ってるが 
月曜日に迎えに来ると言われたら納得する

柊の車が見えなくなり、玄関へと入る

「 一緒に御風呂はいるー? 」

「 入らないから、先にどうぞ 」

「 残念。分かったよー 」

嬉しいが、年頃の娘だと実感して欲しい
その間に、焼き明太子のパスタでも作ろうかと思いキッチンに立つ

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