俺のお嬢様はおとめげーむ?の『悪役令嬢』らしいです

杏音-an-

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第二章 学園生活始動

21 ヒロインとエンカウント ③

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「……なるほど。レイ……グロブナー様も転生者だったのですね」

 フローレス嬢はそう言って、「ふむ」と相づちをうった。

 レイラ様は自身が転生者であること。そして『星の夜祭』の日にフローレス嬢と出会い、彼女自身も転生ではないかと思っていること。更には、皇太子殿下とは婚約破棄をしたい為、フローレス嬢を虐めたりはしないと言うこと。むしろ穏便に婚約破棄をしたい為、皇太子殿下の攻略……恋路に協力をしたいと言うことをフローレス嬢に伝えた。

「なんだか……色々と腑に落ちました。だからゲームでは話し掛けて来るはずのないマーカス様が、あんな笑顔で私に話し掛けてきたわけですね」

 そうそう。って、だから俺ってそんなに笑わない奴だったんです?
 俺は思わずツッコミそうになったが、フローレス嬢に頭を下げて口を開いた。

「……はい。この度は驚かせてしまい、申し訳ありませんでした」

「あ、いえ!とんでもないです!!顔を上げてください!私も変に逃げ回ってしまってすみませんでした」

 フローレス嬢は慌ててそう答えると、ふぅと一度息を吐き呼吸を整えた。

「先ほどは取り乱してしまい、申し訳ありません。改めてアリス・フローレスと申し上げます。おふたりが考えている通り、私は転生者で前世ではOLをしていていました」

「っ!やっぱり!そうなのね!」

 レイラ様がそう言うとと、フローレス嬢はコクリと頷き再び口を開いた。

「はい。前世では交通事故で死亡しました。そしてこの『アリス・フローレス』に転生して、あの『星の夜祭』で殿下と鉢合わせた時に、前世の記憶……この世界の乙女ゲームについて思い出しました。あの時は突然の出来事で驚いてしまっていて、そんな時にグロブナー様のお姿も見つけて……その、目を付けられたら堪ったもんじゃないと思い、思わず……あの場から逃げ出してしまいました」

「あ、やっぱりあの場から逃げ出したのは私のせいだったのね」

「……なるほど。それでフローレス嬢は逃げた先で酔っぱらいに絡まれ、そこでルウ様に助けられた、と?」

「「えっ」」

 レイラ様とフローレス嬢はふたり同時に驚いた表情でこちらへと視線を移した。

「そ、そうなの?」

「あ、はい。でも、どうして……」

「先ほどの入学式でルウ様とお会いしまして、そこでお聞きしたのです。2年前、お忍びで祭り行ったら、酔っぱらいに絡まれている平民の女の子を助けたと」

「は、はい。そうです。そしたら、ル……シモン様が怪我をしてしまって……」

「貴方はその際に魔法を開花させたそうですね。治癒魔法を使って」

「は、はい。その時は思わず……そしたら、シモン様が『スルス館』で魔法を学ばないかと誘って下さったんです。でも、グロブナー様と関わりがあるマーカス様に接触するのを怖れて……その、シモン様にお願いして、シモン様直々に魔法や魔道具についてこれまで 教えて頂いてました。この学園に入学できたのも、シモン公爵家の推薦があったからです」

「そ、そんな裏設定が……」

「あ、いえ!ゲームで詳しく記載はありませんでしたが、あの乙女ゲームの世界では恐らく違ったんだと思います」

 俺はふむと相槌をうって、彼女をじっと見据えた。

 ルウ様は彼女に基礎的な魔法以外にも、主に身を隠せるような魔法や魔道具を教えていたらしい。恐らく俺達から逃れるためだろう。だからこの2年近く、彼女についての手懸かりが全くなかった訳だ。

 しかし、そうなると少し気掛かりな点がある。

「一つ……お伺いしてもよろしいでしょうか」

「あ、はい!大丈夫です」

「貴方はルウ様から基礎的な魔法以外にも、身を隠せるような魔法や魔道具について教わっていたそうですね。恐らく私達から逃れる為だとは思いますが……しかし、そこまでして今まで身を隠していたのに何故この学園に入学されたのでしょうか。そのまま雲隠れしても良かったものを……わざわざ同じ学園に入学されたのには、何か理由があるのでは?」

 俺がそう言うとフローレス嬢はビクッと身体を弾ませた。やはり思っていた通り、何か企みがありそうだ。

 シモン侯爵家は代々強い魔力を持つ魔道師の家系だが、実は家族の中でルウ様だけ魔力を持っていない。その為『シモン家の出来損ない』と蔑む者も一部いるが、ルウ様は薬品や魔道具の知識が誰よりも豊富な方で多くの魔道師から慕われている。また、とても優しいお方でその人柄も皆から慕われる理由の一つだろう。
 彼女は前世の記憶でどこまで知っていたかは分からないが、恐らくルウ様の誰よりも豊富な知識とその優しさに付け込み、咄嗟に魔法や魔道具について教授してもらうよう頼み込んだのだろう。優しいルウ様が断れるはずもない。

 何を企んでいるかは分からないが、万が一にもレイラ様に危害を加えるようであれば、ここで対処しないと。

 俺はジッとフローレス嬢を見据えたまま黙っていると、彼女は何かを決心したような表情を浮かべた。

「その……じ、実は……」

 フローレス嬢はぎゅっと両手を胸の前で握り締め口を開いた。

「……私、シモン……ル、の事が好きなんです!」

「「……え」」

 俺とレイラ様はまさかの回答に思わず唖然としていると、フローレス嬢は恥ずかしそうに、カァと顔を真っ赤に染め始めた。


「「ええええ!!??」」


 そして俺とレイラ様は思わず声を大にして驚いた。


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